毎年、プロ野球選手100人に独自調査を行い、打撃や投球など各部門のNo.1を選出するフジテレビ「S-PARK」の人気企画「プロ野球100人分の1位」。

2023年も「走塁」「スピードボール」「守備」「変化球」「パワーヒッター」「バットコントロール」の6部門で調査を実施。
第4弾「変化球」部門では、DeNAのT.バウアー(32)が12票を獲得して1位に選ばれた。

一流の選手たちが認めた“一流の変化球”。 

現役選手100人に話を聞くと、そこには、プロならではの鋭い視点や、対戦相手だからこそ分かる感覚があった。 

ここでは、第5位の選手から順に振り返っていく。

第5位:5票/佐々木朗希(ロッテ)・フォーク

2022年同部門で1位を獲得した千葉ロッテ・マリーンズの佐々木朗希(22)のフォークが2023年は5位にランクインした。

順位は下げたがその衝撃度はいまだに健在で、1票を投じた選手たちからは驚きの声が次々聞かれた。

「ストーンと真っ直ぐ見えてそこから消える感覚」ロッテ・藤岡裕大内野手(30)

「速いですし落差もすごい」日本ハム・松本剛外野手(30)

「ベンチで見てたら、何でそこを振ったんだろうなと思うんですけど、打席に立ったら真っ直ぐに見えるというか…えげつないです」オリックス・頓宮裕真捕手(27)

そのフォークの“魔球ぶり”を顕著に表すデータが「フォーク空振り率ランキング」だ。

◆フォーク空振り率ランキング (提供:データスタジアム)
1位:29.8% 佐々木朗希(ロッテ)
2位:26.4% 有原航平(ソフトバンク)
3位:26.0% 村上頌樹(阪神)
4位:25.9% 山下舜平大(オリックス)
5位:24.7% 山﨑伊織(巨人)

佐々木のフォークが空振りを奪う確率は29.8%と日本プロ野球界で圧倒的1位だ。

衝撃度の高さでは相変わらずずば抜けている佐々木のフォークが、今回順位を下げた理由としては、投球数が挙げられる。今季の投球数は、昨季に比べて100球以上も少なかった。そのため、フォークの印象が少々薄くなっていたのかもしれない。

第5位:5票/宇田川優希(オリックス)・フォーク

同じく第5位(5票)は、オリックス・バファローズの宇田川優希(25)。

2022年に育成から支配下登録されると驚異の活躍で1軍に定着した宇田川は、まだプロで19試合しかなげていないまま、2023年3月にはWBC(ワールドベースボールクラシック)にも出場して世界一に貢献した。

今季の成績は46試合に登板して4勝0敗2セーブ23ホールド。45.2投球回で52奪三振、防御率は1.77だった。

「この辺(顔の高さ)からこの辺(足元付近)まで落ちてくるみたいな。打てないです…」楽天・小深田大翔(28)

「宇田川のフォークはエグいですよ。落ち方がカーブみたい。横から見ていたら『うわ!すごいな』と思って、スピード見たら130キロ後半でフォークかみたいな…すごい!」楽天・則本昴大投手(32)

宇田川の高速フォークにはフォークの名手も大絶賛だった。

第3位:7票/山本由伸(オリックス)・フォーク

第3位には7票を獲得したオリックス・バファローズの山本由伸(25)のフォークがランクインした。

今季の山本は、23試合に登板して16勝6敗防御率1.21。パ・リーグで最優秀防御率投手賞、勝率第一位投手賞、最多勝投手賞、最多三振奪取投手賞の3年連続の投手四冠に輝き、こちらも3年連続となる「沢村栄治賞」を受賞した。

まさに“球界のエース”山本の「フォーク」に投票した選手たちはこう評価する。

「自分が思っているところよりも1個遠いというか…すごい変化球だなと思いました」巨人・岡本和真内野手(27)

「フォークもスピードがあって当たらないですね…」阪神・大山悠輔内野手(28)

「真っすぐと同じような軌道でそこからギリギリで落ちる」巨人・大城卓三捕手(30)

「空振りが欲しいところ、ゴロを打たせるところ、全てを操っているようで本当にすごい」DeNA・今永昇太投手(30)

変幻自在のフォークは既に移籍が確実視されているアメリカにも知れ渡っている。

スポーツ専門チャンネル「EPSN」J.パッサン記者は「今年、千賀滉大もお化けフォークで話題になったが、メジャーリーグでフォーク(スプリット)はあまり見ない球種だ。フォークとストレートを投げるときの腕の振りが同じなので打者はさらに混乱してしまう。(フォークは)メジャーでも効果的な球になる」と期待を寄せた。

第3位:7票/山下 舜平大(オリックス)・カーブ

スピードボール部門でも3位に入賞したオリックス・バファローズ山下 舜平大(21)の「カーブ」が変化球部門でも7票を獲得し3位にランクインした。

プロ初登板で開幕投手を任されたニューカマーは今季、圧巻のピッチングを連発。規定投球回には達していないものの、16試合に登板し9勝3敗防御率1.61、奪三振101個をマークした。

身長190cmで体重98kgから投げ下ろすカーブを投票した選手はこう表現する。

「あれはちょっとヤバいですね。完全にもう視界から消える」楽天・小郷裕哉外野手(27)

「エグいです。いいカーブ…ずるいですね」オリックス・宮城大弥投手(22)

「4階から落ちちゃうよカーブ」ヤクルト・田口麗斗投手(28)

バッテリーを組む森友哉捕手(28)は、「大きく曲がってなおかつコントロールが良くて、となってくるとバッターからは嫌」と指摘。さらに、「対戦したいか?」という質問には「したくないですね。多分打てないんで…できれば対戦したくない」と苦笑いだった。

