2月26日から台湾・台北市で行われる世界ジュニアフィギュアスケート選手権。
昨シーズン世界選手権・世界ジュニアの両大会で、男女で金メダルに輝いた日本。
今回の世界ジュニアは男子3人、女子3人、ペア1組、アイスダンス1組が派遣される。
アイスダンスからは、ジュニア期待の新星カップル、“さらあつ”こと岸本彩良・田村篤彦組が初出場する。
モントリオールで腕を磨く、期待の新星カップル
結成2年目を迎える“さらあつ”こと岸本彩良(16)と田村篤彦(19)の2人。
カナダの「アイス・アカデミー・オブ・モントリオール」に拠点を置き、昨季の世界王者マディソン・チョーク&エバン・ベイツ組(米国)など、世界中の強豪カップルや日本のアイスダンス界をけん引してきた“チームココ”こと、小松原美里・尊組らとともに日々練習に励んでいる。

そんな2人の普段の練習を田村は「練習はみんな一緒のリンクでやっています。世界選手権に出場したほとんどの選手がいるので、とても参考になります」と、周囲の選手から刺激を受けていると話す。
特に参考にしている選手について「美里さんと尊さん」の名前を挙げた岸本。
「チームジャパンのトップがいるし、しかもみんながトップ選手なので。もうみんなを見て学んでいます。人が良くて大好きです」

アイスダンス界の強豪たちと同じリンクで腕を磨き、刺激を受けている2人は、まだ10代の学生カップル。
田村はカナダで一人暮らしをしながら、毎日自炊を行っているそうだ。
一方高校生の岸本は、最近自転車に乗れるようになり、レンタルサイクルのサブスクリプションが充実しているモントリオールの街を自転車で行き来しているという。
そんなあどけなさの残る2人は、今後のアイスダンス界を担う期待の若手カップルだ。
“さらあつ”にしかできない遊び心あふれるプログラムで躍動
2022年4月に結成するといきなり全日本ジュニア選手権に出場し、2位表彰台。
「世界の舞台に挑戦していきたい」と意気込んだ今シーズンは、宣言通りJGPシリーズ2戦に派遣された。

ISU国際大会デビュー戦となったJGP日本大会では総合4位に。
続くポーランド大会では、FDで自己ベスト更新となる会心の演技を披露。3位表彰台にのぼり、世界で戦えることを証明した。
11月に控えていた全日本ジュニア選手権の予選会も兼ねた西日本選手権に出場予定だったが、岸本のケガにより試合を欠場。
しかしJGPシリーズでの功績により、全日本ジュニア選手権に推薦出場という形となった。
1週間程の休養を経て少しずつ戻していった中で迎えた全日本ジュニア選手権。

今季のプログラムは、2人の魅力あふれるユニークなプログラムだ。
RDのテーマは「ロボット」。
グレーのパンツスタイルに身を包み、ロボットの動きをしながらスタートポジションにつくなど、細部までこだわりのつまった演技を披露。

「久々の試合でとても緊張した」という岸本は、ミスの悔しさからキスクラで涙を流す姿も見られた。
「膝の柔らかさ」が2人の武器
気持ちを切り替えて挑んだFDは、昨季から継続の見どころ満載の観客を楽しませる“さらあつ”の世界観爆発のプログラムだ。

後半、曲調がアップテンポに変わると、田村の氷上の腕立て伏せなどユニークな振り付けに加え、ダイナミックなリフトを披露。
全日本ジュニアへ向けアレンジを加えたというこだわりのプログラムを滑り切った。

試合後に話を聞くと、2人はこう振り返った。
「復帰戦というところもあって不安や緊張もあったが、上手く滑り切ることができたので嬉しかったです」(田村)
「すごく緊張していて、体全身が震えていたんですけど、頑張って2人で息を合わせて滑れていたと思うので良かったと思います」(岸本)
改めて2人の武器を聞くと、「膝の柔らかさ」と回答。
その理由を岸本は「“ジャパニーズレッグ”と先生は言うんですけど、『(柔らかい膝を持つ)日本人の足を使え』って。踊りながら足の曲げ伸ばしを使いこなせるようになりたいです」と話した。

全日本ジュニアで優勝を飾り、初のチャンピオンシップスとなる世界ジュニアへの出場を勝ち取った2人。
目標のトップ10入りを目指す、“さらあつ”ワールド全開のパフォーマンスに目が離せない。