静岡県の川勝平太 知事が女子サッカーチームとの場で性別による役割を決めつけるかのような発言をしたことが物議を醸している。こうした固定観念はジェンダー・バイアスと呼ばれるが、川勝知事の同種の発言は今回が初めてではない。

多様性への理解は?川勝知事の価値観

「サッカーはサムライブルー。野球は侍ジャパン。侍というが、それは礼儀正しく、潔い。スポーツでいえばフェアプレイ・スポーツマンシップが身に付いている。やっぱり男の子はお母さんに育てられるし、お母さんが(そうした部分を)持っている」

この発言を聞いた人たちは心の中で何を思っただろうか?

これは3月13日に行われた女子サッカーチームとの面会の中での川勝知事の発言だ。

不適切な発言は面会の中で発せられた(3月13日)
不適切な発言は面会の中で発せられた(3月13日)
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捉え方によっては、子育てには父親が関わらず、母親だけがすると言わんばかりに聞こえてもおかしくない。もちろん、言うまでもなく現代においては父親が育児に参加している家庭も多い。

また、厚生労働省によれば2022年における離婚件数は17万9099組、これに対し婚姻件数は50万4930組と計算上は3組に1組が離婚すると言われる時代にあって、父子家庭も少なくないだろうし、様々な事情の中で祖父母や親族、施設などによって育てられている子供もいるだろう。

そのため、多様性の観点からも疑義が生じる発言であるし、何よりも女性の社会進出が叫ばれる中にあって前時代的な考えでもある。

選挙戦でもジェンダー・バイアス発言

こうした性別による役割を決めつけるかのような固定観念はジェンダー・バイアスと呼ばれるが、残念なことに川勝知事の同種の発言は今に始まったことではない。

2021年6月に行われた知事選における集会では、自身が静岡文化芸術大学の学長時代を務めていた時のことを回顧しながら「(学生の)8割ぐらい女の子なんです。でも11倍の倍率を通ってくるんですから、みんなキレイです」「顔のキレイな女の子は賢いことを言わないと、キレイに見えないでしょう。ところが全部キレイに見える」などと女性の容姿と学力を結び付けるかのように発言。

また、女子生徒たちと新東名高速道路の建設現場を見学した時のエピソードを持ち出し「うら若いかわいい女の子が来たから新東名の開通は1年半前倒しが出来た」とも述べていて、後にこの件が報じられると「性の違い、特に弱い人たちに対する差別はしてはならないし、しない。してこなかったと思うが、そう取れる発言をしたことに対して誠に恥ずかしく思っている」と謝罪・撤回した。

自身の発言を謝罪・撤回した川勝知事(2021年12月)
自身の発言を謝罪・撤回した川勝知事(2021年12月)

ところが、選挙戦における不適切発言はこれに留まらない。

いわゆる第一声で、「女性は子供、主人、父母のために愛情を持って生きている。愛情に溢れた女性を立てないで男は男になれない」と演説したかと思えば、終盤戦には「女性には逆らわない。女性は、例えば子供のため、あるいは主人のため、おばあさんのために愛情を持って、ご飯を作ってくれたり、いろいろなことを言ってくれる」と述べていて、この点に関しても自身の女性観・家族観について「パターン化した時代錯誤的な発言」と反省の弁を口にした。

選挙戦で声を張り上げる川勝知事(2021年6月)
選挙戦で声を張り上げる川勝知事(2021年6月)

繰り返される失言に議会も“呆れ”

それにも関わらず川勝知事は今回、自らの価値観がアップデートされていないことを露呈し、これに限らず不適切な発言が度々繰り返されている状況に、県議会からは怒りを通り越し、呆れのような言葉も聞かれる。

3月18日の定例会最終日の本会議では、公明党県議団の盛月寿美 議員が「車の両輪に例えられる知事と議会の信頼関係は回復するどころか、最後までガタガタと音を立てて、崩れていく事態となっている。他者には厳しく、自分には甘くなる。長く権力を手にしていると陥りがち。知事という立場にありながら人や自治体を自分の勝手な基準で評価し、思いのままに発言し行動する、こうした姿はもう見たくない」と非難した上で「知事が県民に与えるべきものは不信感や不安、失望ではなく、信頼感、安心感、希望であり、県民が希望を持てる静岡県を作ること」と諭した。

川勝知事に苦言を呈した公明党県議団・盛月議員(3月18日)
川勝知事に苦言を呈した公明党県議団・盛月議員(3月18日)

閉会後、取材に応じた自民改革会議の増田享大 代表は「議会として再三、忠告を含めた決議はしてきているが、それ(不適切な発言)を止められなかったこと自体、議会として、会派として責任を感じている」と口にしたが、この言葉の通り昨今の県議会の質問戦では川勝知事の不適切な言動に対する質疑が“お決まり”となっている。

取材に応じた自民改革会議・増田代表(3月18日)
取材に応じた自民改革会議・増田代表(3月18日)

県議会の立場上、知事のこうした問題に対して厳しく追及することは致し方ないが、自身に起因して本来あるべき政策論争の時間が削られてしまっている責任を川勝知事はどのように感じているのだろうか。

(テレビ静岡)

テレビ静岡
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