最近、高校生などが、通学バッグやリュックにたくさん飾りをつけていて、何やら「じゃらじゃらしている?」と感じている人も多いのではないだろうか。鹿児島でも、若い人たちを中心に流行していて、桜島をモチーフにしたご当地キャラも売り上げを伸ばしている。子どもから大人まで楽しみ方が多様なじゃらじゃらブームは、まだまだ拡大中のようだ。
若者の間でブーム!高校生の半分が「じゃらじゃら」している
鹿児島の陸の玄関口、JR鹿児島中央駅で朝の通学時間帯、かばんの持ち手やファスナーの引き手にアニメやゲームキャラのマスコットをいくつもつり下げた高校生がとにかく目立った。いま若者たちの間でブームとなっているこのスタイル。バッグなどに「じゃらじゃら」とぶら下がっていることから、「じゃらじゃら」「じゃらづけ」などと呼ばれている。

駅周辺で1時間ほど観察したところ、高校生の半数ほどが「じゃらじゃら」していた。
「重い」けれど、毎日の生活を「楽しくしてくれる」ツール
黒一色の大きめのかばんを肩にかけた女子高校生に話を聞いた。かばんにはディズニーランドやUSJ(ユニバーサル・スタジオ・ジャパン)で買ったという超有名マスコットのキーホルダーがいっぱい。どれもなかなか大ぶりで、女子生徒は「重いです。うふふふふ」と笑った。この女子生徒の話では「学校ではみんなこんな感じ」でバッグに付けているそうだ。

別な学校の女子生徒に聞いても「付けてるほうが楽しい」。「明るい気持ちになって学校に行くのが楽しくなります」と笑顔。
中にはこんなつわものも!仲良く楽しそうに歩いていた女子高校生2人組の通学用のバッグには、キーホルダーに加え、造花や赤い帽子まで付いている。「…7、8、9、10」。数を数えてみると「11個!」中でもお気に入りは友達とおそろいのもので、「光るんですよ。じゃーん!」おどけながらキーホルダーのボタンを押して、光るところを見せてくれた。


もし、「じゃらじゃらをつけちゃダメと言われたら?」と聞いてみたが、「それでも付けま~す!」その答えに、迷いはない。彼女たちにとってじゃらじゃらは、毎日の生活に変化が出るほど気分を上げてくれるツールになっているようだ。
カプセルトイの市場規模は4年で3倍以上増加
高校生たちは、お気に入りのじゃらじゃらを雑貨店やカプセルトイ、ゲームセンターのクレーンゲームなどで手に入れることが多いという。
バッグに付けられるカプセルトイの種類が増えていていることも、じゃらじゃら人気をさらに押し上げているのかもしれない。
日本玩具協会がカプセルトイの市場規模を調べたデータを見ると、2020年度の380億円から毎年右肩上がりに増え続けていて、2022年度は610億円。そして、2024年度はその約2倍の1200億円にまで増加している。

お小遣いで買いやすい価格帯で平成レトロや動物アイテムが人気
鹿児島市内の大型ショッピングセンターで、子どもたちの買い物に同行させてもらった。
文具やキーホルダーなどを販売している店に着くと、子どもたちは一目散にお目当ての売り場へ。店内にはキャラクターのキーホルダーなどが約100種類置いてあり、年々、品数も増えているという。「かわいくない?これ!」「めっちゃかわいい!」子どもたちは店内をあちこち見て回ったり、商品を手に取ってあれこれ比べてみたり。「予算は、お姉ちゃんと私で5000円」と、中には潤沢な資金を手にした子どももいたが、価格は1000円前後のものが多く、お小遣いでも買いやすい点も子どもたちの心をつかんでいるようだ。

ちなみに、この店の売れ筋はドイツのぬいぐるみブランド「NICI(ニキ)」のキーホルダーで、動物たちの愛くるしい表情が人気なのだとか。

さらに、平成時代に流行したヒョウ柄など、ギャルを意識したものも多く売れているという。
ブームのきっかけは高級ブランドのアクリルチャーム
2023年ごろから、SNSやショート動画上で流行の兆しを見せてきたじゃらじゃら。
「ホンマでっか!?TV」などでおなじみの世代・トレンド評論家、牛窪恵さんは「2023年の秋に、ある高級ブランドが次の季節のコレクションを出すときに、アクリルチャーム(アクリル樹脂でできた装飾品)などを出して、インスタグラムやTikTokで広がった」のがじゃらじゃらブームの流れだと話す。

