11月17日~19日にかけて、フィギュアスケート・全日本ジュニア選手権が、滋賀県の木下カンセーアイスアリーナで行われた。
男子は中村俊介が初優勝を飾り、女子は島田麻央が3連覇を達成した。
この大会で男子は上位8名、女子は7名が12月に開催される全日本選手権に推薦された。
中村俊介が初優勝
全日本ジュニア7度目の出場となった中村俊介が悲願の初優勝をする。

試合前日には、「もちろん1位は狙っています」と意気込んでいた。
SPはトリプルアクセルを完璧に決めてみせ、勢いにのり首位スタートする。

FS冒頭の4回転トゥループを見事着氷し、「今まで以上に練習してきた」と魂がこもった演技で滑りきった。
演技後のキスクラでは涙を流し、悲願の初優勝を噛みしめた。

「遂に優勝をつかむことができて嬉しい」と語り、最終滑走の中で迎えたFSは「緊張もあったが積んできた練習が自信となり乗り切れた」とメンタル面での成長ものぞかせた。
4年連続4度目の出場となる全日本へ向けては、11位だった去年を超える順位を目指し挑む。

2位は中田璃士。
SP5位と出遅れるが、FSで巻き返しを誓う。
冒頭4回転トゥループで出来栄え点(GOE)2.09を出しガッツポーズを見せると、得意のトリプルアクセルからのコンビネーションジャンプも難なく決めた。

ダントツの点数でFSのトップに立ち、全日本ジュニア初の表彰台に輝いた。
SPからの挽回について中田は「東日本が終わってから頑張って来て良かった」と喜んだ。去年フリーに進めず悔しさの残った全日本へ向けては、「リベンジができるように頑張りたい」と意気込んだ。
3位に周藤集。

SPで冒頭のトリプルアクセルを決めて見せ、全てエレメンツで加点がつく会心の演技で2位スタートする。
東日本選手権ではFSで大きく崩れたこともあり、FSは周藤にとって“鬼門”のFSだが、感情揺さぶる魂の滑りで演じきった。

そして、自己ベスト更新の130.53点で初の3位表彰台を飾った。
ジャンプの安定感を課題としていた周藤。
全日本ジュニアに向けて、曲かけ練習を今までの倍以上行ってきたことで自信につながったという。
FSのラフマニノフ作曲の『ピアノ協奏曲第2番』は、思うように試合で発揮できなかった自分と重ね合わせているという。
周藤にとって“鬼門のFS”だったが、今大会は「120%の演技ができた」と笑顔で語った。
「全日本では4回転も投入していきたい」と殻を破った16歳に期待がかかる。

4位に垣内珀琉。
SPではバレエ経験を生かした情感のあるスケーティングを披露し3位と好発進する。
FSでは冒頭の4回転トゥループにミスが出るが、その他のジャンプを全て着氷させる。

「今までと違う俺だぜ!」というテーマを掲げている垣内は、アップテンポの継続プログラム
『Wake Me Up』を滑り切った。
JGP2戦の経験を生かし演技をうまくまとめ、2年連続の全日本出場権を獲得した。
「全日本では会場を沸かせます!」と気合十分で挑む。

5位に西野太翔。
東日本選手権で優勝した西野は、SP8位スタートではあったがFSで圧巻の演技を見せ、冒頭のトリプルアクセルを筆頭に全てのジャンプを成功させる。
ジュニア1年目だということを感じさせない堂々の滑りで、会場はスタンディングオベーションに包まれた。

キスクラで132.19点のスコアが映し出されると、西野は喜びを爆発。
演技後に「すごく達成感がある。自分へのご褒美として100点をあげたい」と振り返った。
ジュニアデビューの今季はSP・FSでトリプルアクセルを組み込み急成長中。全日本での活躍に注目だ。

6位は田内誠悟。
9月に行われたJGP日本大会での悔しい思いから、以前から面識のあったという安藤美姫コーチに本格的に師事。
SPでは、ジャンプをノーミスし4位につく。

FSでは東日本で悔いの残ったジャンプを全て着氷。
悔しい表情の続いていた田内だったが、今回は晴れやかな顔でリンクアウトした。

安藤コーチが常にポジティブに導いてくれるおかげで、「メンタル面が安定してきた」と復調の兆しがうかがえた。全日本ではSP・FSでノーミスの演技を目指す。

7位に蛯原大弥。
SPでは演技をまとめ6位スタート。
実は東日本後から調子が良くなかったという蛯原。
同じリンクで練習をともにする、憧れの三浦佳生先輩から「靴が柔らかすぎるのでは」というアドバイスを貰ったそうだ。
東日本のFS前に靴のバンドが外れるというアクシデントもあり、ガムテープで補強するという対策を行ったところ調子が上がったという。
FSではトリプルアクセルに挑戦するも成功とはならなかったが、去年全日本ジュニアSP落ちのリベンジを果たし、全日本出場権を得た。

