「マッチングアプリ」全盛の時代に、親が子どものために“ひと肌脱ぐ”代理婚活が、いま大盛況なようだ。そこから見えてくる令和の結婚観を探った。

代理婚活人気の背景に“未婚率”の増加

2024年1月下旬に福岡市で開催されていたのは、親同士の「代理婚活パーティー」だ。参加者の平均年齢は71歳。親が子どもの結婚相手を代行して探すイベントである。

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参加者は、事前に送られてきた参加者名簿をもとに動き始める。名簿には子どもの年齢や職業、性格などが記載されていて、すでにアプローチしたい相手を決めている親もいるようだ。

中島さん(仮名)は、「上の子がもう片付いてるから。ちょっと次男が遅いっていうか…」と29歳になる息子の相手を探しにきたという。子どもから「余計なことはするな」と反発も出そうだが、子どもとは事前に話し合っていて、合意の上での代理婚活だという。

中島さん(仮名):
次男は何も言わないです…。「同窓会とかで誰か見つけてきたら?」って言うけど、無理ですねって。本当は恋愛してもらったら一番いいんですけどね。

この日の参加者は60人、参加費用は1人1万4000円で食事はつかず、用意されているのは飲み物とお茶菓子のみ。人気がある人の周りには小さな人だかりができていた。限られた時間内に結果を出そうと参加者はみな真剣だ。

出典:国立社会保障・人口問題研究所
出典:国立社会保障・人口問題研究所

代理婚活が人気の背景には、未婚率の増加がある。50歳の時点で結婚していない人の割合を見ると、1990年は男性で5.6%、女性で4.3%だったが、2020年には男性が28.3%、女性が17.8%にまで上昇した。特に男性は約4人に1人が未婚となっている。

気になる相手と「身上書」を交換

29歳の息子のために代理婚活パーティーに参加した中島さん(仮名)は、早速お目当ての人にアプローチをかけてみる。

33歳の娘(Aさん)の母親:
いま、どちらにお住まいなんですか?
中島さん(仮名):
○○市です。(息子は)トラックに乗ってるから朝が早いんですね。
33歳の娘(Aさん)の母親:
そうですか。(きょうは)娘より若い方がたくさんいらっしゃるから。
中島さん(仮名):
いやいやいや、そんなことないですから、もしよろしければと思いまして。
33歳の娘(Aさん)の母親:
一応、身上書をお預かりして本人(娘)がどういうふうに判断するか。
中島さん(仮名):
ありがとうございます。

交換した「身上書」には、相手の詳しい情報が記されている。これを持ち帰って親子で話し、実際に会うかどうかを決めることになる。相手の33歳になる娘の母親は、参加した理由を次のように話した。

33歳の娘(Aさん)の母親:
私はなるべく多くの方と出会えて、娘が話が合えばと思って。これが良いという条件はあまり無いです。私、2年くらい通ってるんですよ。妹がこちらで2023年のお正月の時にご縁をいただいたので、一応、結婚に進むという段階にいきました。ですけど、なかなか姉のほうが…。

交換成功も最終的には子ども次第

中島さんは、さらに積極的に動く。

33歳の娘(Bさん)の母親:
お母さまと(息子さん)似てません?笑顔がすてきですよね。
中島さん(仮名):
これお見合い用で撮ったから。実物と会うと違うかもしれません。
33歳の娘(Bさん)の母親:
うちもちょっと明るく写してるかもしれません。でも性格は明るいです。面倒見がいい子なので。

会話が弾み、こちらも身上書の交換に成功した。相手の母親に身上書を交換した理由を聞いてみた。

33歳の娘(Bさん)の母親:
娘の兄の結婚が26歳で早かったので。それでやっぱりうちの家では「まだいるの」って感じがちょっとあったので(笑)。娘の気持ちになるべく添ってというか、年齢があまり離れていないぐらいでとか、家からあまり離れていないところで、という娘の希望の方だったので、まあ、いろいろお話を聞いたという感じです。

この日3人と身上書を交換した中島さんは、今回の成果をどうみているのか?

中島さん(仮名):
身上書はいつも息子に見せますよ。お見合いできるかどうかは分かりません。私は3度目の正直と思ってますけど、息子は2度あることは3度あると言ってますから(笑)

代理婚活を通じて、これまで2度お見合いをしたという息子さんだが、中島さんも「次こそは」と期待を寄せる。

「親は変な人を絶対子どもに薦めない」

代理婚活のメリットについて主催者に話を聞いた。

良縁親の会 西日本支部・平田勝則支部長:
親が紹介するから変な人は絶対に子どもに薦めない。しっかり相手の親を観察してるんです。大抵の話をしたら「大体どんな人か分かるのよ」って。だから話を少ししていただいて、「この方はうちの家庭には向かないな」と思ったらお断りすればいいでしょう。

相手探しに消極的な子どものため、親がサポートするという新たな選択肢。結婚前から親同士のコミュニケーションがとれていることから、サポートが受けやすくなるというメリットもあるようだ。

いまの時代、「なかなか知り合う機会がない」という若者も多い。会場ではコロナ禍で出会いが減ったと話す人も多く、親が動くことへの抵抗感も薄くなっているという。一方、親の願望だけで突っ走ってもうまくいかないのも現実で、親子でコミュニケーションを取ることが成功のカギともいわれている。

(テレビ西日本)

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