11月17日~19日にフィギュアスケートのグランプリ(GP)シリーズ第5戦、フィンランド大会が行われ、日本男子では三浦佳生が優勝、佐藤駿が2位、島田高志郎は6位、女子では坂本花織が優勝、住吉りをんが2位、河辺愛菜は9位で終えた。

GPシリーズ初優勝を飾った三浦佳生。

SPを93.54点で首位に立つと、最終滑走で迎えたFSはトリプルアクセルからの連続ジャンプ、4回転のコンビネーションジャンプを決めて見せた。

3本目の4回転サルコウでは出来栄え点(GOE)3点台を獲得。力強いステップとスピンで181.02点を出し、ガッツポーズが飛び出した。

合計274.56点のシーズンベストをマークし、初優勝を飾った。

そんな三浦は今季のFSの振付を初めて海外で行った。そこにはどんな思いが込められているのか。

四大陸、世界ジュニアで2冠の昨季

昨季、三浦佳生の巻き返しは驚異だった。

回転速度が早く飛距離のある4回転ジャンプが最大の武器の三浦は、“ランボルギーニ”の異名を持つ。

幼少期から鍵山優真・佐藤駿とともに『関東卍ボーイズ』として将来を期待されてきた。

昨季、全日本選手権6位と思うような滑りは出来なかったが、派遣された四大陸選手権では世界選手権代表の海外勢を抑え最年少で優勝する。

続く世界ジュニアでも優勝と2冠を達成した。

オフシーズンに鍵山優真とロサンゼルスを訪れた三浦佳生
オフシーズンに鍵山優真とロサンゼルスを訪れた三浦佳生
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そんな三浦は今年、18歳になり高校3年生となった。

今年のオフシーズンには、鍵山とともにアメリカ・ロサンゼルスを訪れていた。

鍵山のSPの振付も担当しているシェイ=リーン・ボーンに、新しいFSの振付を依頼したのだ。

「どんどんどんどん前へ進む」

FSは原作コミックの累計8000万部を超える超人気漫画『進撃の巨人』。

「昨シーズンの『美女と野獣』とは違って、少し悲惨というか、巨人と闘ったり、仲間を失った悲しみを4分に詰めました。シンプルに曲が好きなのでノリノリに滑ることができるかなと思います」

海外での振付を決めた理由を三浦は「本当は去年からシェイ=リーンさんにお願いしようとしていたんですけど、去年はケガで行くことが叶わなかった。今年はレベルアップをする意味も込めてシェイ=リーンさんにお願いしました」と語る。

ロサンゼルスでの振付について語る三浦
ロサンゼルスでの振付について語る三浦

シェイ=リーンさんの印象を「すごく元気な方で、太陽オーラみたいなのが出ていて。『これは少しやりにくいです』と言うと、『あーOK、OK』みたいな。

だからすごく進むし、やりやすくやらせてもらっています。独特な動きが多くて、面白いなって感じはありますね」と日本の振付師とまた違った感覚を得ていると話す。

昨シーズンは四大陸と世界ジュニアの2冠を達成したが、特にそれを意識することはなく、どんな大会でも結果を残していきたいと三浦は語る。

「昨シーズンの四大陸と世界ジュニアを獲ることができて、リベンジをすることはできたんですけど、ただ全日本がダメだった。

特に四大陸王者だからではなく、今シーズンは今シーズン、来シーズンは来シーズンで考えていって、昨シーズンの悔しい思いと良かった試合でもまた結果を残せるように、もうどんどんどんどん前へ進んで頑張っていきます」

三浦の「メンタルの強さ」を絶賛

振付を担当したシェイ=リーン・ボーンさんは、三浦の中にある力強さなどを表現したプログラムを作り上げたという。

『進撃の巨人』の曲は、いくつか好きなアニメを三浦に選んでもらい「本人が共感できる曲」をピックアップした。

「これは彼が共感できる若さに満ちた物語。それがこの曲を選んだ大きな理由で、彼が好きな曲を選びました」

『進撃の巨人』で三浦の長所を生かしたいと語るシェイ=リーン・ボーン
『進撃の巨人』で三浦の長所を生かしたいと語るシェイ=リーン・ボーン

そして、「彼がエレンという人物のどの部分に共感しているのか、理解したいと思いました。昨シーズン、彼の心に残ったのはミスをしてしまったときや、トップレベルに到達できなかったときの悔しさです。

