能登半島地震に関連して支援状況などを報告する中部地方9県1市の連絡会議に、静岡県の川勝知事が首長で唯一欠席した問題で、県議会の自民会派と公明会派が抗議を申し入れた。ただ、知事を支える第2会派はというと…。

首長欠席は静岡のみ 知事は賀詞交歓会に

この問題は、能登半島地震を受けて4日午後5時から開かれた中部地方9県1市のオンライン連絡会議に静岡県の川勝平太 知事が出席しなかったものだ。

石川や静岡、愛知などの9県と名古屋市は、災害時に互いに協力し合う協定を結んでいて、連絡会議には被災した石川県の馳浩 知事や富山県の新田八朗 知事も出席。

支援を呼びかけた石川県・馳浩 知事(1月4日)
支援を呼びかけた石川県・馳浩 知事(1月4日)
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連絡会議に出ず代理を立てた構成自治体の首長は川勝知事ただ一人で、しかも川勝知事は同時間帯、地元新聞社が主催する賀詞交歓会「新年のつどい」に参加していた。

この問題について、川勝知事は9日、「我々は先に助ける体制を整えた」と釈明。

欠席を釈明する静岡県・川勝平太 知事(1月9日)
欠席を釈明する静岡県・川勝平太 知事(1月9日)

馳知事とは会議が始まる前の午後3時半から電話でやり取りを済ませていたと説明した上で、「我々は先行して救援に入っていた。ですから、あとは(会議で話を)聞くだけということで」と、会議を軽んじるかのような発言をしながら自らの正当性を主張した。

自公2会派が抗議も知事は…

しかし、問題を重くみた県議会の最大会派・自民改革会議は10日、川勝知事に抗議を申し入れる方針を決めると、第3会派の公明党県議団も同調する意向を示す。

そして翌11日、自民改革会議の増田享大 代表と公明党県議団の蓮池章平 団長は申し入れ書を手に知事室を訪れた。

申し入れ書を手渡す自民改革会議・増田享大 代表(1月11日)
申し入れ書を手渡す自民改革会議・増田享大 代表(1月11日)

申し入れ書では、まず「知事の危機管理への優先順位並びに本県の危機管理対応の認識に対して、県民から疑念の声が数多くあがっている」と苦言を呈したほか、「静岡県知事だけが欠席したこと、黒田危機管理監の代理出席であったため静岡県は発言の機会も与えられなかったこと、さらに会議前に石川県知事へ度々電話をかけるなど、被災地の県知事に対する配慮も欠けている」と指摘。

その上で「知事の危機管理の対応は、静岡県の危機管理を預かるトップの判断として、極めて不適切である。今回の件は、ただ単に知事がひとつの公務を放棄したことにとどまらず、知事及び県庁組織の危機管理に対する意識の低さが露呈したものとみなされる」と糾弾した。

知事に苦言を呈す公明党県議団・蓮池章平 団長(1月11日)
知事に苦言を呈す公明党県議団・蓮池章平 団長(1月11日)

申し入れ書を受け取った川勝知事は「被災地支援第一に、これからも全力で尽くします」とだけ述べたが、あくまでも否を認めることのない姿勢に我慢ならなかったのか、蓮池団長は知事に面と向かって「一連の行動は間違っている。現地は本当に大変な状況なのに、指揮官(馳知事)に直接連絡し、『静岡県の災害対策が先行している』と言うなど決してあってはならない。9県1市がそれぞれ同じようなことをしたら大変なことになるのは明らか」と怒りをぶちまけた。

“川勝与党”は知事を擁護

一方、増田代表と蓮池団長が知事室を後にしてから約1時間後、今度は第2会派・ふじのくに県民クラブの役員が知事室を訪れた。

要望書を手渡すふじのくに県民クラブ・田口章 会長(1月11日)
要望書を手渡すふじのくに県民クラブ・田口章 会長(1月11日)

ふじのくに県民クラブは川勝知事を支える“応援団”的な立場として知られていて、被災地に対する人的支援と物的支援の継続や支援を機動的に実施するための財源確保など4点を要望しただけで、知事が連絡会議を欠席し賀詞交歓会に参加した問題については、苦言どころか言及すらなかった。

面会後、田口章 会長は自民改革会議と公明党県議団の申し入れに同調しなかったことについて「政策的な提言というより抗議文のような感じだったので、私たちと考えていたものとは違うと判断した」と述べた上で「政策提言をすべき」と胸を張った。

ただ、厳しい見方をすれば今回の要望書には極めて“一般的”な事柄しか記載されておらず、目新しい政策は一切ない。

ふじのくに県民クラブ・田口章 会長(1月11日)
ふじのくに県民クラブ・田口章 会長(1月11日)

田口会長は、この問題について「いろいろな考えがある」と断った上で「事前に馳知事とは話をしている」と川勝知事を擁護する姿勢を示したが、問題の本質は馳知事と直接やり取りをしていたか否かではなく、被災地支援に向けた連絡会議よりも賀詞交歓会を優先したことであり、その意味で川勝知事の行動が不適切だったことは言うまでもないし、それを諫めることが出来なかった県職員の責任も大きい。

田口会長によれば、会派内で川勝知事に対して注意や指摘すべきという声はなかったそうだが、川勝知事を支える立場だからこそ正すべきは正すという姿勢が本来あるべき姿なのではないだろうか。

(テレビ静岡)

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