ロシアによる軍事侵攻で、多くの市民が犠牲になったウクライナ・キーウ近郊のブチャで、犠牲者を追悼する式典が行われた。一方、プーチン政権は、ウクライナ侵攻に批判的な立場を示す国民的歌手を“スパイ指定”する動きを見せるなど、締め付けをますます厳しくしている。

509人が死亡…“虐殺の町”奪還から2年

ブチャが奪還されて2年となった3月31日、追悼式典が行われた。式典に出席したゼレンスキー大統領は、「この戦いでの犠牲と、我々が食い止めようとしている悪を忘れないでほしい」と訴えた。

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ブチャは、侵攻開始直後ロシア軍に一時占拠され、多くの市民が残虐な方法で殺害されたことが判明し、子どもを含む509人が死亡したとされている。

ウクライナ国家警察は3月31日、ブチャで戦争犯罪を犯したロシア兵100人以上を特定したと発表した。

国民的歌手を“スパイ指定”へ

ウクライナ侵攻の収束の兆しが依然ない中、プーチン政権は言論や表現の自由への締め付けをますます厳しくしている。

プーチン政権は、ロシアの国民的歌手、アーラ・プガチョワさん(74)をスパイ指定する方向で検討に入っている。

プガチョワさんは、「百万本のバラ」という、歌手の加藤登紀子さんが1987年に歌い、日本で大ヒットした、60代以上のほとんどの日本人が知っていると思われる曲を元々歌っていた歌手だ。「百万本のバラ」は、旧ソ連時代にプガチョワさんが歌い、当時のソ連で国民的ヒットとなった。旧ソ連に侵略されたラトビアに伝わる歌謡曲がベースで、平和や自由を求める歌として歌い継がれてきたともいわれている。

1987年にはプガチョワさんが来日し、歌手の加藤登紀子さんのコンサートに参加。プガチョワさんは「百万本のバラ」をロシア語で歌った後に、加藤さんと一緒に日本語の歌詞でも歌っている。

プガチョワさんは現在74歳。その人気は衰えず、ウクライナ侵攻前にロシア国内でコンサートが行われた際には、バックステージで多くのファンに囲まれていた。

スパイ指定は787の組織と個人

プガチョワさんはウクライナ侵攻に批判的な立場で、これまでもSNSで度々、自身の見解をしっかり発言してきた。

2022年9月のインスタグラムの投稿では、「偽物の理想のために兵士を殺し、市民に負担を与え、ロシアを世界的にのけ者にしている」と、侵攻を進めるプーチン政権を批判した。

実は、プガチョワさんの夫、テレビ司会者のマキシム・ガルキンさん(47)もウクライナ侵攻を公然と批判していて、2022年にロシア政府からスパイ指定されている。

スパイ認定された人々の多くは海外に住居を移していて、ロイター通信などによると、プガチョワさん夫婦は地中海の島国・キプロスに滞在しているとみられる。すぐに拘束される可能性はないと思われるが、ロシアは海外でも活動するためどうなるかはわからない。

2014年にプーチン氏はプガチョワさんに勲章を授与したこともあったが、ロシアはウクライナ侵攻以後、政権に批判的な人たちへの締め付けを厳しくしていて、スパイ指定された対象は790の組織と個人に及ぶ。

ナワリヌイ氏の獄中死以後、プーチン氏はもう気にするものがなくなったとの声もあり、ますます弾圧が進む恐れはある。ナワリヌイ氏の妻・ユリアさんも現在海外にいるとみられ、常に国際社会が注視していく必要がある。
(「イット!」 4月1日放送より)

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