衆議院の政治倫理審査会は29日と3月1日の両日にわたって、自民党の派閥の政治資金パーティーをめぐり6人の議員の審査を行う。

初日の29日は午後2時に開会し2時10分から岸田首相、3時30分から武田元総務相の審査が行われる。

現職総理の政倫審出席は史上初
現職総理の政倫審出席は史上初
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1日は午前9時開会で対象は安倍派幹部4人。9時10分から西村前経産相、10時40分から松野前官房長官、休憩を挟んで午後1時から塩谷元文科相、2時20分から高木前国対委員長の審査が行われる。

1人あたりの審査時間は1時間20分で、それぞれ冒頭に審査対象の議員が15分間弁明を行い、その後各党からの質問に1時間5分にわたって答える。審査会は、原則は非公開となっているが、野党が世論を踏まえて全面公開を強く求めたことで、テレビの生中継を含め完全公開が実現した。

初日となる29日は、以下の3つの点に特に注目したい。

ポイント1「異例の首相対決」 岸田VS野田で脱法パーティー論戦も

トップバッターで初めて現職総理として政倫審の審査を受ける岸田首相に対し、立憲民主党は野田元首相が質問者に立つ。この2人の対決は、26日の衆院予算委でも行われており、その再戦となる。それだけに、野田氏側からすると岸田首相から予算委と同じ答弁を引き出しても意味がなく、どんな角度で切り込むかが課題となる。

首相対決で野田氏はどう切り込むのか
首相対決で野田氏はどう切り込むのか

岸田首相は政倫審会長に提出した審査申出書で、安倍派、二階派、岸田派の会計責任者が検察に立件されたことに言及し、「刑事責任の有無とは別に、事案の内容に応じて相応の道義的責任や政治的責任が生じるのではないかとの指摘がある」とし、「自民党総裁として」政治倫理審査会の審査の場で説明責任を果たすべきだと考えたと記した。

野党は、岸田首相に自民党総裁としての党全体の問題と、岸田派の政治資金パーティーの会計についての問題に加え、岸田首相の政治団体や後援団体のパーティーについても追及する可能性がある。

野田氏は岸田首相自身のパーティー開催について批判
野田氏は岸田首相自身のパーティー開催について批判

野田氏は26日の質疑で、岸田首相が総理就任後の2022年だけで7回もパーティーを開いたことをとりあげ「なんですかこれ、異常ですよ」と批判した。さらに任意団体が開催した岸田首相の総理就任祝賀会の収益が岸田首相側に寄付されていた疑いを指摘し「脱法パーティーではないか」と追及した。この件をめぐり、岸田首相が、政治資金パーティーのあり方の改革などについて、踏み込んだ発言をするかどうか注目だ。

また、岸田派の収支報告書の訂正についても、不記載分は繰越金に入れられているが、実際にそうなのか、他に使用されていないのかなども確認が行われる可能性がある。

ポイント2「二階派の裏金システム」いつ始まりどう運用されていた?

そして、岸田首相に続いて審査を受ける武田良太元総務相は、二階派の事務総長であり、二階派と二階氏の政治資金についてどのように語るか注目される。

武田氏の申出書によると、二階派では5年間で2億6000万円のパーティー収入が不記載になっており、支出についても記載漏れがあり、報告書を訂正したとしている。

二階氏の政治資金についても質問が出る可能性が
二階氏の政治資金についても質問が出る可能性が

さらに二階氏の政治団体に計3000万円の不記載があり、武田氏自身の政治団体では1926万円が派閥からの還付だったにも関わらず別の政治団体の事業収入として記載していたことを訂正したとしている。その上で、二階氏も武田氏も不記載には「全く関与していない」とし、会計責任者や秘書が行ったこととしている。これについて本当に知らなかったのかなどについてどう答えるかが1つの焦点だ。

武田元総務相は「裏金システム」について何を語るのか
武田元総務相は「裏金システム」について何を語るのか

また。自民党の調査報告書によると、二階派のパーティー収入のキックバックは、「少なくとも10年前から今の仕組みや処理になっていた」とされている。二階派では、所属議員の多くへのキックバックは収支報告書に記載されていたが、二階氏、武田氏ら幹部へのキックバックは不記載という二重基準になっていた。なぜこうした仕組みになったのかについても説明が求められそうだ。

ポイント3「また逃げの答弁も?」 安倍派幹部4人の答弁に影響も

そして政倫審での発言は、証人喚問と違って偽証罪に問われることはないが、身を守る気持ちが強い出席者たちには、核心に触れる発言は避けたいとの思いは強いとみられる。となると予想されるのが「秘書が…」そして「捜査に関わるので…」という逃げの答弁だ。

東京地検による捜査はいったん終結しているが、検察審査会の議決によっては再捜査になる可能性がある。となると「捜査に影響するので答弁を差し控える」という逃げの答弁が再登場することもあり得るのだが、それでは国民への説明責任を果たしたことにはならない。実際、国会での発言が実際に捜査に影響を与えることはほとんど考えられない。

そして各出席者の発言、特に安倍派幹部の発言は弁護士の指導などのもとで、齟齬がでないよう調整されるとみられるが、岸田首相や武田氏の答え方は、1日の安倍派幹部の答弁にも影響を与えそうだ。

政倫審での審査や証人喚問をめぐっては、終了後に「核心を語らず」「新答弁引き出せず」「真相解明遠く」などという見出しが躍ることが常だ。今回もそうならないように、出席者による真摯な答弁が期待される。

(フジテレビ政治部デスク 高田圭太) 

髙田圭太
髙田圭太

フジテレビ報道局  政治部デスク 元「イット!」プロデューサー