愛媛・今治市の大島に新たなレストランが4月にオープンした。腕をふるうのは東京から移住してきたフレンチシェフの森重正浩さん(62)だ。地域の魅力が詰まった夢のレストランオープンまでを追った。
「非日常的な快楽を提供したい」
「ここはうちのいけすです。自分の夢だったんですよ。海を見ながら料理をつくるっていうのが」と気さくに話すのは、フレンチシェフの森重正浩さん。
「非日常的な快楽を自分は提供したい」と語るシェフは、穏やかな瀬戸内海に浮かぶ大島の東側に位置する友浦の地に、夢のレストランをオープンさせた。
![新しい看板に笑顔を見せる森重さん](https://fnn.ismcdn.jp/mwimgs/f/7/700mw/img_f70067374b8e0903bca85a5ac3b696c8564649.jpg)
レストランの名前は「fenua」。タヒチ語で「大きな島」を意味する。店の装飾として設置しているのは大島で採れる「大島石」だ。
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レストランのコンセプトは「地域のものを使う」こと。大島石以外にも玉川地区のヒノキや菊間瓦が使われている。
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森重正浩さん:
レストランっていうのは、お客さまが食事に来るだけじゃないんですよね。その地域の生産物とかのプレゼンテーションの場所にもなる
地域の魅力あふれるレストランは、新国立競技場や同じ大島にある亀老山展望台を設計した隈研吾さんが設計した。
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手紙を送ったところ熱い思いが伝わり、依頼を受けてくれたという。レストランには、個室が4部屋あり、海を望む窓の位置は隈さんがミリ単位でこだわり、まるで絵画のようだ。
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そして、貨物船で使われていた材木を再利用した展望デッキを上がると、友浦の海の絶景が広がる。
食材も“地元”にこだわる
この日、食材の調達に向かったのはレストランから車で10分ほどの宮窪漁港だ。
森重さんは食材も地元のものにこだわり、知り合いの漁師から宮窪沖の魚を仕入れる。
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この日は、激しい潮流で育った天然真鯛のほか、スズキ、メバルを仕入れた。
森重正浩さん:
おいしそうな鯛ですよね、本当に。野草と組み合わせたりとか、そういう料理を考えます
![イタドリを見つけ、その場で食べる森重さん](https://fnn.ismcdn.jp/mwimgs/f/8/700mw/img_f8dbd3a2e2db0c971439456369f2a86f477215.jpg)
続いて向かった先では、道路脇に生えている野草のカタバミやイタドリを摘み始めた。
レストランに戻ったあとは、できたばかりの厨房で早速、試作に取りかかる。
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森重正浩さん:
きょうの料理は本当にすべて今治産だね、半径10kmくらいでとれた食材か。自分の夢だったんですよ、海を見ながら料理をつくるっていうのがね。ヨーロッパでも日本でもたくさんの調理場で仕事したんですけど、ここが一番ですね
試作が完成した。宮窪沖の魚と地元の野菜、近所で摘んだ野草を使った料理の数々。華やかな盛り付けはまるで芸術作品のようだ。
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森重正浩さん:
ビーツの甘みと鯛の甘み合うね。この弾力を楽しむのもいいけど、もう少し薄く切っても良かったかも。薄く切るか、小さい四角に切るか。この組み合わせも初めてだな、ターメリックと野生のクレソン。これはすごくいいな。合う
「いつか地元の瀬戸内で…」
広島・三原市生まれの森重さんは、高校卒業後に料理の道に進み、数年後、フランスへ渡った。当時の様子を「誰も知らないパリに行って、何十通っていう手紙を書いて、それで調理場に入れてもらいました。食材に真摯に向き合って、その食材を無駄にしない。それはすごく学びましたね」と語る。
帰国した森重さんは、東京の閑静な住宅街にレストランを開いた。ただ、いつも心にあったのはフランスで出会ったシェフの言葉だった。
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森重正浩さん:
「いつかは地元に帰って、地元の食材を使って、地元の人においしいフランス料理を作ってあげなさい」という、その言葉がずっと胸にあったので。やはり自分は瀬戸内出身なんで、いつかは瀬戸内でお店をやりたいなと思ってました
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友浦の風景が、働いたフランスの景色に重なったという。まずは地域に溶け込もうと、地域おこし協力隊として大島に移住し、地元の人たちと交流を深めた。
近所の住民:
草刈りとか積極的に参加してくれる。ときどき「花もらっていい?」とか言われるから、どうぞどうぞという感じで
夢のレストラン開店
そして迎えたオープン当日。晴天に恵まれ、最高の景色の中で、お客さんを迎えた。
この日は、建物を作った工務店や石材店の関係者と家族が食事に訪れた。
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森重正浩さん:
真鯛のフラン仕立てと申しまして、茶碗蒸しのようなお料理です。バジルの香りをつけています
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お客さんからは「おいしいです。爽やかですね。味付けも和と洋が混ざったような感じで、とても食べやすく、なじみやすいですね」、「最高っすよ、おいしい。日本とフランスの融合やわ」と好評な様子。
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森重正浩さん:
これは広島の竹原の「垰下(たおした)牛」という牛なんですけど、それの頬肉の煮込み。マデラ酒のソースで、付け合わせが、宮窪の黒イチジクのソテーです
店に来た男性客は「今まで知らなかった人たち、この景色とかこの島のものとか、たくさん知っていただいて、また大島が輝けるような場所になるんじゃないかなと思ってます」と話す。
料理も店の雰囲気も大好評。無事にオープン初日を終えた。
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森重正浩さん:
海を見ながら楽しく料理を作りました。そんなに大きく行こうとは思ってません。行き止まりの集落でひっそりとやっていきます
海辺の静かな集落にたたずむレストラン「fenua」。風、波、鳥のさえずり。ゆっくりと流れる時間の中できょうも土地の恵みいっぱいの一皿を届ける。
レストラン「fenua」は、ウェブサイトなどで予約を受け付けている。
(テレビ愛媛)