世界ジュニアフィギュアスケート選手権が、2月26日から台湾・台北市で開催される。
昨シーズン世界選手権・世界ジュニアともに男女で金メダルに輝いた日本。
今回、世界ジュニアには男子3人、女子3人、ペア1組、アイスダンス1組が派遣される。
ペアからは、今シーズン結成された新星カップル、“さえルカ”こと清水咲衣・本田ルーカス剛史組が初出場する。
シングル経験者同士の今季結成カップル“さえルカ”ペア
シングルスケーターとしてキャリアを積んできた清水咲衣(18)と本田ルーカス剛史(21)。
2人は所属先が同じで世界王者の“りくりゅう”先輩の背中を追いかけ、未経験者同士でペアを結成。
愛称“さえルカ”ペアとして、シングルとの二刀流で挑む今季スタートを切った。

“さえルカ”初お披露目となったのは、去年8月に行われた木下トロフィー争奪大会での演技会。
そのときにペア結成の経緯を尋ねたところ、2人はこう話した。

「話しやすいし、トライアル中もバッククロスとかすごく簡単な基礎の中でもいい感じだった」(本田)
「2人で滑った方が滑りやすかったり。普段の声かけもプラスの言葉で声かけをしてくれるので、すごく印象も良くて『やらない?』と言われたときは、すんなりと『やる』となりました」(清水)
かねてから知り合いだったという2人は、トライアウトで意気投合しペアを結成。
お互いにシングルとしてシニアの大会に出場し、ペアとしてはジュニアを主戦場として戦うことを決め、本田は今シーズンをシングルラストシーズンとして掲げた。
試合に出るたびにレベルアップする2人の初舞台
競技会デビューは、11月の東日本選手権になった。
演技後は「かなり不安だった」と口をそろえたが、世界屈指の大技3回転ルッツ+ダブルアクセル+ダブルアクセルの3連続ジャンプを成功させるなど堂々の滑りを披露。

そして、初の全日本ジュニア選手権への切符を勝ち取った。
結成約6カ月余りで迎えたのが、全日本ジュニアの大舞台だ。
三浦璃来・木原龍一組と同じブルーノコーチに師事する2人は、定期的にカナダへ渡り腕を磨いている。

りくりゅう先輩の印象を聞くと、本田は「神様」、清水は「尊敬する存在」と話す。
「雲の上の存在というか、本当に神様というか。学ぶこともたくさんありますし、こういうエレメンツ・滑りができるようになりたい、こういうペアになりたいなと常に目標にしています」(本田)
「全然レベルが違って、毎日見ているとどんどん自分たちの気持ちも上がって、技も自然とできていくようになって。(2人は)すごく優しく接してくれて、本当に尊敬する存在です」(清水)
日本ペア界をけん引する偉大な先輩“りくりゅう”ペアの背中を追いかけ挑んだ全日本ジュニア。
フリーでは『ウエストサイドストーリー』を披露。お互いにシングルスケーターとして活躍する中で培った、表現力とスケーティングでプログラムの世界観を体現した。

さらにフリーで初めて組み込んだというスロートリプルループを着氷させた。
試合に出るたびに成長し続ける2人は、インタビューでもよく「レベルアップ」という言葉を口にする。
そんな向上心を抱き続ける2人は、シングルとしても全日本出場を勝ち取った。
うれし涙が流れた本田のシングルラスト
清水は初出場、本田はシングルとして最後の出場となった昨年末の全日本選手権。
来季からペアに専念するため、本田はシングルでの競技は今季限りと宣言していた。
「悔いのないシーズンにしていきたい」という思いで、シングル一本だった練習時間から倍以上増やし、1日2大会出場のダブルヘッダーを行うなどタイトな日々を過ごしてきた。

そして本田は、西日本選手権から繰り上げ出場で最大の目標としていた全日本の舞台を勝ち取った。
本田にとって5度目となった全日本。
ショートは「いつか使いたいと考えていた」という、憧れのハビエル・フェルナンデスも滑った『Black Betty』。

力強いジャンプを全て成功させノーミス演技を披露。
アップテンポな曲調に合わせて、持前の表現力でリンクを駆け回り観客を魅了した。

「本当に悔いがないように感謝を込めて滑りたい」と意気込んだフリーでは、冒頭のトリプルアクセルを完璧に着氷。
続く4回転トゥループも堪え、ジャンプを全て着氷させた。

一つ一つの動きを噛みしめるように滑り終え、会場はスタンディングオベーションに包まれた。
本田の会心の演技にリンクサイドで見守っていた濱田美栄コーチも涙を浮かべていた。

シーズンベスト更新の144.04のスコアが映し出されると驚きとともに涙があふれた本田。

「去年、違う別の涙を流しちゃったので、今日は良い方の涙が出てきたことがすごくうれしい。いろんな人にとにかく感謝の気持ちを伝えたいです。
やり切ったかなと思っているので、晴れやかな気持ちで次のステップに進めるんじゃないかなって思っています」と、自身最高の総合10位で終えた全日本の大舞台を振り返った。
ペアとの相乗効果でシングルも会心の演技
一方初出場となった清水は、ショートで堂々の滑りを披露。柔軟性を生かした軽やかなスケーティングとジャンプで目標としていたフリー進出へつなげた。
実は前日にショートを終えた本田とは、シングルに切り替えられるようにと、いつも通りの練習をするという狙いがあり、2人でペアの練習を行ったという。
会心の演技で終えた本田に勇気をもらい、「私もできる」と信じて挑んだというフリー。
冒頭の3連続ジャンプを華麗に決め、7本のジャンプを全て着氷。なめらかな滑りで4分間を滑り切り、スコアは自己ベスト更新の112.88をマークし、全日本デビューを晴れやかに締めくくった。

シングルとしてお互いに全日本の舞台を戦った2人。
2024年、再びペアとして走り出した“さえルカ”は、世界ジュニア出場に必要なミニマムポイントを2月4日まで行われていたバヴァリアンオープンで獲得する。
11月に本田は「世界ジュニアに出場できると一番いいのですが、ミニマムポイントや派遣してもらえる技術、いろいろな課題をクリアしていかないといけない。今は目の前の課題をクリアしていきたい」と話していたが、世界ジュニア出場を実現させた。
今季最大の目標に掲げていた初のチャンピオンシップス大会デビューで、さらなるレベルアップを見せてくれるに違いない。