8位は高橋星名。
ジュニア1年目の高橋。痛めているという腰の状態も危ぶまれていたが、FSではこの大舞台で果敢にトリプルアクセル2本を構成に組み込んだ。
冒頭その大技からのコンビネーションジャンプを成功させた。
単独のトリプルアクセルは惜しくも転倒となったが、その後はまとめ演技後には小さくガッツポーズも飛び出した。
演技後は、「ジュニアとして初めて挑む全日本ジュニアで、初めてトリプルアクセルを2本挑戦することができて嬉しい」と振り返る。
初の全日本出場へ向けてさらなる進化を続ける。

【ジュニア男子】
1位 中村 俊介(木下アカデミー)212.42点
2位 中田 璃士(TOKIOインカラミ)205.76点
3位 周藤 集(ID学園高等学校201.12点
4位 垣内 珀琉(ひょうご西宮FSC)197.97点
5位 西野 太翔(神奈川FSC)195.71点
6位 田内 誠悟(富士FC)195.19点
7位 蛯原 大弥(明治神宮外苑FSC)189.39点
8位 高橋 星名(木下アカデミー)188.98点
島田麻央が3連覇
女子は7名が推薦された。
優勝したのは島田麻央。
3連覇の期待がかかる島田は、会場の大声援を背に挑んだSPで珍しくミスがあり、まさかの4位スタートに。

ジュニアに上がってから1位以外を取ったことがない“絶対女王”に試練が訪れ、悔し涙を見せた。
逆襲のフリーでは、冒頭のトリプルアクセルを完璧に決めて見せた。

続く4回転トゥループは惜しくも転倒となり、同時成功とはならなかったが、その後は安定感抜群の演技で逆転優勝を飾った。
試合後、今回の試練について島田は、2014年ソチ五輪の浅田真央さんのことを思い出したという。浅田さんも同じようにSPで出遅れ、FSで巻き返したという経験を自分に置き換えていた。

波乱の展開となったが島田は、荒川静香さん、安藤美姫さんに続く史上3人目の3連覇達成となった。
令和の“マオ”はさらに強くなる。全日本での活躍を期待したい。

2位は櫛田育良。
長身から繰り出される技の数々と、会心の演技でSP首位発進する。
その勢いはFSでも続き、ノーミス演技でシーズンベストを更新し、キスクラでは濱田美栄コーチと抱き合って喜んだ。

大会を振り返ってもらうと、「SP・FSともに大きなミスなく終えることができてよかった。このままいい成績を残し続けられるようにしたい」と、初の世界ジュニア出場も見据え、2度目の全日本の舞台へと向かう。
3位に上薗恋奈。
昨季、全日本ノービスで優勝した上薗は今季ジュニア1年目に。
JGPシリーズで優勝し、ファイナル進出も控えている成長株だ。

SP6位で迎えたFSは、完成度の高いノーミス演技で完璧に演じきってみせた。
抜群の表現力と目標としていた気持ちの良いジャンプを次々と跳び、会場を沸かせる。
堂々の3位となり、表彰台に飛び込んだ。

上薗は「自分の納得のいく演技ができてよかった」と笑顔で語る。
この後迎えるGPファイナルへ向け自信につながったという上薗は、今回のような納得のいく演技を目指し、次戦へ向け前進する。

4位は髙木謠。
東日本で優勝した髙木は、SPでは会心の演技で3位に食い込む。
続くFSではジャンプを全て着氷し、勝負強さを見せた。
JGP2戦出場し、日本大会で初の銀メダルと力をつけている今季。髙木はパワーアップした姿で、全日本へ挑む。

5位に柴山歩。
JGPハンガリー大会で3位表彰台の柴山は、ノーミス演技でSP2位スタートする。
FSではミスもあり、キスクラでは悔し涙をみせた。
しかし目標だった全日本出場権を獲得。全日本ジュニアでは果たせなかったSP・FSでのノーミスを目指す。

6位は村上遥奈。
昨シーズンまでは森口澄士とペアを組んでいたが、今季シングル専念する村上。
腰の怪我もあった中だったが痛みを感じさせない滑りを披露した。流れのあるきれいなジャンプで大きなミスなく終えた。