◆球種別投球割合(提供:データスタジアム)
58.6%:ストレート 
30.9%:カーブ
10.5%:フォーク

山下の球種別投球割合を見ると、ほとんどがストレートとカーブ。自身にとってまさに“必殺のカーブ”だが、その原点には高校時代の恩師の教えがあった。

福岡大大濠高校・野球部の八木啓伸監督:
山下投手に大きく育って欲しいと思い、
①ストライクゾーン内で変化
②ストライクからボールに変化
③ボールからストライクに変化
とカーブでも3種類投げられるので、それを強化することを彼に求めた。

徹底的にカーブを練習し、精度を極限まで高めた山下。その努力こそがプロ野球選手をも驚愕(きょうがく)させる必殺のカーブを生み出していた。

第2位:8票/山本由伸(オリックス)・カーブ

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なんと2023年も2つの球種でランクイン。第2位は8票を獲得した、オリックス・バファローズ山本由伸(21)のカーブだ。

「他の変化球もすごいんですけど、やっぱりカーブのコントロールと回転数」阪神・近本光司外野手(29)

「フォークじゃないんですよ。カーブなんですよ」ヤクルト・中村悠平捕手(33)

「カーブがすごい落差大きい」巨人・戸郷翔征投手(23)

「直角に曲がる。すごい…カーブって感じじゃない」中日・大島洋平外野手(38)

「リリースした瞬間にボールだと思ったのがストライク入ってるくらい『そんなに曲がるんだ』っていう衝撃が」巨人・門脇誠内野手(22)

山本と同い年で今季、セ・リーグ最優秀防御率をたたきだした阪神タイガース・村上頌樹(25)投手は、「交流戦で打席立たせてもらったんですけど凄かったです!えーみたいな!こんなところから曲がってストライク入るの?みたいな!凄かったので、これは忘れない一球でしたね!あれは忘れないです」と野球少年のような笑顔で話してくれた。

◆山本由伸「100人分の1位史」
2019:2位「カットボール」
2020:4位「フォーク」
2021:1位「フォーク」 2位「カーブ」
2022:3位「フォーク」/「カーブ」
2023:2位「カーブ」 3位「フォーク」

山本由伸の受賞歴を振り返ると、変化球部門で2019年~2023年の5年間で8回ランクインと、「3年連続投手四冠」も納得の結果となっている。

第1位:12票/T.バウアー(DeNA)・カーブ

見事1位に輝いたのは、横浜DeNAベイスターズのトレバー・バウアー(32)のナックルカーブ。12票を獲得して、ハイレベルな争いとなった「変化球」部門で頂点に輝いた。

今季の成績は19試合に登板して10勝4敗、防御率2.76、130奪三振。8月の広島戦では自身最長となる10回123球無失点の熱投を見せた。

2020年サイヤング賞投手のカーブに、投票した選手は一様に驚きの声を上げた。

「衝撃的でした」DeNA・東克樹内野手(27)

「なかなか打てないボール」楽天・松井裕樹投手(28)

「壁に当たっておちてきてんじゃないかってくらい縦に落ちる」中日・石川昴弥内野手(22)

「初めて見る球のスピードと変化量。びっくりしすぎで逆に手が出なかった」広島・西川龍馬外野手(28)

「当たるって思ったところから果てしなく曲がるので、どうやっても打てない」中日・細川成也外野手(25)

「1回も打ってないので…もう少し対戦したかった」ヤクルト・村上宗隆内野手(23)

さらには、まさかの選手からの投票も。
「変化球に関しては僕が一番自信あるので自分の球を推したい。その中でもカーブはピカイチだよ」DeNA・T.バウアー(32)

バウアーが自らに1票を投じるほど、絶対の自信をもつカーブの特長について、誰よりも多くの球を受けてきたDeNA・伊藤光捕手(34)は「ナックルカーブなので、投げてから加速して落ちてくる」と話す。

ナックルカーブとは、通常のカーブより球速が速く鋭く落ちる変化球。

◆バウアーが投げるナックルカーブのデータ
平均球速:バウアー/127.9 NPB平均/117.5
ゴロ割合:バウアー/71.1% NPB平均/50.4%
被打率:バウアー/.177 NPB平均/.241

バウアーのナックルカーブも、NPB平均球速より10キロ速く、被打率が1割台だ。

なぜこの球が打ちづらいのか?

伊藤捕手は「真っすぐと同じような回転。軌道から真っすぐがあって、そこから変わらずにナックルカーブもあるので、空振りが取れると思います」と指摘、さらに「上に浮いたら高めのボールゾーンからストライクに入ってくるのでバッターが反応しない。ボールだと思って見送っていると思うので、そこは印象があります」と指摘する。

ストレートと同じような軌道を描くバウアーのナックルカーブ。
だからこそ、ストライクだと思い振りにいけば鋭く落ちて空振りになり、ボールだと思い見逃した球は鋭く落ちストライクになる、まさに最強の魔球なのだ。

バウアー「またお会いできることを楽しみに」

受賞の盾を渡しに行くと既に帰国の途に就いていたバウアー。後日、番組へ動画のメッセージが届いた。

「僕のカーブを一番の変化球に選んでくれた選手の皆さんどうもありがとうございます!すごい変化球をなげるピッチャーはたくさんいるので少し驚いていますが、大変名誉なことなので本当に感謝しています」

「素晴らしい選手たちと対戦したことは懐かしいし、またお会いできることを楽しみにしています」

2024年もサイヤング投手のナックルカーブが日本で見られるのか、その去就が注目されている。

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