3月18日からカナダ・モントリオールで行われる世界フィギュアスケート選手権。
昨季は男子と女子、ペアの3カテゴリで日本勢が世界一となった。
今回もペアからは “りくりゅう”こと三浦璃来・木原龍一組が出場する。
昨季、世界王者に輝いた三浦・木原組。
木原の腰のケガによりGPシリーズや全日本選手権の欠場を余儀なくされた今季は、2月に行われた四大陸選手権が138日ぶりの復帰戦となった。
四大陸選手権で帰ってきた“りくりゅう”
9月、初戦のオータムクラシックに出場。その後、木原の腰の痛みが悪化し、腰椎分離症と診断された。
それから2人はシーズン後半に照準を合わせるべく、ペアでの練習メニューを減らし、リハビリのため病院に通う日々を送っていた。
久しぶりの大会となった四大陸選手権に木原は「こうしてまたブルーノコーチと3人で戻ってこられてよかったかなと思います」と喜びをかみしめる。

約4カ月半ぶりに戦いの舞台に戻ってきた2人の姿があった。
9月の初戦以降、ショートを変更。
新プログラムで自分たちらしい滑りを披露し、2人は観客から大きな声援を受けた。

「以前よりも強くなる」ということをテーマに、ペアの練習ができない期間を乗り越えてきた。
その言葉通り2人がパワーアップしたことで復活させることができた大技、“フォワードインサイドデススパイラル”を四大陸で約2年ぶりに組み込むことができた。
「伸びしろしかない」と思って次へ
続くフリーでは、カナダ・モントリオール開催の世界選手権を意識したフランス語の楽曲『Une chance qu'on s'a』を披露。
ミスはあったものの、ブランクを感じさせないダイナミックなリフトなどで、会場を沸かせた。

演技後には滑り切れた喜びから笑みがこぼれた木原。
「短い準備期間の中で、ある程度試合ができるレベルまでは戻せたので、よかった。世界選手権に向けては、まだまだ足りない部分が多いので、“伸びしろしかない”と勝手に思って。またイチから頑張っていきたいと終わった瞬間から思いました」
木原の言葉を聞いた三浦は「龍一くんが復帰して、この短期間で、ケガなく最後まで滑り切れることができて本当に良かった」とホッとした表情を見せた。

四大陸の結果は2位表彰台。
自分たちの現段階での立ち位置や段階を知れることができた2人にとって、着実な一歩を踏み出した大会となった。
「わかめ、わかめ」ってところが好き
3月の世界選手権へ向けて最終調整を行っている最中の2人に話を聞くことができた。
力強いメロディーに乗せて笑顔満点で滑る姿が印象的なショートプログラムについて尋ねると、「ショートプログラムが『Dare You To Move』という原曲のカバーバージョン。
『龍一君がケガをして滑ることができなかった期間を経て“やっと滑ることができるんだ!”という幸せを前面に出してほしい』とコーチに言われました。
私たちはそれを表現できるように練習しています」と語る三浦。
2人のプログラムはつなぎや技の入り方など、細部にまで工夫が行き届いているのが特徴だ。
そんな中でもそれぞれのお気に入りの部分を聞いてみると、2人はこう話した。

「リフトが終わってスローに行く前に、2人のこういう振りつけがあるんですよ。それをみんなで『わかめ、わかめ』と言っています。私はそこが好き」(三浦)
「とにかく滑りが生かせるようになっていて、自分たちの良さを出せるプログラムになっています。
腰の状態がもう問題ないので、組み込めるようになった“デススパイラル”の前に追加している新しいダンスリフトが、すごくお気に入り」(木原)

さらに木原は「『僕たちが自由に滑っていることが良いプログラムにつながる』と言われているので、自由に滑ることで、自分たちの良さが出ていると思います」と話すと、うなずく三浦は「私たちというか、龍一くんが自然と笑顔になっているので、私はそれにつられて笑顔になる感じです」と笑う。
そんな“りくりゅう”らしさの笑顔、そしてスピード感と細部までこだわりのつまったプログラムにも注目だ。
トップを走る選手に食らいついていく
シーズン最終戦となる世界選手権に向けて、四大陸で見つかった課題をブラッシュアップしているところだという。
「四大陸ではレベルの取りこぼしが多かった。今の練習は、疲れている中でいかにレベルを取れるかということをやっています」(三浦)
「とにかく練習量が足りてないという話にはなった。世界選手権に向けてとにかく練習を積んでいって、きつい中でもしっかりとレベルを取ることをテーマにやっていけば、大丈夫なんじゃないかという話はしてきました」(木原)

昨季、世界選手権で初優勝を果たし、主要国際大会3冠の年間グランドスラムを達成。
日本ペア界の歴史を塗り替えた“りくりゅう”にとって連覇の偉業がかかっている。
しかし、2人はグランドスラムを達成してもなお、「追う立場」だと語る。
「連覇というよりも、追われる立場ではなく、また追う立場になってしまったので。自分たちがやることは、トップを走っている方たちに食らいついていくことしかない。自分たちのできることをやってまた、その位置に戻ることができるようにするということですね」(木原)
「(連覇は)目指すものではあるんですけど、そう思いすぎたら私はたぶん空回りをする。今、自分たちにできることを練習で精一杯やって試合で出せたら」(三浦)
120%の力を出す
どんな試練も力に変え、強くなろうと前を向き続ける飽くなき向上心。
シーズン前半を思うように進むことのできなかった2人にとって、この世界選手権はより一層特別な試合となる。

「全選手が目指す大きなゴールだと私たちも思ってる。シーズンの集大成なので頑張っていきたい」(三浦)
「今シーズンで一番大切な試合になってくる。今、100%以上の練習を積めているので、このまま積み重ねていけば、自分たちの滑りが戻ってくると確信している。練習拠点のカナダ開催でもあるので、ピークを必ず合わせたい」
最後に、どのくらいの力を出したいかと聞いたところ、「120%」と、そろって答えてくれた“りくりゅう”。
日本ペア史上初の世界選手権連覇へ、エンジン全開で挑む“りくりゅう”の演技に心を打たれること間違いなしだ。
世界フィギュアスケート選手権2024
3月22日(金)男女ショートよる7時~
3月24日(日)男女フリーよる7時~
https://www.fujitv.co.jp/sports/skate/world/index.html