毎年、プロ野球選手100人に独自調査を行い、打撃や投球など各部門のNo.1を選出するフジテレビ「S-PARK」の人気企画「プロ野球100人分の1位」。
2023年も「走塁」「スピードボール」「守備」「変化球」「パワーヒッター」「バットコントロール」の6部門で調査を実施。第2弾「スピードボール」部門ではロッテの佐々木朗希(22)が断トツの53票を獲得し、2年連続受賞となった。
一流が一流を選ぶ時、どんな言葉や理由を挙げるのか?
そこには対戦するプロならではの、どんな着眼点があるのか?
2023年も第5位の選手から順に振り返っていく。
第5位:3票/T.バウアー(DeNA)
第5位(3票)は、2023年のプロ野球を盛り上げた超大物、横浜DeNAベイスターズのトレバー・バウアー(32)。
この記事の画像(37枚)バウアーに票を投じた阪神・大竹耕太郎投手(28)は「ギアが入った時は打てない」、日本ハム・加藤豪将(29)は「さすがアメリカでサイ・ヤング賞を取っている真っすぐだなと」と評価した。
今季の成績は10勝4敗防御率2.76で月間MVPも2度受賞、今季最速は159km/h。「サイ・ヤング賞投手」という肩書きに恥じない活躍振りを見せてくれた。
バウアーの凄さが際だった究極の1シーンが、7月12日甲子園球場での阪神戦。ピンチの場面で恐怖の8番打者・木浪聖也を迎えた場面だ。
3回までの最高球速は150km/hだったが、4回に満塁のピンチを迎えると、木浪に対して1ボール2ストライクから、156km/h、157km/h、158km/hと3球連続の真っすぐ。恐るべきギアチェンジを見せてピンチの芽を摘んだ。
バウアーの直球はピンチになればなるほど加速することが証明された場面だった。
第4位:4票/山本由伸(オリックス)
バウアーと1票差の第4位(4票)には2年ぶりにランクインしたのはこの選手。
史上初3年連続投手4冠に輝いたオリックス・バファローズの山本由伸(25)だ。
今季の成績は16勝6敗で防御率1.21の奪三振169個。最高球速は159km/hと全選手の中で7位だが、対戦したバッターはこう指摘する。
「ちょっと真っすぐのキレがハンパじゃない。真っすぐのタイミングで打ちにいっても空振りしちゃう」西武・古賀悠斗捕手(24)
「ズドーンと来る感じの真っすぐなので当たらなかったです。球速でみたら山本選手より速い人はいますが、キレだったり1番速く感じたのは山本さん」巨人・秋広優人内野手(21)
◆ストレート被打率ランキング(提供:データスタジアム)
1位: .174 床田寛樹(広島)
2位: .189 山本由伸(オリックス)
3位: .193 村上頌樹(阪神)
4位: .203 才木 浩人(阪神)
5位: .211 岸 孝之(楽天)
その言葉どおり、今季のストレート被打率は12球団で2位。速いだけではなく打たれないストレートだった。
第3位:10票/山下 舜平大(オリックス)
第3位(10票)は、高卒3年目のオリックス・バファローズの山下舜平大(21)が初のランクインを果たした。
山下を選んだ選手は理由についてこう話す。
「ひとつ抜けているストレートを投げている」中日・高橋宏斗投手(21) ※「高」=はしごだか
「縦の伸び。ボールが全然垂れない真っ直ぐ」西武・平良海馬投手(23)
「メジャーにいくような投手になるだろうなと思っています」日本ハム・松本 剛外野手(30)
2023年突如現れたニューフェイス。今季の成績は9勝3敗防御率1.61奪三振101個で、今季最速は160km/h。プロ初登板で開幕投手を任されたほどの逸材だが、驚くべきはそのピッチングスタイル。
◆球種別投球割合(提供:データスタジアム)
58.6%:ストレート
30.9%:カーブ
10.5%:フォーク
球種別投球割合を見ると、ストレートとカーブが、なんと全投球の9割を占めている。
打者に球種を絞られていても押さえ込める理由についてパ・リーグの本塁打王、楽天・浅村栄斗内野手(33)はこう指摘する。
「投球動作と球のスピードのギャップは初めて対戦したときは衝撃的でした。初対戦はもう無理だって思いましたね。佐々木朗希投手とかそういうダイナミックなフォームで投げるのではなく、コンパクトに投げてくる」
体を大きく使って投げる佐々木に対して、山下の投球フォームはコンパクト。同じ160km/hという球速でも投げ方に大きな違いがある。この点について佐々木本人はこう分析する。
「すごく(フォームが)小さい中でも、うまく体が使えていると思います。球速は確かに僕の方がちょっと速いですけど、球速表示をなくしたら山下投手の方が速く見えるくらいの球威がある」
9月に第3腰椎分離症と診断され、ペナントレース最終盤からポストシーズンでの登板はなかった。山下を欠いたチームは、リーグ3連覇はしたものの日本シリーズ連覇を果たすことはできなかった。山下がいれば…と思ったファンも少なくないだろう。
2024年。さらなる進化を遂げた山下の剛速球を見られることに期待したい。
第2位:15票/R.マルティネス(中日)