7位に河野莉々愛。
ノービスからの推薦出場の中で、唯一後半グループ入り。
FSでは堂々の演技で上位に食い込む大健闘となった。
ジュニアへ上がる来季へ向けては、「大きな舞台で自分の納得のいく演技がしたい」とJGPシリーズへの出場も目標に掲げている。

8位は横井きな結。
昨季シニアで戦った横井は、全日本を逃し、悩み抜いた末に今季はジュニアに出戻る形で戦った。
全日本の推薦ラインとされているのは8位以内。
SPで9位スタートとなった横井の運命のFSには心強い味方が応援に駆け付けた。

それは全日本に7度出場している姉・ゆは菜さんだ。
そのFSはミスがあったものの最後まであきらめずに演じきり、全体8位に食い込み念願の全日本初出場を決めた。
ジュニアで戦う覚悟を決めてから周りのサポートに横井は救われていたという。
インタビューでは涙を流しながら、感謝の気持ちを語った。初の全日本の舞台でどんな演技を見せてくれるのか。

10位の中井亜美は惜しくも全日本推薦とはならなかった。
昨季世界ジュニア銅メダル獲得し、去年の全日本では4位となった実力者だが、今大会は苦戦を強いられる大会となった。
エントリーしていた東日本直前に腰の怪我をし、練習ができないほどだったという。
SPではジャンプミスが響き、14位スタートと出遅れる。
FS当日は、朝の公式練習で大逆転のカギとなるトリプルアクセルの練習をしている姿があり、曲かけ練習で着氷させていた。

本番ではその大技で勝負をかけたが転倒してしまう。その後も怪我の影響で思うような滑りが出来ず、巻き返すことは出来なかった。
怪我を完治させ、この悔しさをバネに強い中井亜美が帰ってくるのを待ちたい。

【ジュニア女子】
1位 島田 麻央(木下アカデミー)201.33点
2位 櫛田 育良(木下アカデミー)190.12点
3位 上薗 恋奈(LYS)186.51点
4位 髙木 謠(東京女子学院)183.96点
5位 柴山 歩(木下アカデミー)175.61点
6位 村上 遥奈(木下アカデミー)168.48点
7位 河野 莉々愛(木下アカデミー)167.18点
8位 横井 きな結(中京大学)166.08点
ペア・アイスダンスの選手たちは、今大会をシーズン節目の大舞台として挑んでいる組もある。
シーズン後半にある世界ジュニアなど国際大会の派遣につながる重要な試合となった。
“さえるか”が大舞台で滑りきる
今年4月結成の“さえルカ”ペアこと清水咲衣・本田ルーカス剛史組。
同時期結成の“ゆなすみ”ペアこと、長岡柚奈・森口澄士組の2人からアドバイスを受け、今大会に向けて切磋琢磨して挑んだ。

迎えたフリーでは、大技スロートリプルループを試合で始めて挑戦し、成長を感じさせる演技となった。
ペア未経験の2人が結成約7カ月で経験した全日本ジュニアの大舞台。
「まずは最後までしっかり滑り切れた」と振り返った2人は、さらなるレベルアップを誓った。
雲の上の存在だと語る“りくりゅう”先輩の背中を追いかける。

【ペア】
1位 清水 咲衣・本田 ルーカス剛史(木下アカデミー)109.69点
結成2年目の“さらあつ”が優勝
アイスダンスの強豪たちが集うカナダ・モントリオールを練習拠点とする結成2年目の“さらあつ”こと岸本彩良・田村篤彦組。

今季初のJGP2戦に出場し、ポーランド大会では3位表彰台と、世界の舞台でその名を知らしめた。
ケガにより西日本選手権の出場を見送った中で、迎えた今大会。
昨季から継続のFDは見どころ満載の観客を楽しませるプログラムだ。

後半曲調がアップテンポに変わると、田村の腕立て伏せなどユニークな振り付けに加え、ダイナミックなリフトを披露。
全日本ジュニアへ向けアレンジを加えたというこだわりのプログラムを滑り切った。
一緒に練習しているという小松原美里・尊組から刺激を受ける2人。目標の世界ジュニア出場&トップ10入りを目指して、さらに腕を磨いていく。

【アイスダンス】
1位 岸本 彩良・田村 篤彦(中京大中京高校/西武東伏見FSC)147.45点
2位 山下 珂歩・永田 裕人(日本大学)131.33点
今大会で推薦された男子8名、女子7名は12月に長野・ビックハットで開催される全日本選手権に出場する。
全日本までの道の詳しい概要はフジスケでhttps://www.fujitv.co.jp/sports/skate/figure/index.html
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