WBC(ワールド・ベースボール・クラシック)の侍ジャパン14年ぶりの世界一奪還に始まり、プロ野球では阪神タイガース38年ぶりの日本一で、テレビ中継の瞬間視聴率が関西地区で驚異の50%(ビデオリサーチ調べ)を記録するなど、かつてない野球熱で幕を閉じた2023シーズン。そんな今シーズンを締めくくるべく、フジテレビ「S-PARK」の人気企画「プロ野球100人分の1位」を2023年もお届けする。

「プロ野球100人分の1位」は、プロ野球選手100人に独自調査を行い、打撃や投球など各部門のNo.1を選出する企画。昨年に引き続き、「走塁」「スピードボール」「守備」「変化球」「パワーヒッター」「バットコントロール」6部門で調査を実施。

その第1弾、球界の俊足たちがひしめく「走塁部門」では、ソフトバンクの周東佑京(27)内野手が断トツの53票を獲得し、自身3回目の受賞となった。

一流が一流を選ぶ時、どんな言葉や理由を挙げるのか?
そこには対戦するプロならではの、どんな着眼点があるのか?
2023年の「走塁編」は第4位の選手から順に振り返っていく。

第4位:5票/並木秀尊(ヤクルト)

第4位(5票)は、今シーズン、セ・リーグ3位の15盗塁を決めた東京ヤクルトスワローズの並木秀尊外野手(24)。

プロ3年目で初のランクインとなった並木について、チームメートや対戦相手からはこんな声が寄せられた。

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「“よーいどん”で、もうすでに5歩くらい離れている速さ」ヤクルト・長岡秀樹内野手(22)

「一塁から、ヒット1本で三塁まで行くスピードがずば抜けている」広島・末包昇大外野手(27)

「走塁といえば、並木ですね」ヤクルト・山田哲人内野手(31)

第3位:6票/和田康士朗(ロッテ)

第3位は6票を集めた千葉ロッテマリーンズ・和田康士朗外野手(24)が選ばれた。

「盗塁が欲しい場面できっちりと決める」ロッテ・石川慎吾外野手(30)

「盗塁がスッと来るので、怖い」オリックス・紅林弘太郎内野手(21)

盗塁成功率/成功数/失敗数
1位 .952/20/1 和田康士朗(ロッテ)
2位 .897/26/3 外崎修汰(西武)
3位 .857/36/6 小深田大翔(楽天)
4位 .837/36/7 周東佑京(ソフトバンク)
5位 .789/15/4 岡 大海(ロッテ)
※盗塁数がパ・リーグ10位以内の選手

2年前、この企画の「走塁部門」で1位に輝いた和田。
今季は、「パ・リーグ盗塁数トップ10」の選手の中で、成功率は唯一の9割超えとなる.952。成功20回、失敗はたった1回と、抜群の安定感が評価された。

まさに「足のスペシャリスト」の和田康士朗について、西武ライオンズの高橋光成投手(26)は独特の表現でこう評価した。※「高」ははしごだか

西武・高橋光成投手(26)
西武・高橋光成投手(26)

「こんなこと、本来なら絶対言っちゃいけないと思いますが、もはや『どうぞ、二塁へ行ってください…』と思っています。“走られるプレッシャーがかかるのであれば、対バッターで抑えれば良い”と思わせるほどの選手」

第2位:13票/近本光司(阪神)

第2位は13票を集めた阪神タイガース・近本光司外野手(24)が選ばれた。プロ入り5年間で4度の盗塁王に輝いている近本だが、本企画でも5年連続の「走塁部門」上位にランクインとなった。

「守っていても、どんどん次の塁に行かれてしまいそう」巨人・秋広優人内野手(21)

「投球フォームを盗まれているんじゃないかと感じる」DeNA・東克樹投手(27)

「どんな打球でもホームに帰ってきてくれる」阪神・大山悠輔内野手(28)

セ・リーグ得点ランキング
1位:83 近本光司(阪神)
1位:83 岡本和真(巨人)
3位:80 大山悠輔(阪神) 
3位:80 中野拓夢(阪神)

セ・リーグ三塁打ランキング
1位:12 近本光司(阪神)
2位:10 岡林勇希(中日)
3位:7   小園海斗(広島)

ちなみに今季、ホームを踏んだ数(83得点)と三塁打の数(12本)は12球団トップ。持ち前の俊足を活かして阪神優勝に貢献した。

毎年苦しめられる虎の韋駄天に、セ・リーグの選手たちからは次々と本音が聞かれた。

中日・小笠原慎之介投手(26)
中日・小笠原慎之介投手(26)

「『クイックを速くしなきゃ』と焦ってコントロールが悪くなって、次の打者で四球を出したりとか、チームに影響を及ぼすような“嫌な選手”なので、できれば対戦したくない(笑)」中日・小笠原慎之介投手(26)

「走るような気配がないのに…『おざーす!』って挨拶されて、気付いたらおらんくなってる」巨人・岡本和真内野手(27)