第2位(15票)には、中日ドラゴンズの鉄壁のクローザー、ライデル・マルティネス(27)が2年連続でランクイン。
中日・細川成也外野手(25)が「最強じゃないですかね」、阪神・佐藤輝明内野手(24)が「絶対的守護神だなっていうのは感じます」と評したマルティネス。
今季は48試合に登板し3勝1敗32セーブ9ホールドで防御率は驚異の0.39。来日6年目で過去最高の防御率をたたき出した。
今季の最速は161km/h。193cmの長身から繰り出されるストレートについて、現役最年長野手のヤクルト・青木宣親外野手(41)は「高層ビルから投げ下ろすボール。そんな角度です」と表現した。
第1位:53票/佐々木朗希(ロッテ)
2位の“高層ビルストレート”を上回り、断トツの“53票”で第1位に輝いたのは、千葉ロッテマリーンズ・佐々木朗希(22)。佐々木にとって2年連続の栄誉となった。
今季の佐々木は、15試合に登板し7勝4敗防御率1.78で奪三振135、被本塁打はたった1本。4月には、エンゼルス・大谷翔平(29)に並ぶ、NPB日本人最速記録タイの165km/hもマークした。
佐々木に1票を投じた選手は理由についてこう話す。
「普段はそんなに思わないですけど、これヤバいわと思って」ヤクルト・山田哲人内野手(31)
「160キロを安定して投げられる所がすごい」DeNA・今永昇太投手(30)
「1人しかいないじゃないですか」ロッテ・西村天裕投手(30)
「そんなん朗希しかいないじゃないですか」オリックス・山本由伸投手(25)
「やっぱり佐々木朗希。ピストルみたい」ヤクルト・村上宗隆内野手(23)
「ロウキ ササキ!」DeNA・T.バウアー投手(32)
「佐々木朗希」3つの衝撃データとは
“佐々木朗希”を表す3つの衝撃データがある。
◆ストレート平均球速 (提供:データスタジアム)
1位:159.1km/h ロッテ・佐々木朗希
2位:155.7km/h 中日・R.マルティネス
3位:155.3km/h ソフトバンク・甲斐野 央
1つ目は、ストレートの平均球速が先発投手にも関わらず、断トツの159.1km/h。
◆MLB先発投手平均球速
1位:160.0km/h ブリュワーズ・T.メギル
2位:159.5km/h ロイヤルズ・C.ヘルナンデス
(159.1km/h ロッテ・佐々木朗希)
21位:155.8km/h エンゼルス・大谷翔平
2つ目は、その平均球速をMLBのランキングに当てはめても3位だということ。
3つ目は、最低球速が150km/hだということ。
NPBの平均球速146.5km/hをはるかに超えている…。
まさに衝撃!の一言だが、その異次元ぶりは試合前にも発揮されているという。
それは試合前のキャッチボール。
チームメートの田村龍弘捕手(29)はこう証言する。
「ベンチ前でのキャッチボールから球が速いので、僕は絶対に受けたくないので、いつも松川(虎生捕手)や佐藤(都志也捕手)に『お前いけ!』って言って行かしてましたね。怖いので(笑)」
「WBCメンバーに評価されるのは特に嬉しい」
昨年に続き、2023年も“スピードボール部門No.1”の称号が刻まれた盾を受け取った佐々木朗希投手。
「ピッチャーの(山本)由伸さんとか今永さんとか、WBCで一緒にやったメンバーに言ってもらえるのは特に嬉しい」と笑顔を見せた佐々木投手。
スピードボールを投げる上で1番意識していることを聞くと、「体を強くすることも大事なんですけど、可動域だったり柔軟性が大事かなと思います。上半身は元々柔らかかったので基本的には下半身の開脚とか」と説明。
プロ入り後、欠かさず行ってきたストレッチは、180度開脚もお手のものだ。
試合前にも行うストレッチはWBCを共に戦ったチームメートも驚きをもって見ていたようで、DeNA今永は「佐々木は背骨のひとつひとつの骨の動きを意識していたりとか、自分の体を理解して、勉強しているんだなというのが伝わってきました」と舌を巻く。
トッププロをも唸らせる、入念な準備。
そして柔軟性だけでなく佐々木投手のようなスピードボールを生み出す下半身のトレーニングがあった。実はそのトレーニングについて。1軍デビュー前の2020年、番組のカメラに明かしてくれていた。
ポイントは投球動作の軸足を意識して、ふらつかないようにまっすぐ立ち上がること。
このトレーニングについて佐々木投手は、「まっすぐバランス良く立つための筋力だったり感覚を養うためのトレーニングです」と解説。
「小さなことをやってきた結果が(球速)1キロ1キロにつながっていると思います」
投球フォームだけでなく、マウンドに上がる前のストレッチと投球動作を意識したトレーニングがスピードボールを生み出す秘訣だった。
来季に向けての思いを聞かれた佐々木投手は、「ケガせず投げていれば球速はついてくると思うので、ケガなく頑張ります」と先を見据える。
小さなことを積み重ねた先に、人類最速170km/hも夢ではない。
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