1月30日から中国・上海で行われる四大陸フィギュアスケート選手権。

ペアからは、“りくりゅう”こと三浦璃来・木原龍一組が出場する。

木原の腰のケガの影響で欠場が続いていた今季、シーズン後半戦の今大会が復帰戦に。

2023年9月のオータムクラシック以来、138日ぶりの実戦復帰となる。

12月上旬、カナダ・トロントを拠点に練習を続ける2人に現在の様子を聞くと、大会に出られない悔しさをかみしめながらも、これまでさまざまな試練を乗り越えてきた経験から、「強くなれるチャンス」と前向きに捉えていた。

試練は「強くなれるチャンス」

昨季GPファイナル・四大陸選手権・世界選手権の主要国際大会3冠を意味する年間グランドスラムを達成し、日本ペア界の歴史を塗り替えた“りくりゅう”ペア。

2022-23シーズンは、開幕直前に三浦の肩の脱臼によりスタートが遅れてしまった。

世界選手権で優勝したりくりゅう(2023年)
世界選手権で優勝したりくりゅう(2023年)
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それでも年間グランドスラムの偉業を達成する不動の強さを見せた。

迎えた今季初戦は、2023年9月のオータムクラシックに出場。新技を盛り込んだ新プログラムで挑んだが、結果は総合2位と精彩を欠いた。

その後、木原が腰の痛みを訴え「腰椎分離症」と診断を受けた。

リモートインタビューに応じてくれた木原龍一、三浦璃来
リモートインタビューに応じてくれた木原龍一、三浦璃来

当時のことを振り返ってもらうと木原は「GPシリーズ直前に自分の中でも腰の痛みに違和感があったので、診察していただきました。

ペアのエレメンツは全て激痛だったので、なかなか痛みはありました。『腰椎分離症かな』と疑っていたので驚きはしなかったですけど、ペアスケーターにはつきものなので少し油断していた自分もいます」と語る。

2人で話し合った結果、出場を予定していたGPシリーズスケートアメリカ、NHK杯、年末の全日本選手権と立て続けに見送ることとなった。

陸上トレーニングに励むりくりゅう
陸上トレーニングに励むりくりゅう

試合に出られない悔しさがあったが、三浦にとっても木原の腰を治すことが優先事項だった。

「GPシリーズも全日本も出られなくて本当に残念だったんですけど、『今シーズンは腰を優先に考えようね』って話をしました」(三浦)

「自分は本当に出場したかったんですけど、璃来ちゃんもブルーノコーチもとにかく僕の腰のことを心配してくれて、『本当に絶対ムリをしないように』と止めてくれました」(木原)

三浦の演技に拍手する木原
三浦の演技に拍手する木原

診断を受けてから木原はとにかく氷に乗らない期間を一定期間設け、リハビリを開始しながら少しずつ氷に戻っているという。

「ペアのエレメンツはほとんど練習を抑え、滑る練習をしている状態。 今はとにかく治すこと。我慢することを優先する日々を過ごしています」と木原は今の練習や状況を教えてくれた。

大きなゴールは2年後

取材を受ける2人に、不安や焦りの表情は見えなかった。

その理由はこれまで数々の試練を2人で乗り越え、そのたびに強くなってきたからだという。

「強くなって戻る」と誓いトレーニングに励む2人
「強くなって戻る」と誓いトレーニングに励む2人

「わたしたちはコロナの期間や私自身のケガなど、なにかあるごとに“成長できているな”と感じている。

今シーズンも龍一くんのケガから今、たくさんのことにチャレンジしているので、それがいい方向にいけたら」(三浦) 

「毎年何かしらの試練があるので。その度に『強くなって戻る』と2人で話しているので。強くなるチャンスかなと、今捉えています」(木原)

一緒にスケート靴を履くりくりゅう
一緒にスケート靴を履くりくりゅう

結成5年目となる2人。

2021年、コロナ禍のロックダウンによるカナダでの日々を乗り越えたことで絆が深まり、勝ち取った初の北京五輪では団体の銅メダル獲得に大きく貢献。

昨季は三浦のケガもあった中で年間グランドスラムを達成。

試練を乗り越えるたびに強くなったことを証明し続けて来た。

氷上練習をするりくりゅう
氷上練習をするりくりゅう

そして2人がいま、見据えているのが2026年のミラノ・コルティナ五輪だ。

「今年がゴールではない。2年後に向けてまた弱い部分をしっかり強くしていく時期なのかなと思います」(木原)

「今だからこそジャンプの練習時間を多くしたり、トレーニングの仕方を変えてみたり、いろいろなことができるので、試行錯誤の時間かな」(三浦)

スケート以外のことも挑戦

復帰に向けて、パワーアップのための準備も行っている。

木原が開いた足の下を、両手を握った姿勢で三浦を後ろからするりとくぐらせ、引っ張りあげた勢いで、“お姫様だっこ”の姿勢にキャッチする「ベイビーキャッチ」。

2人にとってトレードマークでもある「ベイビーキャッチ」
2人にとってトレードマークでもある「ベイビーキャッチ」

このつなぎの技は、三浦の肩の影響もあり2年ほど演技から外していたという。

2人にとってトレードマークでもある技を戻すため、三浦は木原とともにリハビリに通い、肩の強化を行っているそうだ。

さらに、フィギュアスケート以外のことも2人はこの期間に挑戦しているという。

木原は「リハビリで電車に乗ることが楽しかった」と語る。

「ケガをしていなかったら、リハビリに電車で通うとか、トロントの街の方に行ってリハビリとか、そういったことがなかった。

今までトロントに来てからそういった経験がなかったので、それはそれですごく新鮮で楽しかった。地下鉄の乗り方とか詳しくなったもんね」(木原)

また空いた時間には2人で「マリオカート」を楽しんだり、普段の食事を栄養士に見てもらい、食事の見直しなども行っているという。

インタビューで「この期間を乗り越えたい」と話した2人
インタビューで「この期間を乗り越えたい」と話した2人

復帰までの期間も常に進化し続けようと、前向きに歩き続けている2人。

「試合に出られない期間があるからこそ、試合で“スケートの楽しさ”がもっと爆発すると思う。そこをみなさまに見てもらえるように、この期間を頑張って乗り越えたいと思います」(三浦)

「元気にスケートを楽しんでいる姿をまた、お見せしたいです」(木原)

昨季の成績により、四大陸選手権の出場が決定した2人。シーズン後半戦から復活の快進撃に期待がかかる。

フィギュアスケート取材班
フィギュアスケート取材班