12月21日から開幕する全日本フィギュアスケート選手権。

その大会で2連覇を果たしているのが、坂本花織(23)だ。

坂本は「3連覇目指して精いっぱい頑張ります。ショートもフリーも自己ベスト更新したいと思っているので内容も大事」だと意気込む。

フリーのテーマは「ミステリアス」

今シーズンはGPシリーズ2戦でともに優勝。そして進出したファイナルでは、悲願の初優勝。

目標としていた「1、1、1」(GPシリーズ2戦とファイナルの連勝)を成し遂げた。

去年は「悪いイメージがよぎったりした」と振り返る坂本だが、「今年はずっと前向きに、試合に向かえていると思う。それがすごく良い方向に向いていて、気持ちがしっかり結果につながっているのでうれしい」と語る。

カメラを向けるとピースをしてくれた坂本
カメラを向けるとピースをしてくれた坂本
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現在、坂本は全日本選手権と世界選手権で2連覇中だ。

今回のGPファイナル制覇により、2018年の四大陸選手権、世界選手権(2022・2023年)と主要国際大会3冠達成。浅田真央さん以来の偉業となる。

このことを聞いた坂本は「いや、もう自分の実績とは思えなくて。誰の実績だろう?」と笑う。

普段の坂本は、カメラを向けるとすかさず“変顔”をするなど、底抜けに明るく愛されキャラだ。

坂本はいつも周囲を楽しませてくれる
坂本はいつも周囲を楽しませてくれる

そんなひょうきんなキャラクターの一方で、演技が始まれば持前の表現力でその世界観に入り込む。

そのギャップも、彼女の魅力のひとつだ。

ただ本人からすると、その使い分けは難しいようで「素を出しちゃうとどうしても、面白さや楽しさが勝っちゃうので、それを押し殺して。10代では恥ずかしさでできなかったことが、この年齢になっていろいろやってきて『こんなんできるようになっちゃったんだ』と思う」と語る。

自身のイラストにうれしそうにする坂本
自身のイラストにうれしそうにする坂本

世界的に注目されるトップアーティスト・田村大さんが手掛けた、坂本のイラスト。

坂本の表情を意識して描いたもので、田村さんも「普段は明るいのに、演技はどこかミステリアス。目をつぶって息づかいまで聞こえるような少し大人っぽい表情を意識した」と話す。

氷上練習をする坂本
氷上練習をする坂本

こうした“表現力”は坂本自身、今まさに課題として取り組む強化ポイントの一つであり「シニアにあがっていろいろなジャンルで“大人っぽく”はしてきたけど、ミステリアス系は初めて。テキパキ動くより、動き続ける決まったポージンズがない」と今シーズンのフリーは「難しい」という。

振付師のマリーさんらと(Sysmex figureskatingteam インスタグラムより)
振付師のマリーさんらと(Sysmex figureskatingteam インスタグラムより)

今回のフリーのテーマは“ミステリアス”。なぜ、このテーマに挑戦しようと思ったのか。

「去年の『Elastic Heart』もマリー(=フランス・デュブレイユ)先生にお願いして、今年はそれの応用みたいな感じ。最初は自分もできるかな、と不安がありましたが、この年齢なので、もう恥ずかしがらずに別人格みたいな感じでできるかなって。今までの積み重ねでこういう曲もハマってきたのかな」

言葉で伝えられないから大事なこと

「どうしても試合に集中すると目線がどこにもいかなくなるので、目線をひとりに絞って動かさないとかしている」

こう話すように、氷上練習で坂本は目線を集めたり、外したりしてみるなど、思わせぶりで“ミステリアス”な雰囲気を醸し出すように努めていた。

目線の持っていきかたを氷上練習で確認する坂本
目線の持っていきかたを氷上練習で確認する坂本

「フィギュアスケートって言葉では伝えられないから、体や曲にあわせて表現で伝えていくことが大事。指先や目線が大事になってくるので、そこをもっと強化していけたら。去年とはまた違う、毎年更新されるように『こういうものもできるようになったんだね』と言われるようにしたい」

