12月21日から開幕する全日本フィギュアスケート選手権。
多くのフィギュアスケーターたちがこの舞台を目指し、照準を合わせている。
その一人が、大学ラストイヤーを迎え、スケート人生の大きな分岐点を迎える本田真凜(22)だ。
「スケートは自分の全て」
5きょうだいのうち、4人がスケート経験者という本田家の次女・真凜。
世界ジュニア金メダル、JGPファイナル銅メダルと、世界の舞台で確かな実績を積み上げたジュニア時代。
しかし、その後のスケート人生は順風満帆とはいかず、思うような結果が得られなかった。

「スケートは自分の全てじゃないですかね。フィギュアスケートは氷の上に乗っている、練習している、試合に出ている、そのときの自分が一番輝けている場所、自分らしくいられる場所だと長くやってきて思うことです」
20年のスケート人生で一つの節目となる大舞台を迎える彼女に、今までの軌跡を振り返ってもらった。
本田家4人のエース・真凜
「きょうだいみんなで同じことを頑張る。自分にとってすごく大切な時間」
フィギュアスケートについてこう表現した家族思いの彼女。

5人きょうだいのうち、長男・太一、次女の真凜、タレントとしても活躍している三女・望結、末っ子・紗来の4人がスケートに没頭している本田家。
「きょうだいも多いので。自分だけを見てもらえるからスケートは好き」と真凜は語る。
さまざまなスポーツや習い事をしてきた中でも「スケートが一番好きだった」という真凜は、4人の中でもひときわ才能を開花させた。

2歳でスケートを始め、“とにかく兄・太一に勝ちたい”と競技会へ道を進めた。
2011年、全日本ノービス選手権に初出場し、いきなり2位表彰台にのぼる。
翌年、歴代最高得点をマークし、堂々の優勝を果たすなど頭角を現した。
満を持してジュニアに上がるとJGPに初めて派遣される。

2015年JGPクロアチア大会ではショート3位からの逆転優勝。
ファイナルへ進出し、初出場で銅メダルを獲得した。

さらに世界ジュニアでは、ショート・フリーともに自己ベストを大幅に更新する会心の演技を披露。

ジュニア1年目にして世界ジュニア女王となった真凜は、まさに飛ぶ鳥を落とす勢いで躍進を遂げたシーズンとなった。

「将来の夢はオリンピックで金メダル」
あどけない表情で語っていた少女の夢は、現実の目標へと変わっていった。
迎えた平昌五輪シーズンに味わう試練
“世界ジュニア優勝”というビッグタイトルを獲得した真凜には、今までなかった「勝ちたい」という感情が芽生えたという。
しかしシニアに転向した2017年、彼女に試練が訪れる。

当時の心境をこう振り返る。
「きつかったなって思ったのはやっぱり2017-18シーズンですかね。心ここにあらずって感じで。スケート以外の時でも何をしていても、自分が見られているような気がして」
シニアに転向した2017年は、まさに平昌五輪を控えたオリンピックイヤーだった。

中でも真凜は、五輪代表期待の的として世間からより一層注目される。
初戦のUSクラシックで優勝したものの、GPシリーズ2戦ともに5位と低迷。
そんな中で迎えた、五輪代表最終選考を兼ねる12月の全日本選手権。

さまざまな思いが渦巻く特別な舞台で、うまくジャンプを決めることができず、7位という結果に。
平昌五輪への切符をつかむことはできなかった。

オリンピック出場だけを夢見て駆け抜けてきたスケート人生。
失意の底に沈んだ彼女の目には大粒の涙が浮かんでいた。
氷の上にのっている自分が一番輝けている
平昌五輪シーズンを終え、競技続行を決意した真凜。
その時のことを振り返ってもらうと、「つらかったことや悔しい気持ちは、スケートをやっていて良かったと思う瞬間が塗り替えてくれるんじゃないかなと思った」と語る。
スケートへの強い気持ちが、彼女を再び戦いの場へと引き寄せた。
そして、2019年の全日本で真凜の輝きが戻ってくる。
赤い衣装で披露したショートプログラム『Seven Nations Army』。

天性の華やかさとジャンプの安定感が合わさった圧巻の演技を披露し、会場はスタンディングオベーションに包まれた。
この時の演技を、本人はこう振り返る。

「自分のために滑ったらどうなのかなということで、本当にもう自分の限界までたくさん練習しました。演技は良かったんですけど、別になんてことなくて。自分にはちょっと違うのかなと思ったり…」
真凜にとって「自分が頑張ることによって誰かに喜んでもらう」ことこそが、スケートを続ける“原動力”だった。

そして今季のフリー『リトルマーメイド』は、そんな彼女を象徴するプログラムだ。
「選手や先生方にも“真凜らしい”と褒めてもらえたり、ずっと滑っていてほしいって言ってもらえたりするのが嬉しくて。自分らしいプログラムで滑っていて楽しい。“これが自分だよ”っていう演技がフリーは特にしたいなって思っています」
新フリー『リトルマーメイド』は今まで滑ってきた中でも特にお気に入りのプログラム。
主人公・アリエルを演じながら滑ることで、試合も怖がらず挑むことができるという。
全日本の舞台で良い演技を
そんなプログラムとともに舞台に立つ、今回の全日本。
「全日本という舞台はやっぱり絶対にいきたい」

強い気持ちで、学生ラストイヤーの今季も自らの力で全日本への切符を勝ち取った。
その第一歩となった東京ブロック大会では、体調を崩していた影響もあり、ショートは17位スタートに。
それでも全日本への強い気持ちで挑んだフリーでは気迫の演技を見せ、東日本選手権へと駒を進めた。
その東日本選手権では全日本へ出場できるのは、上位5名のみだった。
「20年間のスケート人生の中で考えられないくらい緊張した」と振り返った真凜。

ショートではジャンプをまとめ4位発進。運命のフリーは持ち前の豊かな表現力でアリエルを演じ切り、5位に。
ここまで支えてくれた人たちの顔を思い浮かべ、最後まで諦めなかったという。
「ブロック大会から別人のような演技ができた」と気持ちの強さで勝ち取った。

全力で1つ1つの瞬間を楽しく充実したものにしたい。
決して楽しいことばかりではなかったいままでのスケート人生。それでも20年間培ってきた “強さ”が彼女にはある。

「次の1カ月で見違えるような自分になって、やっぱり強いなって思ってもらえるようなスケートをもう一度したい」
天性の華やかさを持ちながら愚直にスケートに取り組んできた20年間。彼女の集大成に目が離せない。
全日本までの道の詳しい概要はフジスケでhttps://www.fujitv.co.jp/sports/skate/figure/index.html
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