2024年元日の能登半島地震から2年が過ぎた。あの日、土砂崩れで妻と3人の子どもを含む親族9人を失った警察官の大間圭介さん(44)は今、ギターの弾き語りで老人ホームの慰問活動を続けている。「家族に胸を張って生きていたと言えるように」──そんな思いを胸に、新たな人生を歩み始めた大間さんの姿を追った。
能登地震で家族を失った警察官の新たな歩み

2024年1月14日、金沢市内で大間さんの家族4人の葬儀が営まれた。珠洲市仁江町で発生した山崩れに巻き込まれ、命を落とした妻のはる香さん、長女の優香さん、長男の泰介さん、次男の湊介さん。地震発生と同時に様子を見ようと家を飛び出した大間さんは無事だったが、家族は土砂の下敷きになってしまった。

葬儀で大間さんが読んだ弔辞。「寒かったね、怖かったね、辛かったね…最後、すぐに助けてあげたかったけれど、助けてあげられなくてごめんね、ほんとにごめんね」。その言葉には、家族を守れなかった無念さが込められていた。

家族とともに歩む日常
地震から2年が過ぎた今も、大間さんは金沢市内の自宅で家族とともに暮らしている。仏壇には4人の写真が並び、たくさんのお供え物が絶えることはない。「にぎやかにというか、寂しくないようにということで、常に物は絶やさないようにと…」と大間さんは語る。

長女が生まれた年に妻の両親が買ってくれたひな人形も、毎年欠かさず飾っている。家族の存在は、大間さんの人生から決して消えることはない。

「(地震から)1年目は、急に家族がいなくなったという辛さとか悲しみというところをどうしても強く感じた。2年目はそういう気持ちと少しずつ向き合いながら、これからの人生をどう生きていかなくちゃいけないのかというのを、少しずつ考えながら生活してきた」

ギターに託した新たな使命
家族のそばに置いてあるのは、一本のギター。音楽が好きだった子どもたちに思いを寄せて、大間さんは趣味のギターに再び力を入れるようになった。今年1月から老人ホームなどで弾き語りを披露している。

「せっかくね、頂いた…家族から頂いた命なので、最後自分が死ぬときになって、家族に胸を張って『お父さん頑張ったよ』というような人生を歩んでいけたらということで、何かできんかなと思って、今回このような形で皆さんに歌をお届けできればと思ってまいりました」

ステージで響く想い
今年3月8日、金沢駅もてなしドームでサッカーを通じて能登復興の応援をするイベントが開催された。招かれた大間さんはステージで歌を披露。応援してくれる人たちの前で、心を込めて歌声を響かせた。

「やっぱり、こうやって応援してくださる方がいらっしゃるというのは非常にうれしい。私もどちらかというと元気を届けたいなと思っているんですけど、逆にこうやって応援されて元気を頂けるというのは本当にうれしいことです」

歌っている時は「当然近くに家族がいてくれるという思いでいます」と大間さん。練習の時も、家族の写真に向かってギターを弾いていたという。
「上を向いて歩こう」に込めた思い

取材の最後、大間さんに家族に向けての今の気持ちを歌で表現してもらった。選んだのは「上を向いて歩こう」。「上を向いて歩こう、涙がこぼれないように、泣きながら歩く、ひとりぼっちの夜」──歌詞に込められた想いが、静かに響いた。

大間さんは今月末で警察官を退職する。「いつか天国に行ったとき、家族にお父さん頑張ってきたよと胸を張れるように生きていきたい」と語る。
ギターを片手に新たな人生を歩み始めた大間さん。家族から受け継いだ命を大切に、これからも上を向いて歩き続けていく。

(石川テレビ)
