食の雑誌「dancyu」の編集部長・植野広生さんが求め続ける、ずっと食べ続けたい“日本一ふつうで美味しい”レシピ。

今回植野さんが紹介するのは「エビクリームコロッケ」。学生の胃袋を満たす昔ながらの洋食店・「キッチン谷沢」を訪れ、愛されるアットホームな店づくりの秘訣を探り、秘伝のレシピを紹介する。

開店50年!仲良し家族が切り盛りする店

池袋と新宿のちょうど中間あたりに位置する「高田馬場」。

現在は、都内屈指の「学生の街」として有名だが、江戸時代、第3代将軍徳川家光により造られた大規模な「馬場」があり、当時は馬術の練習が行われていた場所だ。

さらに諸説あるが、この一帯の地形が高台で「高田」とも呼ばれていたことから「高田馬場」になったとも言われている。

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こうした歴史を持つ高田馬場にある、町の洋食店「キッチン谷沢」(東京都新宿区高田馬場2-2-15)。

今年で開店50年という歴史を持つこの店は、入口に「ホーメリーキッチン・タニザワ」の看板を掲げるとおり、仲良し家族3人が切り盛りする洋食店だ。

これぞ“ザ・日本の洋食”メニューの数々

厨房を仕切るのは、店主の谷澤親行さん。その周りで、妻・允生さんと次男で2代目・洋祐さんが家族ならではの見事な連係プレーでサポートする。

店主・谷澤親行さんの周りでサポートする妻・允生さんに次男・洋祐さん
店主・谷澤親行さんの周りでサポートする妻・允生さんに次男・洋祐さん

人気メニューは牛肉100%のジューシーなハンバーグステーキや、エビフライ、ヒレカツ、ミートコロッケがひと皿にのった「ミックスフライ」!

「キッチン谷沢」の他のメニューを写真で見る

他にも揚げたてのカツにコクのあるカレーをかけたカツカレーなども好評。

“ザ・日本の洋食”といったメニューが充実したキッチン谷沢は、その味を求めひっきりなしにお客が訪れる人気店だ。

名物料理は何気ない“妻の一言”から!

東京神田で米屋の次男坊として生まれた親行さん。飲食業界に希望を見出し、高校卒業後、洋食店やステーキハウスで8年修業。その後、親の後押しもあり26歳の時に独立を決意した。

慌ただしく時が過ぎ、開店から5〜6年経ったある日のこと。

夫婦で外食した際に訪れた店のエビクリームコロッケがあまりにも美味しく、親行さんは「うちの店でも出そう!」と提案した。それに対し妻の允生さんが「どうせならエビを丸ごと一尾入れちゃったら?」と返したのだという。

訪れた店のコロッケとキッチン谷沢のコロッケ(イメージ)
訪れた店のコロッケとキッチン谷沢のコロッケ(イメージ)

お店では、小さなエビをさらに小さく刻んで入れていたが、奥さんのアイディアで、なんと丸ごと一尾入れることに!

両親の背中を見て育った次男の洋祐さんもまた、「僕も大きくなったらおいしい料理を作るんだ!」と料理の道へ進むことを決意。調理師専門学校を卒業後、別の飲食店で修業を重ねていた。

しかしその後、允生さんが倒れてしまった。親行さん一人では店が回らなくなり、急遽、洋祐さんが手助けのため、修行していた店を辞めてキッチン谷沢へ。

何も教えない親行さんだったが、洋祐さんは父親の背中を見て自然と料理の腕を学んでいった。今では父親もその腕を認める存在だ。

そんな店の名物として君臨するのが、ほわほわな「エビクリームコロッケ」。大ぶりのエビを大胆に丸ごと1尾、コロッケと合わせて衣をつける!それを高温の油でサクサクに揚げ、自家製のデミグラスソースをかける。

エビを刻んで入れる場合と比べ、風味や食感が格段にアップ! 一口食べた植野さんも「すごい海老がしっかりしてますね。こんなの初めてです」と感心する。

キッチン谷沢の名物「エビクリームコロッケ」のレシピをご紹介する。