12月21日から開幕する全日本フィギュアスケート選手権。

毎年、年末に行われる氷上の日本一決定戦だ。

いまそのトップに君臨するのは宇野昌磨と坂本花織の2人。

宇野と坂本は世界選手権2連覇を果たしている。

世界最強時代に突入したスケート大国ニッポンの頂上決戦が、今年は長野・ビッグハットで行われる。

GPファイナルを2位で終えた宇野に、全日本への思いを聞くと「良い演技でも悪い演技でも笑顔でいてほしい」と答えた。

ハイレベルな選手の中で戦い、引っ張りたい

世界選手権2連覇中の宇野は、過去5度全日本で優勝している。

今年、6度目の優勝を決めれば高橋大輔、浅田真央、羽生結弦と並ぶ大偉業だ。

時代が動く激動のシーズンに、絶対王者は何を思うのか。

2023年の世界選手権で2連覇した宇野昌磨
2023年の世界選手権で2連覇した宇野昌磨
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――フィギュアスケーターとしてのキャリアを歩まれている中、12月はシーズンの中でどんな位置づけですか。

クリスマスツリーを見ると、「うわ、全日本だ」と思いますよ(笑)。僕たちには、クリスマスは存在しないので。小さい頃から一番緊張する、一番大きな大会。

そこでいい成績を残せば、もっと大きな大会に出れますけど、12月に入ってちょっと寒くなってきたな、って思ったら、「うわ、そろそろ全日本か」という感じはします。

――去年の今頃と比べて、何か心境の変化はありますか。

去年は全然覚えてないんですけど、すごい楽しみではありますね。

(鍵山)優真くんとか含めて、たくさんのハイレベルな選手がいるので。その中で僕は戦っていきたいですし、ちゃんと引っ張っていける存在でありたいなと思っています。

2022年の全日本で2連覇した宇野昌磨
2022年の全日本で2連覇した宇野昌磨

――昨シーズン全勝して「追われる立場」となった今、ご自身でなにか変化はありましたか。

「追われる立場」は僕にとって、昔は合わないかなとは思っていました。でも、年齢とともにそこは変わるんだなと思って、特に気にならなくなりました。

追われる立場として、スケート界を引っ張っていけるような選手であり続けることも、モチベーションの1つです。でもやっぱり僕は、ともに戦っていける仲間が、ギリギリの戦いを繰り広げられる仲間がいることの方がモチベーションになる。

なので、本当に優真くんや、(イリア・)マリニンくん、アダム(・シャオイムファ)くんに感謝しています。

スケートへの「真剣度」は負けない

――他の選手の成長をどう感じますか。

時代を感じますね。どんどん時代の流れが流れていくなって年々思います。僕は25歳で、もうすぐ26歳ですけど、年々、自分も同じように成長していると思っています。

この2、3年で、僕も跳躍的に技術が向上して、それがメンタルからくるのか、いろんなことが噛み合っていると思うんですけど…。なので、若手が来たというよりも、若手と一緒にグッと上がっている感じがします。

若手が追い上げてきているというよりも、若手に「憧れている」と言われて、僕もちょっと“憧れられる存在でいたいな”と思って、一緒にグッて上がった。メンバーとか見て時代の流れを感じますけど、あまり技術的なところではそんなに感じていません。

今シーズンのフリーの練習をする宇野
今シーズンのフリーの練習をする宇野

――そんな彼らに“絶対に負けない”と思えるものはありますか。

「スケートに対する真剣度」は、負けないとは思いますね。

スケート以外、何もしていないんですけど、スケートに関わる、向き合う姿勢、そこが“これだけの熱量で僕がやれるから、今こうして長くいる、この立ち位置に立てている”と思います。

僕の技術は、ジャンプも、表現も、どこかすごく飛び抜けているわけではないのですが、でも、全部ちゃんとこなすことができます。

「武器は?」と言われたら、技術よりも、「スケートに対する考え方」というところかな。あとは、さすがに年齢も重ねているので、試合に対するメンタルの部分、人よりたぶん緊張してないと思いますし、落ち着きとかが、武器なのかなとは思います。

2022年の全日本で演技を終えた後の宇野昌磨
2022年の全日本で演技を終えた後の宇野昌磨

――今年の全日本は、どんな表情で大会を終えたいですか。

最近思うのは、見る側の人のために、悪い演技でも、いい演技でも笑っていてほしいなと思います。

スポーツ全般に言えることかもしれませんが、やっぱり応援してくれたり、頑張ってほしいって思うスケーターがいて、その人が笑顔だと、その結果を応援しているのではなく、その選手を応援しているのであれば、応援している人は嬉しい。

誰も、失敗したくて失敗している人はいないので、最善を尽くした練習をした上で失敗してしまった。その上で、悲しんでいると見ているこっちも悲しいので、笑顔でいてほしい。それは僕に限らず、全選手に思います。

今シーズンは“表現力”を磨き、「自己満足」をテーマに、自分を納得させることに注力している宇野。全日本選手権ではどんな演技で会場を魅了してくれるのか、期待が募る。

全日本までの道の詳しい概要はフジスケでhttps://www.fujitv.co.jp/sports/skate/figure/index.html
FODで全選手・全演技LIVE配信

フィギュアスケート取材班
フィギュアスケート取材班