静岡県の川勝平太 知事が賀詞交歓会への参加を優先し、能登半島地震の支援に向けた自治体間のオンライン会議を欠席したことが波紋を広げている。これを受け、県議会の最大会派は知事に申し入れする方針を決めた。
能登支援の連絡会議に出ず賀詞交歓会へ
石川県や愛知県、静岡県など中部地方の9県と名古屋市は、災害が起きた際に相互に協力し合う協定を結んでいて、能登半島地震を受け4日午後5時から急きょ開かれたオンラインの連絡会議で石川県の馳浩 知事は悲痛な思いを吐露した。
「石川県を助けていただきますようによろしくお願い致します」
この記事の画像(10枚)しかし、そこに静岡県の川勝知事の姿は無かった。代わりにあったのは黒田健嗣 危機管理監の姿だ。
9県1市の首長のうち本人が会議に出ず、代理出席を立てたのは川勝知事ただ一人。しかも、知事は同時間帯に地元新聞社主催の賀詞交歓会に参加していたことがわかっている。
「他人事ではない」との訓示も虚しく
1月4日は官公庁の仕事始めで、幹部職員に対する訓示では能登半島地震に触れ、「本県にとっても他人事ではない。危機管理を常に念頭に置き、仕事をしなければならないと改めて痛感した」と口にした川勝知事。
また、午後に行われた年頭会見でも「今後も現地で救出・救助活動や災害対応の支援、情報収集を進めるとともに、必要に応じて追加の人的物的支援を全力で行っていく」と述べていた。
なにより、静岡県は2021年7月に熱海市で起きた土石流災害に際し、各地の自治体、警察、消防から職員の派遣を受け、災害対応を支援してもらった立場だ。
「先行して救援」とは言うが…?
9日、取材に応じた川勝知事は「我々は先に助ける体制を整えた」と釈明。
その上で、4日は午後3時30分から馳知事と直接やり取りをしたとして、「我々は先行して救援に入っていた。ですから、あとは(会議で話を)聞くだけということで」と強調した。
たしかに、県の内部資料を見ると当日の公務日程には午後3時30分から40分までの間、「馳 石川県知事への電話」という予定が入っているし、静岡県としては発災当日のうちに警察の広域緊急援助隊 警備部隊や消防の緊急消防援助隊を派遣し、その後も災害派遣医療チームや災害マネジメント支援チームなどを被災地に送っているのは事実だ。
しかし、それは静岡県に限った話ではない。
各県や市のホームページに記載されている通り、連絡会議に参加した自治体はいずれも4日時点で石川県に対する何らかの人的支援を行っていて、そこには能登半島地震で被害を受けた富山県も含まれる。
さらに言えば、長野県の阿部守一 知事は「県内も最大震度5弱を記録したものの人的被害はなかった。長野県に対する支援要請を比較的軽めにしてくれているのではないかと思うが、北陸地方とは距離的にも近接しており、長野県を『応援される側』ではなく『支援側』の県であるとぜひ念頭に置き使ってもらえたら」と呼びかけた。
最大会派が抗議の意を込め申し入れへ
こうした状況に、県議会の最大会派・自民改革会議では一部の所属議員から「見過ごすべきではない」などと知事の姿勢を問題視する声があがったため、1月10日には緊急の役員会と議員総会が開かれ対応を協議した。
関係者によれば、「馳知事と話したから良いという釈明はおかしい」「被災地が大変な中で政務を優先する姿勢は許せない」「知事の対応について知らない県民も多い」「今回の一件について知事から直接説明させるべき」といった意見が出されたといい、最終的には川勝知事に対する申し入れをする方針が決まった。
すでに第3会派の公明党県議団も賛同する意向を固め、調整を進めているという。
会議終了後、増田享大 代表は「どんな事情があるにせよ、被災者の思いや現地にたくさんの県内関係者が支援に赴いている現状を考えると欠席というのは非常に残念。9県1市が協定を結んでいる中で、本県の知事だけが欠席で他の県と名古屋市長は本人が出席し、見舞いも含めた発言をしている中で、静岡県だけ発言がなかった」と苦言を呈した。
また、川勝知事の釈明に対しても「発災直後から関係自治体はみんなで応援しようという気持ちで動いており、(災害派遣は)当然のこと」と斬り捨てた上で「被災県を囲む最初の9県1市の会議だったので、どう見ても公務。公の会議なので本県代表者として出席するのが本筋だった」と述べた。
9日の時点では自身の対応を正当化した川勝知事だが、世間の批判も強まる中で申し入れに対してどう反応するのか注目されている。
(テレビ静岡)