2022年11月、富山市立北部中学校に通っていた当時3年生の女子生徒が自殺した問題で、遺族側が第三者委員会の報告書が不十分として、新たな調査を求め、富山市に所見を提出した。
この記事の画像(7枚)遺族の代理人 水谷敏彦弁護士:
いったいこの調査組織は何を調べて何を報告すべきだったのかについて、もしかしたら明確な意識がなかったのではという疑いをもっています。(所見には富山市の)藤井市長に向かって、もう1回調査してくれ。やり直してくれというお願いが書いてあります。
「毎日心が張り裂けそう」母親が心境語る
2022年11月19日、富山市立北部中学校に通っていた当時3年生の女子生徒が自ら命を絶った。
学校側は当初、女子生徒の自殺の原因について、いじめではなく、「人間関係のトラブル」だったという認識を示していた。
女子生徒が亡くなって約1カ月後の2022年12月末、遺族は会見を開き、その胸の内を明かした。
亡くなった女子生徒の母親:
現在、娘がいなくなってしまった事実を受け止められず、頭がおかしくなりそうですし、自分の内臓をえぐり取られ、手足をもぎ取られた気持ちで毎日心が張り裂けそうです
「重大事態」に当たる可能性は?
2023年1月、富山市教育委員会は、いじめ防止対策推進法の「重大事態」に当たる疑いがあるとして、学識経験者・社会福祉士・弁護士の3人による第三者委員会を設置。
いじめの有無など事実関係を調べ、9月に報告書をまとめた。
調査結果「2年前のいじめは整理できていた」
女子生徒は1年生のとき、同じ部活動の複数の部員から容姿をけなされたり、辛辣な表現や傷つく言葉で約束を断られたりしていて、これらについて報告書では、「いじめに該当する」と判断している。
その後女子生徒は、2年生の6月以降、不登校に。3年生の7月には、SNS上で女子生徒の実名と不登校の事実が匿名で暴露され、このトラブルが精神状態に影響したとされているが、投稿者が特定できないことを理由に、いじめとは認定されなかった。
そして報告書では、自殺した3年生の時点では、3年生のときのいじめは「過去のこととして一定程度の整理ができていた」として、自殺の直接の因果関係ではないと判断した。
一方、学校側についてはいじめの「重大事態」の対応を問題視した。
2013年に施行された「いじめ防止対策推進法」では、いじめにより児童・生徒が不登校になった疑いがあり、不登校期間が30日を超えた場合、「重大事態」として速やかに調査を行うことを学校側に義務付けている。
今回の報告書では、学校側の対応について「重大事態として取り扱うことはなく、重大事態に該当するか否かについて検討した形跡すらない」と述べている。
「調査組織は任務を果たさなかった」
11月16日、遺族の代理人弁護士は富山市教育委員会へ、第三者委員会による報告書が不十分であるとし、改めて調査の実施を求める所見を提出した。
遺族の代理人 水谷敏彦弁護士:
調査組織は任務を果たさなかったと言わざるを得ない。
いじめ防止対策推進法では、「地方公共団体の長は、必要があると認めるときは調査の結果について調査を行うことができる」と規定されている。(法第30条第2項)
遺族側は提出した所見の中で、富山市の藤井市長に対し、今回の調査が正しかったのか、別の組織を設け調査を実施するよう求めた。
最大の問題はなぜ「重大事態」を見落としたのか?
また遺族側が最大の問題としているのは、学校側がいじめの「重大事態」をなぜ見落としてしまったのか。その「原因・経緯」が明らかになっていないことだ。
遺族の代理人 水谷敏彦弁護士:
報告書の最大の欠点は「何でそんなことになったのか」という原因・理由が書いていない。何のために調査したのといいたい。重大事態を見逃したということについては富山市教育委員会も議会で答弁していた。謝罪しますと。何で見逃したのかについて10年前の法律が学校現場に降りていなかったのか。校長が勉強していなかったのか。教頭が大事な問題ですと言わなかったのか。どの先生も気づかなかったのか。わからない。そのことを報告書は何も書いていない。
11月19日は、亡くなった女子生徒の命日。
「なぜ娘が亡くなったのか…」大きな進展がないまま1年がたった今も、遺族は、深い悲しみ、苦しみ、寂しさを抱えている。
(富山テレビ)