大阪市鶴見区の正和堂書店。地域で愛されている「街の本屋さん」だ。客足はまずまずのようだが…

正和堂書店 小西康裕さん:書店としてやっていくかどうか、やめるやめないっていう話はずっと出てます。10年ぐらい前ですかね、スマホが普及してから、(売り上げが)右肩に下がるスピードが上がってきた。

【動画】全国4分の1の自治体に「書店がない」 消えゆく書店を経産省が支援 生き残りかけ『ブックカバー作戦』も

■20年前と比べ書店の数はおよそ半分にまで減少

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全国出版協会の調査によると、出版物の売り上げ全体のうち、2014年には全体の6.7パーセントだった電子出版が、2022年には3割を超えた。この傾向が特に顕著な漫画本・漫画雑誌では、5年前に電子漫画の販売額が紙を追い抜き、右肩上がりで増加している。

「紙の本」離れは進んでいるのか、実際に街で聞いてみた。

本を読まなくなった人:昔はわりと読んでましたけど、今もうスマホでずっとネットばっかり見てるので読む時間がね。読もうかなと思う本はあるんですけど。

紙派だが最近読んでいない人:必要なときは紙の本を読むんですけど、その紙の本を読む時間が今少ないかなっていう感じです。

電子で読む人:子供が読む絵本は本屋さんに買いに行きますけど、自分の娯楽の漫画とかはもう携帯で見てます。手軽に読めるので。

この流れは街の書店を直撃。20年前と比べると書店の数はおよそ半分にまで減少し、全国の4分の1の自治体で「書店がない」状況になっている。

こうした状況を受け、3月、経済産業省は書店を支援するプロジェクトチームを発足した。

斎藤健経済産業相:書店というのはあらゆるジャンルの本を一覧で見ることができる。その人の視野を広げるという点では、ネット等に比べて強みがあると考えています。

今後、全国の書店の「課題」と「成功事例」のヒアリングを進め、書店間でノウハウを共有していくことを目指しているということだ。

■オリジナル「ブックカバー」で客を取り込む書店も

大阪の地元で生き残ってきた正和堂書店。この書店の新しいチャレンジが、「オリジナルデザインのブックカバー」だ。

正和堂書店のX:今回のブックカバーは、男女年齢問わず人気!作ってよかった

SNSにアップすると、客の3分の1がブックカバーを目当てに来店するようになったという。

客:うちの母がここの本屋さんに来て、『かわいいブックカバーがあるよ』っていうのを教えてもらったので来てみました。今日は原田マハさんの本を買いました。

客:この柄いいでしょ?

客:紅茶とのコラボ始めたっていうのをツイッターで見て買いに来ました。なんていう題名の本なのか分からない状態になっているので、ここだけ(あらすじ)を頼りに面白そうだと思ってこれにしようと思いました。

紅茶やコーヒーとのセット販売や、本のタイトルをあえて伏せるなど、さまざまな工夫を始めたことで、これまで少なかった若い客層も増えているという。

正和堂書店 小西康裕さん:“読書のお供”と一緒に読書を楽しむとか、好きなブックカバーをつけて楽しむとかそういうエンターテインメント性を追求していけるといいなと思う。一書店だと情報が限られてしまうので、ノウハウの共有があったらすごくありがたいですね。

■青森県八戸市では「マイブッククーポン」などで地域の書店を盛り上げ

全国の書店が20年でおよそ半数ほどに減っているという。国は書店の成功事例のノウハウを共有していきたいということだが、青森県八戸市が進めている取り組みがある。

例えば、作家を招いたトークイベントや書店スタッフ交流会などを定期的に行っているということだ。また市立小学校などの児童に「マイブッククーポン」2000円分を配布して、地域の書店で使えるようにしているということだ。

八戸市のクーポン配布事業は毎年2000万円以上の予算がかかっているということで、自治体としては思い切った政策ともいえる。「newsランナー」コメンテーターで元尼崎市長の稲村和美さんは、「使ってもらえているのなら成功事例だと思います」と話す。

稲村和美さん:ちゃんと使ってもらっているんだったら、すごく成功している事例だと思います。トークイベントとか交流会、すごくいい取り組みだと思います。今まで通り本を並べて売っていればいい時代ではなく、本の楽しみ方を提案したり、新しい本や新しい人との出会いがあるような『居場所』的な要素を持っていたり、そういう工夫をどんどん各地で積み重ねていけたらいいと思います。
 尼崎にも、地域で支えられいて、小説のモデルになったりドキュメンタリー映画にもなった本屋さんがあるんです。町のみんなで支えていく本屋さんが増えていくといいなと思います。

■フランスではネット配送料有料化、韓国では図書館の本購入を地元で

また海外に先進事例があるという。

関西テレビ 神崎報道デスク:インターネットで本を買われる方が多いと思います。配送料の問題があって、フランスでは実質配送料無料だったんですが、一定金額の配送料がかかるようにして、インターネットで買ったらちょっと割高になる形にして、街の本屋で買う人が増えてきたりしています。
 あと韓国の事例で、公立の図書館が本を買うとき、地元の書店を優先してくださいと国が勧告を出す形で、地域の本屋さんで少しでも買ってもらえるようにする政策を国がやっています。

街の行き慣れた本屋さんがなくなってしまうのは寂しいと思う方も多いと思います。街の本屋さんの存続のため、官民一体となった効果的な対策が求められる。

(関西テレビ「newsランナー」 2024年3月18日放送)

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