2022年、全国で自ら命を絶った小・中・高校生の数が過去最多となった。生きづらさを抱えている子どもたちの「SOS」をどうすれば受け止められるのか…。富山県内で進む取り組みの現状と課題をお伝えする。

SOS発信をしやすい環境作り

矢野美沙アナウンサー:
子どもたちが悩みを相談しやすい仕組みをつくるにはどうすればいいのか。富山市では2023年度から、このタブレット端末が相談窓口のひとつになっています

タブレット端末に相談窓口を設置
タブレット端末に相談窓口を設置
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富山市教育委員会が2023年4月から導入した新たな取り組み。
市内の小・中学生、約3万人に1人1台配備されているタブレット端末を、悩み相談の申込ツールとして活用するというもの。

Googleのアンケート機能を使って「悩みを聞いてほしい」というSOSを発信することができ、相談相手も選ぶことができる。

ーー「学校以外の大人」という選択肢も?

富山市教育センター・道木善信教育相談係長:
聞いてほしい相手を子どもたちが選ぶ、という趣旨から設けている

相談相手として「学校以外の大人」を希望した場合は、臨床心理士や教育相談員などが対応し、相談の方法もオンライン(チャット)や電話、対面から選ぶことができる。
深刻な悩みは専門機関とつなぎ、解決策を模索する場合もあるという。

富山市教育センター・道木善信教育相談係長:
実際の数字は出せませんが、(子どもたちから)相当数の申込がある。例えば先生に悩みを聞いてほしかったとしても、「ねえ先生」の一言が自分から言い出せない。(悩み相談の)取っかかり、きっかけになるところをつくりたかった

性別への違和感などの相談も

一方で相談相手を限定せず、匿名で相談したいというニーズもある。匿名で相談したい子どもたちの声に20年以上耳を傾けてきたのが、富山県内のボランティア団体「とやまチャイルドライン愛ランド」だ。

チャイルドラインは18歳以下の子どもたちを対象にした電話相談窓口で、全国で68の団体が活動している。フリーダイヤルにかけると最寄りの団体につながり、話し中などの場合は全国各地の団体のいずれかが対応している。

2022年、全国で自ら命を絶った小中高校生は514人で過去最多。このうち2割近くの93人は原因・動機が「不詳」。誰にも相談できず悩みを隠し続けていた姿が浮かび上がる。
※厚労省の公表(小学生17人、中学生143人、高校生354人)

チャイルドラインには県内の子どもから、2022年の1年間で2,857件の発信があった。

富山市内の事務所で毎週土曜に相談に応じている、とやまチャイルドライン。代表理事の布村さんは、この20年で相談内容が変化してきていると話す。

とやまチャイルドライン愛ランド・布村武信代表理事:
「消えたい」「この世から去りたい」そういう思いを心の中に抱きながら、毎日過ごしている子どもたちのようすが電話の中から聞こえてくる

最近では、性別への違和感、LGBTQに関する相談も増えてきているという。

6月下旬には電話相談に応じるボランティアスタッフや、活動に興味を持つ人のための公開講座を開催し、自殺対策に詳しい富山大学の立瀬剛志助教が深刻な相談に応じるときの注意点などを話した。

富山大学 学術研究部 医学系・立瀬剛志助教:
死のうかなと言われると「何を言っているの!」と、こっちの心がざわめく。否定しちゃうんですよ。本人は死ぬほどつらい気持ちの中で、何か助けを求めている、その瞬間に遮る(ことになる)。沈黙を共有するということも(大事)

大人が心の居場所を作ってあげる

さまざまな悩みを受け止めるチャイルドラインだが、運営側にも課題がある。

とやまチャイルドライン愛ランド・布村武信代表理事:
電話を受けるスタッフが実は少ない。どうしても自分たちの生活だけで手一杯な家庭が多いと思う。その中でボランティアをするという力がなかなか働かないのだと思う

ボランティアの数は現在26人だが、少子高齢化が進む中で、仕事と子育てや介護などの両立が求められる社会の変化とともに、この10年で減っているという。

布村さんは、まずは地域全体で子どもたちの現状に関心を持つことが必要だと話す。

とやまチャイルドライン愛ランド・布村武信代表理事:
みんなで見守る体制をつくっていかなくては。心の居場所というものを大人はつくってあげることが責務じゃないかなと

(富山テレビ)

富山テレビ
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