DeNA・今永昇太投手(30)
DeNA・今永昇太投手(30)

「ピッチャーがやってほしくないことを全部やってくる。自分でチャンスメイクして、さらに二塁打や三塁打を打ってくるので、全チームが欲しい1番打者じゃないかと思います」DeNA・今永昇太投手(30)

番外編:1票/Y.ミエセス(阪神)

1位発表の前に、ここで一旦ブレイク。

阪神・佐藤輝明内野手(24)が票を入れたのは、“チームのムードメーカー”でドミニカ共和国出身の助っ人、ヨハン・ミエセス(28)だった。

その理由について佐藤選手は、「神宮球場で雨天中止になったときに、ブルーシートで覆われた塁に滑り込んで皆を盛り上げていた。一番すごい走塁だった。“そこまでせんでええやろ!?”とも思ったっすけどね(笑)」

大雨の中、まるでウォータースライダーのように、水しぶきを上げながらヘッドスライディングを決めるミエセス。球場を沸かせただけでなく、阪神タイガース公式YouTubeでその様子が公開されると、驚異の55万回再生(※11月13日現在)を記録した。

第1位:53票/周東佑京(ソフトバンク)

現役選手たちから“過半数”の53票を集めて圧倒的な1位に輝いたのは、日本野球界のスピードスター!福岡ソフトバンクホークス・周東佑京内野手(27)。本企画では3年ぶりに3度目の王者に返り咲いた。

そんな彼の快足について、現役選手たちから称賛の声が止まらなかった。

「ソフトバンクとの試合では、あいつがおることによって、盗塁とかワンバンがすべてにおいてダルくなるし」ロッテ・田村龍弘捕手(29)

「『お前きもいな、速すぎて』って言っちゃいました(笑)」ヤクルト・中村悠平捕手(33)

「風、風っす!」日本ハム・清宮幸太郎内野手(24)

「動物に例えるなら、チーター的な」ロッテ・種市篤暉投手(25)

「チーターみたいな」西武・蛭間拓哉外野手(23)

楽天・松井裕樹投手(28)
楽天・松井裕樹投手(28)

10月7日に行われた楽天戦では、自身のバントが松井裕樹投手の目の前に転がっても、持ち前の俊足で見事に“セーフ”。対戦相手だった松井は「もうありえないっす。嫌すぎ。無理」と当時を振り返った。

さらに遡ること3月21日、WBC準決勝・メキシコ戦。日本が1点を追う9回、大谷翔平のチャンスメイクからノーアウト1塁・2塁となると、1塁ランナーの代走として周東が登場。村上宗隆が打った打球が左中間を抜けると、バックホームされる間に、1塁から逆転サヨナラのホームまでを猛スピードで駆け抜けた。

2塁ランナーだった、こちらも快足の持ち主であるはずの大谷に追いつかんばかりの速さは、原付バイクの法定速度を上回る時速33.4キロ。SNSでは「周東の足」がトレンド入りをはたし、野球ファンのみならず日本中で大きな話題となった。

このシーンについて床田寛樹投手(24)は、「WBC見て、村上選手が打ったときに気付いたらもう大谷選手の真後ろにいたっていう…」と苦笑い。

ヤクルト・青木宣親外野手も「速い、速い…WBCでの走塁は何度も見返した。大谷翔平選手を抜かしそうなぐらいだった」と半年以上前の話にかかわらず興奮気味に振り返った。

「試合中は、いろんなところを“見る”のが重要」

3年ぶり3度目の走塁NO.1に輝いた周東佑京選手を直撃すると、「他の選手の方々に選んでいただけるのは、非常にうれしいです!」と語った。

実に半数の票を集めた球界No.1ランナーには他球団選手からこんな声も聞かれた。

「この距離なら行ける、みたいなものを準備している」阪神・近本光司外野手(24)

「うまさというか状況判断が走塁では大事なので」巨人・坂本勇人内野手(34)

一流選手も舌を巻く「状況判断」のすごさには、周東ならではのこだわりがあった。

「試合中は、いろんなところを“見る”のが重要かなと思います。自分の場合は、何年もこのチームで仲間と一緒にやってきているので、“この打者は、この場面で、こういう方向へ打つな”とか、ある程度分かっている。走塁のときに、自分の中で持っている情報は多いほうがいいと思いますし、それが大事なポイントかなと思っています」

通常、野球の走塁では、相手の守備位置を確認して状況を判断するのがセオリー。だが、彼の場合はそれだけに留まらず、足の速さはもちろんのこと、チームメート一人ひとりの打球のクセまで把握して状況判断に活かしているという。

「走塁」部門NO.1に輝いた周東佑京(27)内野手
「走塁」部門NO.1に輝いた周東佑京(27)内野手

2023年、プロ野球選手100人だけでなく世界を驚かせた“周東佑京の走塁”は、ずば抜けた観察眼の賜物だった。

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