シリーズ累計63万部を突破した小説「成瀬は天下を取りにいく」。著者が小説で描いたものとは…
滋賀・大津市在住 作家 宮島未奈さん:滋賀県にしかないものを書こうというのは正直ありましたね。これだけ魅力的にみんな受け止めてくれるのは、『成瀬』の滋賀愛があってのものなんだなと思うんですよね。
【動画】「成瀬は天下を取りにいく」本屋大賞で話題沸騰 滋賀県も便乗キャンペーン “聖地巡礼”
■本屋大賞受賞「成瀬は天下を取りにいく」 著者は滋賀県大津市在住の宮島未奈さん
この記事の画像(11枚)今話題となっている「成瀬は天下を取りにいく」は、滋賀県大津市在住の宮島未奈さんのデビュー小説。全国の書店員が「いちばん売りたい本」を選ぶ、ことしの「本屋大賞」に選ばれました。小説の中で舞台となった滋賀県大津市は、“聖地巡礼”などで沸いています。
4月18日、たすき姿で腕組みする「成瀬ポーズ」を決めるのは、小説を書いた滋賀県大津市在住の作家、宮島未奈さん。大津市の佐藤健司市長とびわ湖大津観光大使の2人を表敬訪問した。
滋賀・大津市在住 作家 宮島未奈さん:大津市の皆さんがとても喜んでくださっていて、『成瀬は天下を取りにいく』を書いたことで、皆さんに大津の良さを再確認していただけたのかなと思っているんです。
大津市 佐藤健司市長:大津のさまざまな場所を取り上げていただいて、『こんな素晴らしいところが大津にはあるんだ』と知るきっかけになってくださっていること、本当にありがたく思っています。
その後、滋賀県の三日月大造知事のもとも訪問しました。
滋賀・大津市在住 作家 宮島未奈さん:この間は、自転車で走ってる人から『おめでとうございます』と言われたことがあって、それぐらい見てくださっているんだと思いましたね。
■“ローカルあるある”が詰まった作品に地元の人も「ウェルカム」
宮島未奈さんのデビュー作、「成瀬は天下を取りにいく」は、全国の書店員が選ぶ本屋大賞に選ばれた。
本屋大賞2024を受賞 宮島未奈さん:滋賀の皆さん見てますか?『成瀬』が本屋大賞とりました。
すでに続編も出ていて、シリーズ累計63万部を突破。滋賀県大津市を舞台に、主人公の成瀬あかりが、中学2年生から大学生にかけて繰り広げる、ちょっと変わった挑戦の数々を描いた短編小説で、大津市の“ローカルあるある”が詰まった作品だ。
街の人 80代:西武百貨店のあれでしょ。西武百貨店の最後をずっと描いてくれてた。(本に書かれて)よみがえるんやったらうれしい。ウェルカム。
本をきっかけに“聖地巡礼”に訪れる人が増えている。
草津市から来た大学4年生:本屋大賞きっかけに読んだんですけど、高校が膳所高校で、成瀬と同じで、分かることばっかり。『湖風祭』で付き合うっていう描写あったんですけど、『湖風祭マジック』って本当に膳所高校でも言われていたんで、『ああ、あったな~』って思って。
愛知県から来た大学2年生:この本を読んでどんな町なんだろうと思った。僕は同年代なんで成瀬と、コロナ禍で行動が制限されていた中で、成瀬みたいにいろんなことやってって成長していく姿に憧れたというか。
主人公の成瀬が挑戦したことのひとつが、4年前に閉店した西武大津店で「閉店前の生中継に映り込む」というものだった。閉店の日の描写はニュース映像そのままだ。
小説の描写:「閉店が近付き、蛍の光のメロディーが流れる」「卒業式では泣いたことなどなかったのに、鼻の奥がつんとする」「ガラス戸の向こうで店長が一礼したのち、シャッターがおりる」「集まった人々はスマホで写真や動画を撮りながら口々に『ありがとう』と声を上げた」
■本屋大賞をきっかけに滋賀県がキャンペーン
18日、関西テレビのインタビューに答えた宮島さん…
-Q.ローカルな話題が出てくるのは?
滋賀・大津市在住 作家 宮島未奈さん:滋賀県にしかないものを書こうというのは正直ありましたね。ご当地ネタは入れようと思って入れました。わざわざそのために取材したのではなくて、実際に行ったところがネタになっているという感じです。
本屋大賞をきっかけに、滋賀県はここぞとばかりにキャンペーンを開始。大津市内の13カ所で行われる、その名も「この春を成瀬にささげるスタンプラリー」を実施。
滋賀県市町振興課 山村学主事:乗っかるぞっていう感じではあったんですけど、予想以上ではありましたね。今回を機に滋賀県に関心を持っていただいて、滋賀県が好きになってくれたらなと思っています。
アプリ上で13カ所全てのスタンプを集めると、滋賀県が導入するまちの通貨「ビワコ」とクリアファイルがもらえる。
■食堂、スーパー、遊覧船 いろんな“聖地”を訪れることができる
滋賀発祥の「平和堂」が運営する「フレンドマート大津テラス店」には、全国から訪れたファンのメッセージも掲示されている。ここでは、なんと…
記者リポート:主人公・成瀬のアルバイト先では、実際の制服を借りて写真撮影することができます。
そして、琵琶湖の遊覧船「ミシガン」でも…
琵琶湖汽船 高橋佐智子主任:おそらく聖地巡礼という形で来られると思うんですけれども、老若男女さまざまな方がいらっしゃいまして、あの(本の)通りに船内を回っていただいたら、もう本当に本の中に入り込めるかなと思います。
主人公が、県外の高校生らを連れて乗船する「ミシガン」。
小説の描写:「一階に下りると、想像以上に湖面が近かった」「よく見ると青とも緑とも灰色ともつかない色だ」
別々に大津を訪れていた2人の大学生はミシガンの船上で一緒になり、「いい街ですね」「いいよ、マジでいいよ。住みやすいし」と、本がきっかけのご縁が生まれていた。
■観光客、経済、地元 みんなハッピーで「三方よし」
観光客は旅を楽しみ、経済が回る、さらに地元の人も地域の魅力を再発見するという「三方よし」の状態。生みの親の宮島さんはどう受け止めているのだろうか。
-Q.地元の盛り上がりは?
滋賀・大津市在住 作家 宮島未奈さん:全然想像してなかったです。愛着はあるんですけど、(滋賀を)持ち上げるのも違うなと思っていて、あまり滋賀を美化して書くのはやめたんです。多くの人が来てくださるのは、それだけ成瀬がみんなに愛されている。それだけ人を呼べる存在を書けたのは、私の力を超えたところにいるなと思っています。
-Q.みんながハッピーに?
滋賀・大津市在住 作家 宮島未奈さん:それはまさに近江商人の『三方よし』ですね。
今後については…
滋賀・大津市在住 作家 宮島未奈さん:ずっと『成瀬の人』だと言われると思うので、切り離して成瀬じゃないものも書きたいと思っています。恋愛とかミステリーとかファンタジーも書きたいと思っています。
(関西テレビ「newsランナー」 2024年4月18日放送)