2025年に路面電車を広島駅ビルへ乗り入れるための工事で、広島電鉄初の「十字にクロスした線路」が完成した。冷え込みが厳しさを増す11月下旬の深夜、取材班は“最も難しい工事”といわれる現場を見つめた。

「十字の線路」が新ルートの基準点

2023年11月17日深夜、JR広島駅につながる駅前通りの「稲荷町交差点」に加藤雅也アナウンサーが立っていた。

加藤雅也 アナウンサー
加藤雅也 アナウンサー
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加藤アナ:
工事が始まりました。今、私が立っている場所はすでに新しい軌道ブロックが敷かれています。これから敷設されるスペースが、残りこれだけかと思うと感慨深いものがありますね

残りのスペースにレールを敷けば「十字の線路」が完成
残りのスペースにレールを敷けば「十字の線路」が完成

一部のスペースを残して、交差点には真新しい色のコンクリート製の線路「軌道ブロック」が埋め込まれていた。

新たなルートの「基準点」となる稲荷町交差点
新たなルートの「基準点」となる稲荷町交差点

実はこの稲荷町交差点、広島電鉄にとって初めて“十字にクロス”するポイント。既存の線路に加え、新たに南北に敷かれる線路の「基準点」となる重要な場所である。

“ミリ単位”のズレも許されない

稲荷町交差点の工事は8月から大きく動き出した。

広島電鉄 駅前プロジェクト推進部・八木秀彰 課長:
広島駅に入るカーブを作っていく

2025年に広島駅ビルへ路面電車を乗り入れるため、既存の線路の形状を変える“ミリ単位”の作業が進められた。わずかなズレも許されない最も難しい工事だ。

重機でレールを持ち上げ、微調整を繰り返す
重機でレールを持ち上げ、微調整を繰り返す

交差点に敷設される軌道ブロックについても、事前に約500個すべてを広島市内の別の場所で仮組みし確認作業を行った。

そして10月、ついに敷設工事が始まった。1個あたり重さ4トンほどの軌道ブロックを慎重に置いていく。

1個あたり重さ4トンほどの軌道ブロック
1個あたり重さ4トンほどの軌道ブロック

作業員:
下ろして!待って、待って!7ミリ戻して!

敷設工事を行えるのは、路面電車の終電後から始発前までの限られた時間帯。日々、少しずつ交差点の景色が変わっていった。

軌道ブロック約500個の敷設が完了

ちょうど1カ月が経った11月17日の夜、最後の作業が始まった。交通規制をかけ、道路をはがしていく作業員たち。これまでにつながれた線路を見ると、ミリ単位で調整されてきた様子が感じ取れる。

加藤アナ:
ここが広電で唯一、線路が十字にクロスする場所です。広島駅方面へ目を向けると、これから作られる新ルートがあります。新しく生まれ変わるその姿が今から待ち遠しいですね

日付が変わり、作業は続いた。パズルをはめるように、次々と軌道ブロックが置かれレールがつながっていく。
そして18日午前4時過ぎ。約500個の軌道ブロックなどを敷設する広電史上初の工事は無事、終わった。

広島電鉄 駅前プロジェクト推進部・八木秀彰 課長:
われわれの中では難しい工事が一段落しました。ホッとしている半面、これから広島駅に向けての新しく線路を敷設する、比治山下方面に向けても線路を敷いていく…まだまだ道のりは長いなと。今後も安全に確実に工事を進めていかなければという新たな気持ちにもなっています

次の大きな目玉、広島駅ビルにつながる高架の橋桁設置工事は2024年度に予定されている。

(テレビ新広島)

テレビ新広島
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