旧統一教会信者が語る盛山文科相との関係

2021年10月17日、神戸市内の市勤労会館。

講演会などに使われる教室様の会場に、参加者70人ほどが長机に3人ずつ座り、主賓が訪れるのを待っていた。主賓席として設けられたパイプ椅子前の卓上には、一枚のA4用紙。主賓が訪れると、司会者が「推薦確認書」と記された、その用紙を示した。

盛山氏がサインしたとされる推薦確認書
盛山氏がサインしたとされる推薦確認書
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「盛山先生、こちらにサイン頂ければ、我々は次の選挙の応援をいたします」

記者の手元には、その会合の様子を写した数枚の写真がある。会場正面の壁には、「盛山正仁衆議院議員国政報告会」の横看板。主催者として、世界平和統一家庭連合(旧統一教会)の友好団体「世界平和連合」の名称が記されているのが分かる。

「世界平和連合」と書かれた看板を背に挨拶する盛山氏
「世界平和連合」と書かれた看板を背に挨拶する盛山氏

当時会場にいた関係者によると、衆議院議員の盛山正仁氏(現・文科相)はじっくり用紙を眺めたあと、サインをして司会者に用紙を手渡した。その直後、盛山氏への選挙応援を約束する「推薦状」が手渡されると、会場では大きな拍手が響いたというーー。

旧統一教会の友好団体から選挙支援を受けていたことなどが報道された盛山氏。FNNは、盛山氏と友好団体の関係性を示す写真を入手し、盛山氏の選挙運動を実際に支援した複数の人物からも証言を得た。

「付き合いは05年の初当選前から」

会合を主催した友好団体の男性幹部は、盛山氏との関係について、こう語った。

FNNの取材に応じた旧統一教会友好団体の男性幹部
FNNの取材に応じた旧統一教会友好団体の男性幹部

この団体は長らく憲法改正や反共産主義を掲げ、自民党の支援を続けてきた。男性幹部は2005年、同党から国政選挙への立候補を表明したばかりの盛山氏の事務所を訪ね、選挙運動への支援を持ちかけたという。

会合での盛山氏
会合での盛山氏

しかし当時、この団体の主な支援対象は清和政策研究会(安倍派)だったといい、宏池会所属の盛山氏への支援は「手薄だった」と振り返る。

「知人や家族に投票を呼びかける程度だった」

憲法改正の機運が高まった2021年潮目が変わった…

潮目が変わったのは、2021年の衆院選だった。

「憲法改正の機運が高まったことから、派閥問わず、自民党議員全体への支援の動きが活発になった」と、男性幹部は言う。

部下を通じ盛山氏の事務所に連絡し、友好団体主催の国政報告会を開くことを提案。

盛山氏は出席を承諾し、冒頭の報告会の場で、友好団体が推進する憲法改正や、LGBTへの慎重姿勢、日本と韓国をつなげる「日韓トンネル」の推進などに賛同する旨を記した推薦確認書にサインをしたという。

盛山氏がサインしたとされる推薦確認書
盛山氏がサインしたとされる推薦確認書

男性幹部はその後、衆院選直前に盛山氏の事務所を訪れ、有権者に電話をかける「電話がけ」を信者らで手伝うことを伝えた。事務所職員からは「一緒に頑張りましょう」と謝意を示された。

旧統一教会系団体の推薦状を持つ盛山氏
旧統一教会系団体の推薦状を持つ盛山氏

後日、別の集会では盛山氏から「お世話になっています」と言われ、ハグされることもあったという。

「可能な限り、時間帯を見つけて電話した」

電話がけに従事した女性信者はこう振り返る。

選挙区内の電話帳をめくり、約20人の信者らで有権者世帯を振り分け、携帯電話で電話をかけ続けた。朝から晩まで掛けることもあり、通話料の負担を抑えるため、自腹でいわゆる「通話し放題」のプランに切り替える信者もいたという。

「多い時は一日に200世帯。選挙期間中のトータルだと数千軒にかけた」

岸田文雄首相が訪れた衆院選直前の街頭演説にも、団体をあげて観客として動員されることもあった。

結果、2021年10月のこの衆院選で、盛山氏は比例復活で当選を果たした。

友好団体はその後、2022年3月に年に数回開かれる総会の場に盛山氏を招待。出席した関係者によると、盛山氏は200人の信者らを前に「(友好団体が)グローバルに立派な活動をされている」などとも挨拶したという。

安倍元首相銃撃事件で連絡は途絶え…

しかし、その4カ月後の7月8日。安倍晋三元首相の銃撃事件を契機に旧統一教会への風当たりが強くなってから、盛山氏サイドからの連絡は途絶えたという。

23年9月には、盛山氏は宗教法人を所管する文科相として初入閣。そして翌10月に、旧統一教会に対しての解散命令請求に乗り出した。男性幹部は「まさか、そこまでするとは」と驚愕したという。

そんな中で今月に入り、盛山氏と友好団体との関係についての報道が相次いでいる。一方、盛山氏は国会で「記憶にない」や「うすうす思い出してきた」などと答弁を二転三転させている。

「記憶なし」→「うすうす思い出し」→「記憶なし」迷走する答弁
「記憶なし」→「うすうす思い出し」→「記憶なし」迷走する答弁

手のひら返しに不満募らせる旧統一教会信者

こうした言動に、信者らは口々に歯がゆい思いを吐露する。

男性幹部は「盛山先生はバリアフリー政策など弱者保護のために頑張る、優しい代議士だと思っていた。でも、一生懸命に応援してきた人に対し、あまりにもひどい仕打ちだと感じる」。

女性信者は「政治家は言葉巧みに平気で嘘をついて、自分の都合を良くしていくものなのか。怒りというより、ただただ残念です」と話し、眉をひそめた。

会見で関係を否定する盛山文科相(13日)
会見で関係を否定する盛山文科相(13日)

盛山氏は、13日の閣議後会見で、報道陣に21年の衆院選での友好団体からの選挙支援の依頼について問われ、「依頼の事実はありません。事務所が知り得ない場所で何があったかは知り得ない」などと説明し改めて否定した。

こうした中、旧統一教会の高額献金などの問題を巡り、裁判所が解散命令を出すかどうか判断するための審理として、今月22日に国と教団側の双方から意見を聴く「審問」が行われる。

世界平和統一家庭連合(旧統一教会)
世界平和統一家庭連合(旧統一教会)

今回取り沙汰されている文部科学大臣と旧統一教会友好団体の疑惑の関係が払拭されないまま進むことに、今後審理に影響が出ないのか懸念されている。

(フジテレビ 社会部 松岡紳顕)

松岡 紳顕
松岡 紳顕

フジテレビ報道局社会部記者
1991年生まれ、福岡県とカナダ育ち。慶應義塾大学法学部を卒業後、2015年に全国紙に入社。知能犯罪や反社会的勢力、宗教2世問題、農水省、宮内庁などを担当。2023年秋よりフジテレビ社会部で司法担当記者として、汚職関係を取材しています。趣味は冬山登山です。
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