栃木・那須町で全身が焼けた男女2人の遺体が発見された事件で警察は21日、容疑者の男を逮捕した。男は「アニキに頼まれた」と供述しているが、この「アニキ」が何者なのかは不明で、警察は、男がどのようなグループに所属しているのか調査中だ。

「名前は言えない」“アニキ”は何者か

21日に逮捕された平山綾拳(りょうけん)容疑者(25)は、任意の事情聴取で「名前は言えないが、アニキに頼まれ車や凶器を準備しただけ」と話し、逮捕後には「アニキ」ではなく「Aさん」と供述している。

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平山容疑者が「名前は言えないが」とした上で話した「アニキ」とはいったい、何者なのかだろうか。また、なぜ名前を言えない存在を明らかにしたのだろうか。

埼玉県警捜査一課・元刑事の佐々木成三さん:
平山容疑者がどのようなグループに属しているのかは気になるところだが、ただこの「アニキ」というのが、そのグループの上位の者なのか、本人として年上の者を呼び名でアニキと呼んでいるのか。アニキとは面識があるか否か、どうやって知り合ったのか、何で連絡を取っていたのか、これらを明らかにするべきだと思います。

――平山容疑者は「アニキ」と呼ぶ人物の名前を知っているのか?

埼玉県警捜査一課・元刑事の佐々木成三さん:
今の状態だと、頼まれたものが、名前も知らないで頼まれたと。被害者の宝島さんとは顔見知りではないという風に考えると、属しているグループとのトラブルではないのかなと推測します。

フジテレビの上法解説委員は、「“アニキ”は存在しない可能性もある」と話している。平山容疑者がアニキという架空の人物を作り出し、存在しないアニキについて語ることで、自分の罪から逃れようとしている可能性や、自分は主犯ではないというアピールの可能性もあるという。

ただ、出頭後の任意の事情聴取では「殺害には関与していない。アニキに頼まれて車と凶器を用意しただけだ」と話していた一方で、逮捕時には死体損壊の容疑を認めたという情報もある。こうしたことから、平山容疑者が自分で最初に言っていたよりも、事件に深く関与している可能性が出てきている。そのため「アニキ」について語る供述を、鵜呑みには出来ない状況になってきているという。

橋下徹弁護士:
普通の組織犯罪で誰かが出頭するということになると、身代わりで出てくるため「アニキ」の存在は言わずに「自分がやった」と言うのが普通なんです。しかし、今回「アニキ」の存在を出してきたことを考えると、凶悪で残虐な行為をしたことによって、精神が持たなくなってしまって、今の状況に耐えられなくなり出頭した、でも自分の身も守りたいということで「アニキ」の存在を出してきたのかなと推測します。

さらに、この事件に関しては、複数の車が関わってきているということがわかってきている。

宝島さんは行方がわからなくなった15日夜、東京・上野でレンタカーに乗りこんでいたが、その後、レンタカーは品川区に移動し、宝島さんらが車から降りる様子が確認されている。

ただ、レンタカーではなく平山容疑者名義の車から宝島さんの所持品が見つかっており、警視庁は宝島さんが車を乗り換えた可能性があるとみて詳しい経緯を調べていている。また、捜査本部は他にも複数の人物が関わっているとみて捜査を進めている。

闇バイトの手口と酷似…グループ内の面識は

車も複数台使われるなど、複数による犯行も考えられるが、グループというのはどういったグループなのだろうか。

埼玉県警捜査一課・元刑事の佐々木成三さん:
今回の犯行形態を見ると、このグループが統制が取れていないことが明らかで、実際、1人の人物が出頭しており、平山容疑者の車の中から犯罪の証拠品が見つかっているわけです。もし主体性が平山容疑者にあるのであれば、証拠品は捨てると思われるんです。ただ、その中で平山容疑者の供述通り、指示通り動いただけということも推測されると思います。
このグループの中が、果たして面識のあるグループなのか否かについては、今後、スマートフォンの解析で、どういった形でこの犯行に関与することになったのか、明らかにしなければいけないことだと思います。
今回の事件は「匿名・流動型犯罪グループ」の可能性もあり、面識がない可能性もあります。平山容疑者の犯行の雑さと主体性がないことを考えると、闇バイトに関連する一連の事件とこの手口はよく酷似していると感じます。

平山容疑者をめぐっては、17日に警察に出頭する様子が明らかになった。早朝、多くの人や車が行き交う中、平山容疑者とみられる黒っぽい服装の男が、徒歩で交番に向かってくる様子が映されていた。交番の目の前で約10秒間立ち止まり、その後交番に入っていった。

埼玉県警捜査一課・元刑事の佐々木成三さん:
この事件は被害者2人が亡くなっている事件に自分が関与していると。出頭すると決めたにもかかわらずかなり動揺している部分と、行けば捕まるわけですから、かなり悩んでいる様子がこの動画から見受けられるなと感じます。

そして、殺害された宝島さんのトラブルも明らかになってきた。殺害された宝島さんは、上野の周辺で14店舗の飲食店を経営するやり手の経営者だった一方で、トラブルも多かったという情報もある。

宝島さん夫妻は4月10日未明、男性とトラブルになっていた。場所は路上で、防犯カメラに口論になっている様子が捉えられていた。

トラブルとの関連も含めて、今後の捜査のポイントはどういうことになってくるだろうか。

埼玉県警捜査一課・元刑事の佐々木成三さん:
警視庁は、宝島さんが被害者と分かった時点で、今回の事件の前兆事案となるようなトラブルについては、捜査を詰めているところだと思われます。
誰とトラブルとなっていたのか、どのようなトラブルだったのか。これは一件一件詰めていかないと、容疑者は浮上しないため、前兆事案についてはかなり力を入れて捜査をしているところだと思われます。
(「イット!」 4月22日放送より)

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