新築マンションの急劇な値上がりが続く日本国内で、外国人がマンションを購入する事例が増えている。その背景を取材した。

タワマン上層階は新品の“無人”部屋

福岡市東区にあるタワーマンション。

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部屋は13階で間取りは3LDK。L字型に景色が広がり開放的な眺めが魅力の物件だ。築3年7カ月。室内は新築のようで使用感は全くない。

「人が一度住んでしまうと資産価値が落ちてしまう。投資用として物件を購入されている」と不動産会社『フレームワークス』の浦上利夫さんは、物件を説明する。

オーナーは50代の中国人女性。購入価格は3000万円台だったが、現在は5280万円で売り出されているという。最近のマンション価格について浦上さんは、「どんどん上がっている。直近の3カ月でまた上がった感じ」と話す。そしてこの勢いはまだ続くのでは、と予測する。

福岡市の2024年の新築マンションの平均価格は5598万円。前年から4割以上も上昇しているのだ。

1年で価格が1億6千万円上昇も

現在、福岡市内で最も価格の高いマンションと言われる物件。

22階の部屋で6億5000万円。しかもこういう価格帯の部屋がどんどん福岡に増えてきているという。実はこの部屋もオーナーは中国人。前年4月の購入当時は4億9000万円だったが、わずか1年あまりで1億6000万円も値上がりしていることになる。

会社のチラシの“ポスティング”業務のため浦上さんがこの日、向かったのは福岡市東区のタワーマンション。

だが最近は以前と様子が変わってきているという。「いろんなチラシがポストに詰まっているので入らない」というのだ。

特に、築年数の新しいマンションでは上層階で投資用に購入された部屋が多く、誰も住んでいないためポストからチラシがあふれる状態になっているのだという。

不動産屋にふらっと来て“現金一括”

福岡市内で不動産会社を経営する浦上さんは、外国人による投資目的でのマンション購入が増えてきたのは1年ほど前からだと感じている。「確実に多くなっている。特に中国の方。台湾とか香港の方も来店する。(福岡市中央区)桜坂のマンションを買ったのは中国の方で、6000万円を超える物件を現金一括で買われた」と当時を振り返る。

浦上さんによると、高額なマンションを買っていく外国人客は日本語が話せないのに、不動産会社の店舗に普通に入ってくるという。言葉の分からない外国人が突然ふらっと現れて、高額なマンションの売買契約が成立するのか?浦上さんによると、現金一括で支払うので銀行でローンを組むなどの手続きもなく、取引はいたってシンプルに成立するという。

外国人による不動産購入は全体の2割ほどで、その動きが福岡で活発になっている理由について浦上さんは「投資目的ですよね。居住しないで最初から値上がりするのを待って“出口”を考えているという方が多い。最初は円安が理由だと思うが、日本国内で数少ない人口が増加している福岡市の物件が東京よりも安く買えるというのが魅力なのでは」と分析する。

福岡で物件購入 外国人のトレンド

地元のマンション事情を知り尽くす不動産鑑定士も、外国人の間で福岡の不動産への注目度が高まっていると指摘する。「東京で10戸買って、じゃあ次の10戸をどこで買おうか?福岡にしようというようなことを韓国の財閥筋の人が言っているのを何回か聞いたことがある。外国人が福岡で物件を買うのはトレンドになっている」と不動産鑑定士の渡辺悟さんは語る。 

いまや海外投資家にとって旨味のある魅力的な街となった福岡市のマンション市場。資材費高騰の影響なども重なり、今後も更なる値上がりが予想され、地元の福岡市民には、急速に手の届かないものになりつつある。

(テレビ西日本)

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