世界で活躍したすし職人・篠原秀和さんは、2022年にふるさとの秋田・にかほ市に戻り、海外での経験と夢を詰め込んだ空間づくりを進めている。“冬の秋田に温かな空間を”。次なる展開が始まっている。

イタリアから帰国し「ピザ屋」を開業

「第7章まで頭の中にある。鳥海山を見ながら楽しいことをするというので、妄想が止まらない状態」と話すのは、にかほ市象潟町出身の篠原秀和さん。

篠原秀和さん
篠原秀和さん
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元々は「すし職人」の篠原さんは、東京で修業を積んだのち、24年間イタリア・ミラノで創作寿司を振る舞い、2022年にふるさと・にかほ市に戻った。秋田に戻り、第1章としてまず、始めたのは「ピザの店」だ。

2023年7月から、鳥海山や田園に囲まれた場所にある「まさえんzero」でこだわりのピザを提供している。

篠原さんは、ミラノ時代にピザを作る免許を取得していて、店では「ミラノの味」を楽しむことができる。オープン以来、客足は絶えず、休日には1日150枚ほど売れる人気ぶりだ。

篠原秀和さん:
イタリアでインプットしてきたことを、秋田県・日本の人にアウトプットしたいという考え。こんな楽しいことをしているおじさんがいるよ、楽しいよとアピールしたい。そういう場所になれば良いなと思っている

思い出の詰まった家を「カフェ」に改造

2023年秋、再び訪れると、篠原さんは「ここが第2章が始まろうとしているカフェとバイク屋さんです」と教えてくれた。場所は「まさえんzero」の目の前にある、篠原さんが昔、家族と過ごした家だ。

篠原秀和さん:
自分が住んでいたのはここなんです。ここに自分の部屋があった

思い出の詰まった家を「理想郷」に。客が快適に過ごせるよう、こだわりが散りばめられている。2023年10月ごろから、「まさえんzero」の営業と並行して、篠原さんも積極的に工事に参加した。

篠原秀和さん:
「冬だから来る」というイメージをつくりたくて、暖炉とか、温かい雰囲気を出せれば良いなと思っている。これがいずれやろうと思っているすしカウンター。カウンターの木が1本の木、一枚板っていうやつ。この辺に座ると最高のロケーションで、特等席になるかなという感じ

篠原さんの夢の実現のため、作業を手伝ったり、資材を譲ったりとさまざまな人が協力した。宮大工の畑山仁一郎さんもその一人だ。

畑山工務店・畑山仁一郎さん:
最初は雲をつかむようなものよ。それについていくのが大変で

篠原秀和さん:
みんな応援してくれるというか。当初も言っていた「人も巻き込んでいきたい」というのは、まさしくこういうことだなと思って。人が集まる場所をとにかくつくって、お金のことは後でいいかなと

「caffe coda」がオープン

鳥海山が雪化粧した12月。「caffe coda」がオープンの日を迎えた。

篠原秀和さん:
こんな感じになりました。きょうオープンでドキドキしますけど、第2章が始まる感じです

店名の「coda」は、イタリア語で「しっぽ」や「行列ができること」を意味する。

木をふんだんに使ったぬくもりのある店内。家具はほとんどがイタリアから取り寄せたものだ。暖炉の前にはロッキングチェアが置かれた。レンガはおしゃれな炉台へと姿を変えた。

そして至るところに置かれたバイクや自転車。篠原さんがイタリア時代に乗っていた思い入れのあるものだ。

すしカウンターは木目を生かし、客が心地よく食事を楽しめるよう、高さや照明にこだわったという。

壁には、イタリア時代に一緒に住んでいたという友人の画家・Carlo Lioceさんの絵やバイク雑誌などが飾られている。

異国の雰囲気が漂う店内で楽しめるのは、アツアツの「ドリア」だ。

篠原秀和さん:
ピザの延長ということもあったし、冬場にアツアツ!というイメージをつくりたかった

メインメニューの「キーマ」など、地元産の食材を使った7つの味を提供する。コメは地元産のあきたこまちを使用。昆布・しょうゆなどを加えてコクを出した。

固形燃料で温めながら食べ進めるため、「最後までアツアツで食べられるの良い」と客からも好評だ。

営業時間は、午前11時~午後6時まで(冬季は午後5時まで)。定休日は毎週月曜・第4火曜。

「地域だけでなく、日本も盛り上げる」

今回オープンしたのは、カフェだけではない。第1章「まさえんzero」に続き、第2章「caffe coda」、そして、第3章「これでIINODAモータース」が幕開けした。

篠原秀和さん:
他人から見たらごみだけど、自分から見たらお宝

カフェに隣接する倉庫には、篠原さんの「お宝」が詰め込まれた。バイクや部品などが展示されているほか、いずれはオリジナルブランドのアパレルの販売やバイクのカスタムなどを行う予定で、いつかライダーの聖地になるかもしれない。

篠原秀和さん:
冬だから、雪が降っているからどこにも行かない、という考えを取り除いて、「まさえんに行けばこんな温かい料理あったな」とか、コーヒー1杯で何時間もいられるような雰囲気をつくれたらなと思う

鳥海山のふもとで始まった篠原さんの物語は、多くの人を巻き込み、笑顔にしながら、これからも広がり続ける。

篠原秀和さん:
すしも第4章になるんですかね。“理想郷”ができているなと思う。地域を盛り上げるだけじゃなく、大きく言うとにかほ市、秋田、もっと大きく言うと日本を盛り上げるくらいの気持ちでいけば、それに近づけられるかなと思っている

今後の展開として話してくれたのは、篠原さんの本業・すしの店、サウナ、地域の農産物などが購入できる味知の駅、ツリーハウス、無農薬のレモン栽培、宿泊施設。どこまで広がるか分からない篠原さんの挑戦から目が離せない。

(秋田テレビ)

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