困難に直面したときや挫折したときこそ、強くなれるし、さらに努力できます。彼はキャラクターのその部分に共感しているようです」と話し、そうした思いがプログラムに込められているという。

「彼は内面に大きなパワー、感情と強さを秘めているように感じます。彼は恐れず、貪欲に攻めます。ためらわないし、迷いもない。この物語も内面に秘めた競争心と闘争心こそ彼の長所、競技者としてのメンタルの強さです」と、三浦の長所を生かしたプログラムであると語った。

世界を股に掛けるシェイ=リーン・ボーンも絶賛する三浦の新シーズンがスタートした。

初戦は超異例のダブルヘッダー

新プログラムをアイスショーなどで披露する中で、三浦への期待は膨らんでいく。

そんな三浦の今季初戦は、かなりの過密スケジュールだった。

【三浦の初戦スケジュール】
・8月11日10時から滋賀で行われる「げんさんサマーカップ」でSPに出場したあと、車で京都の宇治へ移動
・14時40分から木下トロフィーで再びSPに出場
・8月12日は木下トロフィーでFSに出場
・8月13日はげんさんサマーカップでFSに出場

「げんさんサマーカップ」でSPを披露する三浦
「げんさんサマーカップ」でSPを披露する三浦

初のお披露目となったSPを初戦の「げんさんサマーカップ」で滑走すると、本人も手ごたえを感じたが思っていたより点数が上がらなかったと振り返る。

それでも91.84点をマークし、2位スタートに。

その数時間後の京都で再びSPを滑った三浦は、ここでも91.60点と安定した滑りを見せ、こちらは首位スタート。しかし「もうちょっと点数がほしい」と貪欲さをあらわにした。

「木下トロフィー」のFSでは7本のジャンプを着氷させた三浦
「木下トロフィー」のFSでは7本のジャンプを着氷させた三浦

翌日、激しい振付のFSは7本のジャンプを全て着氷させる。4回転ジャンプも大会出来栄え点(GOE)を獲得するなど合計272.51点で優勝を飾った。

さらにその翌日は勢いそのままに「げんさんサマーカップ」のFSで、連戦の疲れに苦戦しつつもハードなプログラムをやり切り、こちらも合計262.51点で逆転し、2日連続優勝となった。

表彰式後には、「疲労との戦いもあった。『進撃の巨人』のプログラムをちゃんと作品としてやり切れるスタミナをつけること、ジャンプのクオリティを上げて要素のつなぎを意識したい」と話した。

この活躍と勢いに他の選手も反応し、昨季世界選手権代表の友野一希と山本草太は「佳生くんが今年やばい」とコメントしていた。

絶好調の裏側にあるライバルの存在

そして9月、全日本選手権に繋がる東京選手権に出場した三浦。

腰を負傷するアクシデントもあった中、魂の演技で合計227.33点を出し、鍵山、佐藤に次ぐ3位で終えた。

9月の東京選手権は3位で終えた
9月の東京選手権は3位で終えた

10月頭の国際大会CS(チャレンジャーシリーズ)フィンランディア杯に出場すると、合計267.81点で優勝。

さらに10月27日~29日にかけて行われたGPシリーズ2戦カナダ大会では、SP4位と出遅れるもFS1位と巻き返し2位に。三浦は合計257.89点で、優勝した山本草太と表彰台にのぼった。

今シーズンの意気込みを語る三浦
今シーズンの意気込みを語る三浦

今シーズンの三浦は「現状レベルを見るとまだ世界チャンピオンには程遠い。まずは世界選手権の代表を掴んでからが本当の意味での勝負だと思っているので、全日本も勝つ気でいきたいですし、他の大会も本当に全部で頑張りたいです」と意気込む。

今シーズンも三浦の止まらない勢いに注目だ。

全日本までの道の詳しい概要はフジスケでhttps://www.fujitv.co.jp/sports/skate/figure/index.html
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フィギュアスケート取材班
フィギュアスケート取材班