それにしてもなぜ、今ここまで若者の間でじゃらじゃらがウケているのだろうか。
【じゃらじゃらブームを後押しするもの①】推し活ブーム
牛窪さんは、好きなアイドルやキャラクターなどを応援する「推し活」と「じゃらじゃら」の親和性の高さを指摘する。
「自分らしさを表現したり、同じ趣味や同じキャラクターが好きな人たちとつながったりとか、そういうところで心の幸福を得るみたいなところもすごく影響しているんじゃないかなと思いますね」。
コロナ禍以降、自分の「推し」のアイテムを身につけて外に出る人が増えているのも、作用しているようだ。
【じゃらじゃらブームを後押しするもの②】校則に縛られない時代
また、「校則に縛られない時代」も挙げられる。一昔前は、校則が厳しい学校が多かったが、今は個性や多様性を重視する風潮があり、じゃらじゃらをある程度認める学校が増えているのも関係していそうだ。
【じゃらじゃらブームを後押しするもの③】平成レトロのブーム
牛窪さんが今年のキーワードのひとつに挙げるのが「平成女児」。平成レトロを支えた『Y世代(1980年代~1990年代生まれ)』の人たちが母親になり、その間でもバッグチャームがはやっていると指摘する。一言でいえば「平成ブームの再来」。平成女児が子ども時代に夢中になった、カラフルでポップなデザイン、明るくキラキラした華やかさが特徴のアイテムや文化が再評価され、当時を知らないZ世代(2010年代序盤に生まれた)の子どもに「エモい」という形で受け入れられ、親子一緒に楽しむのがブームになっているのだ。

リュックにじゃらじゃらをつけた女子児童。たくさんある中から、赤いマスコット人形を手に取って見せてくれた。「これはプレゼント。お母さんから。」また別の女児は「キティちゃんが大好き。」と、色違いや大きさ違いでリュックに飾っていた。
母親たちも「ガラケーにいっぱいストラップをつけていたことを思い出します。」「自分も欲しかった気持ちを思い出すので、つい一緒に楽しんでいる感じがします。」と、懐かしい思い出とともに、子どもとワクワクを共有してすっかり楽しんでいる様子。
【じゃらじゃらブームを後押しするもの④】ご当地キャラとの融合
鹿児島市・西郷隆盛銅像の近くにある観光案内所。お土産コーナーの一角には、鹿児島市のご当地キャラクター「マグニョン」のストラップやキーホルダーが並んでいた。
マグニョンは火山の桜島をイメージした鹿児島市のPRキャラクターの総称で、「リキニョン」「マルニョン」「メガニョン」「ベビニョン」の4つのキャラクターは、少しおどけた愛嬌のある表情をしている。菓子やTシャツ、タオルなどいろいろな種類があるマグニョングッズの中でも、ストラップはこの2年ほど人気が急上昇。2025年の売り上げは2024年の同じ時期に比べ、2倍以上になっているそうだ。

鹿児島観光コンベンション協会の橋口美穂さんは、バッグにマグニョンをつけている人がいると「わっ!うれしい。」と思うそう。「2023年の『かごしま国体』をきっかけに、県内の方にもマグニョンを知ってもらう機会が増えたようで、それに伴って売り上げも増えています。」と、にこやかに語った。
ご当地キャラにも、じゃらじゃらブームの波及効果があるようだ。
毎日を楽しむための欠かせないアイテムとして、若者を中心にブームを巻き起こしているじゃらじゃら。流行は繰り返すというが、令和のじゃらじゃらは、時代の要素を取り入れながら進化して人々の生活を彩っているようだ。今後もさらに広がりを見せそうなじゃらじゃらブームだが、どのように進んでいくのか目が離せない。