首里城正殿は、2026年の再建を目指し本格的な工事が始まっているが、その内部に飾られる装飾品などの復元も同時に進められている。

今回、特に大きく様変わりするのが、首里城正殿に掲げられる扁額(へんがく)。このほど、扁額の試作が最終段階に入り、復元に携わる職人の想いを取材した。

再建で大きく様変わりする扁額

首里城正殿の玉座の後方に掲げられる扁額は、平成の復元時には具体的な色味が分かる史料がなかったため、他の扁額などを参考に朱色とされてきた。

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しかし、このほど尚家の史料「尚家文書」から扁額の地板が黄色であるという記述がみつかり、今回の再建で大きく様変わりする。

首里城扁額製作検討委員会においても安里進委員が、「琉球の扁額は基本的には赤、あるいは黒ですが、それとまるっきり違うのでこれは驚き」と話す。

題字が見えづらくなるのでは?

2023年5月、新たな知見をもとに扁額の試作が始まったが、関係者は「地板が黄色になることで、金箔が貼られた題字が見えづらくなるのでは」と不安を抱えていた。

沖縄県指定無形文化財「琉球漆器」保持者の諸見由則さんは「(地板に)黄色を塗ってしまえば(題字の)金箔もかなり黄色なので、ちょっとおかしくなります。それがかなり議論になった」と明かす。

19世紀頃の漆器を参考に何種類も試作

金の題字が目立つ黄色の色味とは…。首里城の修復事業に携わって20年近くになる、諸見由則さんにとっても大きな挑戦であった。

諸見さんはどのような黄色がよいのかを調査するため、東京国立博物館に足を運ぶなどして、19世紀頃の漆器を参考に何種類もの試作を作り、色味を決定した。

2023年7月、初めて黄色の漆が塗られた。

漆職人の諸見さんは「これだったら(題字に)金箔を貼っても、それほど明るくはならないので、ちょうどいいのかなと思う」と手ごたえを感じていた。

扁額の試作は最終工程へ

黄色の漆を塗ってからおよそ3カ月。地板には題字が取り付けられ、いよいよ金箔が貼られた。

金箔をシワなく貼るには接着剤の代わりとなる漆を薄く塗る必要があり、そこが職人の腕の見せどころだ。

諸見さんは、「漆を薄くすればするほど、ほとんど金箔のシワがなくなる」「そこが職人の技」だと説明する。熟練の技により、地板の黄色と金箔のコントラストもしっかり出ていて題字が光って見える。

諸見さんは、「もっと(地板が)黄色だったら金箔があまり目立たなくなるので、僕はこれでいいのかなと思う」「早く復元して黄色の扁額を見せることができれば、みなさん喜ぶと思う」と意欲を口にしていた。

扁額の試作は、2023年12月にも最終工程である漆で金箔をコーティングする「金薄磨(きんぱくみがき)」が行われ、年内に検討委員会で本製作に向けて修正がないか議論される。

沖縄テレビ
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