大手銀行が6月から適用する住宅ローンの固定型金利を発表した。10年固定の基準金利の引き上げ幅は、3メガバンクで0.05~0.14%となった。
3メガは13年ぶりの高水準
10年固定の基準金利は、三菱UFJ銀行が3.98%、三井住友銀行が4.05%、みずほ銀行が3.65%に引き上げた。3メガバンクの平均は13年ぶりの高水準となる。
各行は、利用者の信用度に応じて優遇幅を設けて実際に適用する金利を決めているが、信用度が高い人に適用される最優遇金利も1.20%~1.75%に引き上げられた。

引き上げの要因は、長期金利の上昇基調の強まりだ。長期金利の代表的な指標となる新発10年物国債の利回りは、5月30日の東京債券市場で、一時1.1%をつけるなど、約13年ぶりの高い水準で推移している。
強まる日銀の早期利上げ観測
背景にあるのは、大規模な金融緩和策を転換した日銀が、追加利上げに早期に動くのではとの観測だ。
5月9日に公表された4月の日銀金融政策決定会合での「主な意見」では、追加の利上げに前向きな声が相次いだ。円安を背景に基調的な物価上昇率の上振れが続く場合は、「正常化のペースが速まる可能性は十分にある」とした指摘があったほか、「金利のパスは市場で織り込まれているよりも高いものになる可能性がある」との認識も示された。
日銀は国債の買い入れ額を据え置いていたが、5月13日に、残存期間5年超10年以下の国債について500億円減らして4250億円にするとして、一転して減額を打ち出した。

市場関係者の間では日銀が近く利上げに踏み切るのではとの思惑が広がり、国債買い入れのさらなる減額を見通す向きも強まって、日銀の政策修正が意識されるなかで長期金利の上昇ピッチが強まっている。この先も高い水準が続けば、住宅ローン固定型金利は7月以降もさらに上昇していく可能性がある。
変動型金利引き上げが視野に
今後の焦点は、日銀の追加利上げの時期だ。
上昇を続ける「固定型」金利に対し、低い水準に抑えられ、7割の人が利用しているとされる「変動型」金利は、多くの銀行で、短期プライムレート=短プラと呼ばれる優良企業向けの短期の貸出金利をもとに決められている。
3月の日銀のマイナス金利解除では、一部のネット銀行を除き、3メガバンクをはじめ大半の銀行が短プラを変更しなかったが、日銀が追加利上げに踏み出せば、短プラが引き上げられる可能性があり、変動型金利の上昇が視野に入ることになる。
預金金利とローンで差し引き3万円負担増?
「金利のある世界」がやってくると、家計にどういう影響がもたらされるだろうか。
みずほリサーチ&テクノロジーズが、日銀が追加利上げを行い、政策金利が段階的に1.0%まで上昇した場合について試算した。
普通預金金利は0.1%に、10年の定期預金金利は1.0%に上がる一方、住宅ローン金利も、変動型が2023年度に平均0.4%だったのが1.0%に、35年固定型は1.8%だったのが2.6%へと上がっていく。
この結果、全世帯の平均では、住宅ローンの利子負担は年間2.1万円増える一方、預金金利での収入が7万円増加するが、住宅ローンを抱えている世帯での平均では、預金金利の増加分が4.1万円なのに対し、ローン利子分で7.5万円増える計算になる。

住宅ローン比較サービスのモゲチェックは、「変動型金利の人気は衰えておらず、固定型金利が上昇するなかでも、現時点ではその傾向は変わっていない」としているが、変動金利を選んだ場合、将来の金利変動の可能性を踏まえた家計管理が一段と大切になってくる。
日銀のこの先の政策を注視しながら、「金利のある世界」の本格的到来に備えることが大事な場面になってきた。
(執筆:フジテレビ解説副委員長/サーティファイド ファイナンシャル プランナー(CFP) 智田裕一)