表現力のブラッシュアップを行い、加点を量産するダイナミックなジャンプも絶好調だ。

そんな坂本は、今回の全日本出場は11回目。

当時13歳で全日本に初出場した坂本
当時13歳で全日本に初出場した坂本

2013年の当時13歳で初出場した坂本の結果は15位。

初めて出場したときの映像を見た坂本は「初々しい!当時よりだいぶ、心臓が強くなったかと思います」と笑う。

平昌五輪を決め、初めて表彰台にのぼった2017年の全日本
平昌五輪を決め、初めて表彰台にのぼった2017年の全日本

さらに、2017年の平昌五輪を決めた全日本は「足ガクガクでした。しかもショート初めて1位通過して」と懐かしむ。

5度目の挑戦で初めて表彰台を手にし、平昌五輪の出場権を勝ち取った。

全日本後、坂本の平昌五輪出場を喜ぶ三原舞依
全日本後、坂本の平昌五輪出場を喜ぶ三原舞依

大会後には、長年ともに切磋琢磨し、五輪までは一歩届かなかった三原舞依の喜ぶ姿が。

彼女に「何が一番うれしいですか?」と聞くと「カオちゃんがオリンピック獲れたことがうれしい。一緒に練習してきて選ばれたらうれしい」と答えたという。

さらに自身も「結構見返す」というほど、印象深いのが2018年の全日本だ。

キスクラで見せた“喜び3段活用”

初めて表彰台にのった翌年、2位で迎えたフリーでは圧巻の演技を披露する。

このときのキスアンドクライで見せた坂本の表情が本人いわく「喜び3段活用」とのこと。

2018年の全日本はキスクラで喜びを爆発させた
2018年の全日本はキスクラで喜びを爆発させた

「最初の『わぁー』は点数に対して『うわー、220超えた!』って、その後の『えー』はパッと見たら1位って書いてあって。『えー!』みたいな感じになって」

6度目の挑戦でついに初優勝を果たしたが、フリーの得点や総合得点、初優勝と驚きが連発したことで、キスアンドクライでは混乱状態だったという。

そして、去年の全日本では坂本の代名詞・ダブルアクセルが満点に。

2022年のダブルアクセルは満点を獲得
2022年のダブルアクセルは満点を獲得

「これを身につけたのが中学生のときで、自分ができる、確実におりられるスピードでやっていたんですけど、中野(園子)先生が『全力でダッシュで跳べ!』って言って、それを何回も繰り返していたら、そのスピードに乗って跳んでいくことにハマって。激しく行き過ぎて1回コケて、そのままフェンスにツッコんで骨折したこともあって。でも、それができたら、やっぱり楽しいのでいまだにやっています」

常にスケートを楽しみ、自分のスタイルを突き詰めてきたからこそ、今の彼女がある。

11回分の思い出がある坂本の全日本だが、今の坂本は「追われる立場」でもある。

一緒に練習する三原舞依、三宅咲綺と
一緒に練習する三原舞依、三宅咲綺と

ジュニア勢も台頭してきている中、坂本にとって全日本はどんな位置付けなのだろうか。

「全日本で来年以降の試合も決まるので、本当に大事な試合でプラス、ジュニアからの推薦の選手もいて、同世代もトップレベルなので、1つのミスも許されない。自分ができることを精いっぱいやるだけ」

そして、目指すのは3連覇だ。

全日本への意気込みを語る坂本
全日本への意気込みを語る坂本

「シーズン前から全日本と世界選手権の3連覇はずっと言ってきたので、本格的にその目標に向かって進んでいかないといけない。全日本は世界選手権と同じくらい緊張する試合で、いつも独特な雰囲気があって、心臓がつぶれそうになるくらい緊張しています」

表彰台で坂本のはじけるような笑顔を見ることができるか、期待したい。

全日本までの道の詳しい概要はフジスケでhttps://www.fujitv.co.jp/sports/skate/figure/index.html
FODで全選手・全演技LIVE配信

フィギュアスケート取材班
フィギュアスケート取材班