13歳で北朝鮮に拉致された横田めぐみさんの母・早紀江さんが、2月4日に90歳の誕生日を迎えた。「北朝鮮に行きたいと思っている」と明言する早紀江さん。娘を求める思いは、今、頂点に達している。

拉致から49年…母は90歳 娘は61歳に

1936年(昭和11年)2月4日生まれの横田早紀江さん。28歳のときに出産した第一子が、めぐみさんだ。

横田早紀江さんとめぐみさん
横田早紀江さんとめぐみさん
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手製のワンピースを着せた。隣に並んで何度も何度もお気に入りの児童書を読み聞かせた。大切に育てた。

新潟の秋が十分に深まったあの日は、シチューを作って部活の帰りを待っていた。

めぐみさんが13歳で姿を消したのは、1977年11月15日。早紀江さんは41歳だった。

それから49年。2026年2月4日に90歳の誕生日を迎えた早紀江さん。

横田早紀江さん
横田早紀江さん

「本当に長い年月たくさんの方に出会って、ここまでまっすぐ倒れることなく、皆様と頑張ってこられたことは本当にありがたいことだと思う。ただ、肝心のことがさっぱり見えないし、日が経つにつれて向こうも老いていく」

90歳を前に臨んだ会見で語られた「向こうも老いていく」という言葉。

目の前にあるのは、自身が90歳を迎えた今、最愛の娘は61歳になっているという動かしがたい現実だ。

なぜ今解散?期待寄せる首相の決断に戸惑い

「難しいと思うが、政府には本当に命懸けで頑張っていただきたい」何度も繰り返した政府へのメッセージにも、切迫感がにじむ。

親も子も年を重ねる中、早紀江さんは、2025年10月の就任直後から拉致問題の解決に意欲を示した高市首相に大きな期待を寄せている。

それゆえに、年が明け表明された衆議院の解散には驚きを禁じ得ない。

「(高市首相に)非常に期待していたら急に解散になった。なんで今頃、解散なさるのかなと一つ一つ心配で、ハラハラしながら拝見している。せっかく首相になられて日も浅いのに、解散というのはどんな意味があるのか分からない」

会見で高市首相の衆院解散という政治決断について問われた早紀江さんの表情には、心もとなさが漂った。

同時に早紀江さんは、今回の衆院選で拉致問題に関する訴えが聞かれないことにも疑問を感じている。

2000年代、拉致問題の解決を声高に訴える候補者は数多く存在した。

「(候補者が)拉致問題に対して、あまり言葉に出ない感じがある。拉致問題は日本の国が必ず解決しなくてはいけない問題。あれだけの人が立候補して、『私が』『私が』と今も言っていらっしゃる。では、(政治家になって)何をするんですかと…。一番に生命を取り返さなくてはいけない。こんな理不尽なことをされていて」

膠着状態が続く中、政府が突破口を見いだせずにいるこの問題を選挙戦で訴える候補の姿は、ほとんど見当たらない。

日本国内の風化を待つ北朝鮮 ただ1人の親世代となった早紀江さん

早紀江さんは「北朝鮮はこの問題が日本国内で風化することを待っている」と嘆いている。

「(歴代首相が)みんな『会いたい』『日朝会談をしましょう』と言ってこられたけど(北朝鮮は)絶対黙っているし、会わない。そうやって(拉致問題を)動かそうとしてない。そうしておけば、『だんだん日本は忘れるし、もう言わなくなるだろう』『(親世代の)あの人も亡くなって、あの人が亡くなったら、日本はもう何にも言わないだろう』というぐらいに見ていると思う。日本はそんな国で本当にいいんでしょうかと本当に力の限り言いたい」

「あの人が亡くなったら、日本はもう何も言わないだろう」…。その“あの人”こそ、帰国していない拉致被害者の親世代でただ1人となった早紀江さんなのだ。

早紀江さんは「どうしたら北朝鮮が日本を向いて動こうとするのかが一番大事だ」と付け加えた。

羽田ではなく「北朝鮮に行きたい」

90歳を迎える今、めぐみさんを求める思いは募りに募っている。その気持ちを表す言葉が会見で聞かれた。

「北朝鮮に行きたいと思っている。そういう思いがいつもある」そして、「もうどうなってもいい。ここまで(救出活動を)やったので」と続けた。

これに対し、会見場の記者も思わず質問を重ねた。

「羽田空港で出迎えるよりも北朝鮮に(自ら行く)?」

早紀江さんの返答も加速する。

「北朝鮮に行って、その人(金正恩総書記)と目を合わせて。そのぐらいの思いを向こうに伝える方がいいのではないかと思っている。そこまで(自身が)もつかどうか分からないけれど」

首相に同行し、金正恩総書記に直接訴えたいと話す早紀江さん。

残された時間は少ないのだから、なりふり構わずに何でもする。90歳という年齢を迎えたからこその叫びだ。

救出活動に捧げた半生「少しでも長生きをして…」

夫婦ともに救出活動に半生を捧げた。2020年に“戦友”だった夫・滋さんが旅だったのは87歳のときだった。

2023年に体調を崩し入院した早紀江さんだが、現在の健康状態に問題はないという。

「しっかり気をつけて頑張って、少しでも長生きしないといけないと思っている」

13歳のときに理不尽に奪われた娘との再会を誓う母の思いが、このまま置き去りにされることがあってはならない。

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NST新潟総合テレビ
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