昨シーズン、大技トリプルアクセルを引っ提げブレイクを果たした渡辺倫果。
深海生物「ダイオウグソクムシ」好きとして、その魅力を語った際に海外メディアでも話題となった。
12月上旬、インタビューをした後の氷上練習で渡辺は、トリプルアクセルを今季初めて着氷してみせた。

「いつから跳べてないとはちょっと言いませんが、私のトリプルアクセルはオフシーズンが長かったから、世界一周旅行行ける!と思ったら迷子になっちゃったみたいで。今日は日本に帰ってきてたまたま千葉によってくれたみたいで(笑)」

渡辺は独特な表現で喜びを爆発させた。
去年、世界選手権前のインタビューでトリプルアクセルに挑戦し続ける理由として「自分のプライドが挑戦を止めることを許さない」と答えていた。
しかし、今シーズンは挑戦をしながらも、自身の武器との向き合い方に変化が生まれたという。
中国大会で自身の演技を再認識
昨シーズン、初出場したGPシリーズスケートカナダで優勝。その後、GPファイナルにも出場し、4位という結果を残した渡辺。
12月の全日本選手権では12位という結果になるも、シーズン中の活躍が評価され、四大陸選手権、世界選手権をつかんだ。

そんな渡辺は今季、ブレイクのきっかけとなったGPシリーズに2戦出場した。
第2戦スケートカナダで6位だったが、第4戦の中国大会で2位表彰台にあがった。

「スケートカナダのときが一番、しんどかった。自分の中で分かっていなかったこともあって、ずっとどうしたらいいか分からない状況が続いていて。
中国大会からそこら辺のもやもやが晴れてきて、最近の練習もすごく楽しく、自分のやるべきことをやって、自分を追い込むことができているので、いいイメージのまま全日本を迎えられたら」
表彰台にのぼった中国大会で渡辺は「トリプルアクセルがなくても、ここまでできるんだ」と感じ、自身の演技について再認識できたという。

「中国大会はトリプルアクセルを入れずに200点超えて、フリーの点数も140近く出ました。自分の中ですごくいいイメージを持ったまま全日本に行けそうです。
“トリプルアクセルがなくても、ここまで自分はできるんだ”という気持ちを持つことができています。
そこにトリプルアクセルが入ることによって、大きな違いや、点数も大幅に上がることを考えると、全日本に向けてトリプルアクセルをちゃんと戻して、全日本で決めて、自分の最高の演技をみなさんに見せることができたらいいなと考えています。
そうした自信も含めて、中国大会はすごく自分の中でも印象に残っています」
去年からの“進化”とトリプルアクセル
昨シーズン、大躍進のきっかけとなった、大技トリプルアクセル。
その技に対して、渡辺はGPシリーズなどを経て「トリプルアクセルなくても上位に食い込める」という自信が、今シーズンに生まれたと語る。

「今年の序盤は、“トリプルアクセルがない自分は自分じゃない”という思いも強くはあった。ただ、フィンランディア杯、スケートカナダ、中国大会も、アクセルなしでも上位に食い込めるって思えたのは、自分の中でもいい自信にもつながっている。
そこで中国大会を見ると138点とかなので、トリプルアクセルを入れれば150点近くを目指せることも、自信になっている。
そこは昨シーズンと今シーズンで、自分の中でも大きい変化です。その変化が自分も怖がることなく、楽しめているので、そこが1番のポイントなんじゃないかなと思います」

特に今シーズンは、トリプルアクセル以外の底上げに努めたという渡辺。
その大技なしでGPシリーズ2位という結果に、たしかな手ごたえを感じているようだった。

「ベースの底上げです。私自身、スケーターとして全体が上がっているというより、ベースとなる底の部分が全体的に大きく上がった。それは今後につながってくると感じている。
またトリプルアクセルを入れても、“崩れない渡辺倫果”を、また全日本で見せられるように頑張りたいです」
フリーで入れると決めた!
去年はGPファイナルから全日本を経て、四大陸選手権、世界選手権の代表をつかんだ。
躍進した昨シーズンは、戸惑いながらもその状況を楽しんでいたが、今年は冷静に見つめていた。

「去年はグランプリファイナル出場、そして日本人上位2名という実績があったからこそ、世界選手権に行けたと思っています。今年は全日本があったからこそ、世界選手権に行くという思いがある。
昨シーズンと違う点として、ファイナルがないからこそ、その期間、全日本に向けての練習ができていること。ここ1カ月、中国大会が終わってからの練習はすごく充実していると感じているので、その練習の成果を、全日本という大きな舞台で出せれば」
スケートの底上げに励んだ今季、全日本のフリーでトリプルアクセルを投入する予定だという渡辺。その大技が決まれば今季初成功となる。

「フリーで1本、絶対にトリプルアクセル入れると決めて練習している。中国大会から全日本選手権まで約1カ月だと思います。
アクセルやるかやらないかは自分の中で正直悩みましたが、アクセルがない状態であの点数が出たので、『アクセルを、じゃあ戻したらどうなるんだろう』という好奇心に駆られて。
そこで今はトリプルアクセルを死ぬ気で練習しています。もちろん不安なことはたくさんありますが、また違う自信を、昨シーズンとは違う自信を持って、今年の全日本は挑むことができるんじゃないかな」
渡辺にとって4年連続6回目となる全日本。その舞台での“復活”を期待したい。
全日本までの道の詳しい概要はフジスケでhttps://www.fujitv.co.jp/sports/skate/figure/index.html
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