外食する際、何を基準に店を選ぶか。
値段や料理のおいしさはもちろん、店で受けられる「サービス」も重要になる。
サービスはその店のオーナーによるが、今、ちまたでは“サービスが正直すぎちゃう”飲食店があるという。
想像よりも“ナナメ上”に変化を遂げたものに注目する「ナナメ上調査団」では今回、「正直すぎるオーナーがいる飲食店」に注目。
「お客様ファーストすぎる」「正直すぎるメニューがある」「食べたいものを頼ませてくれない洋食店」、「思ったことを何でも言っちゃう店主」まで、ナナメ上な「正直すぎるオーナーがいる飲食店」を取材した。
まずは、サービスしすぎる飲食店から。
成長したら1個無料の飲食店
兵庫・西宮市の創業50年の洋食店「土筆苑(つくしえん)」。
この記事の画像(23枚)看板メニューは肉厚でふわふわ食感のハンバーグ。
10年以上継ぎ足している濃厚デミグラスソースがたまらない一品だ。
そんな絶品ハンバーグが、超お得に食べられるサービスを実施している。
その名も「成長ハンバーグ」。子どもの成長を応援する企画だ。
小学生以下のお子さんを対象に、身長が前回の来店時より伸びていれば、1センチにつき特製ハンバーグを1個プレゼントするというもの。
つまり、5センチ伸びていたら、5個もらえるというから驚きだ。
料理長の大谷隆史さんは「正直、お子様とそのご家族の笑顔が見られたら、それだけで僕たちはうれしい」と語る。
まさに“お客さまファースト”な飲食店だ。
続いては、メニューに「正直すぎる気持ち」が書いてある中華料理店を取材。
「正直すぎる気持ちのメニュー」がある飲食店
横浜中華街にある「龍興飯店(ろんしんはんてん)」。
フカヒレ料理や小籠包といった本格広東料理などが約130品、時間無制限・食べ放題で2475円からという人気店だ。
しかし、「正直すぎる気持ち」が書いてあるメニューとは何なのか。
メニューを見ると、「北京ダック」や「エビのチリソース」には「大人気」と書かれている。
しかし、「砂肝とキュウリの和え物」に書かれていたのは、まさかの「人気なし」の文字だった。
本当に人気がないのか。店長の謝成斌さんに聞いてみるも「はい、人気なしです」とキッパリ。
確かに正直すぎるが、さらにほかにも「牛肉の海鮮ソース炒め」には「癖あり」、「モチ米団子」には「冷凍品」など、メニュー表にはわざわざ書かなくてもいいような正直なコメントが並んでいた。
気になった調査員は「人気なし」と書かれた「豚みみ」を注文。
食べてみた調査員は「すごくおいしいです!なんで人気ないんだろう?」と首をかしげた。
次に「癖あり」と書かれていた「仙草(せんそう)ゼリー」も注文。
調査員は「すごく癖があります。なんか、漢方ぽい感じ」と“癖”を感じていた。
メニューによっては、おいしかったり、書かれている通りクセが強かったりしていたが、なぜ、正直なコメントをメニューに書いているのか。
「お客様に素直にお伝えして、なるべく注文を失敗させたくないため。香辛料が強すぎて(日本人の口に)合わない、食べて『マズイな』と思ってそのまま残してしまう。はっきり書いたほうがそれを軽減できる」と、店長の謝成斌さんは語る。
確かに食べ放題で頼んだはいいけど、食べきれずに残しちゃうというのはありがちだ。
この「正直すぎる気持ち」が書かれたメニューについて、お客さんは「めっちゃ正直だなって思いました」「『人気なし』だから逆に頼みたくなるし、『大人気』はもっと頼みたくなる」と楽しんでいた。
店長の謝成斌さんは「お腹いっぱいになるよりかは『すごくおいしかった』って言われた時にすごく満足です!それだけで十分です」と話した。
「人気なし」と「大人気」、みなさんも、ご自身の舌で確かめてみては。
続いては、食べたいものを頼ませてくれない洋食店。
メニューは一択!な洋食店
新潟市にある、キリンが目印の「レストランキリン」。
創業は昭和3年からで、祖父の代から伝統の味を受け継ぐ老舗の洋食店だ。
店内は、老舗店らしく昭和レトロ感満載の雰囲気となっている。
手書きのメニューを見てみると、創業当時から変わらぬレシピで作られたハヤシライスや、450グラムもあるボリュームたっぷりハンバーグ、和牛のビーフシチューなど、洋食メニューがずらりとある。
調査員は「和牛」にひかれ、ビーフシチューを注文しようと、店員さんを呼ぶと聞かれたのは「お決まりで?オムライスですか?」。
注文する前にフライング気味で「オムライスですか?」と聞かれてしまう。
調査員がオムライスではなく、ビーフシチューを注文するが、レストランキリン代表取締役3代目・三上渉さんは別のメニューを頼むように促す。
「ビーフシチューですか…煮込むのに時間かかりますんで。それに集中しなきゃいけないので他のお客様にちょっと迷惑かかるんで、他の(メニューの方)がよろしいかと思いますけど」
なんと「時間がかかる」とのことで断られてしまった。
ならば、次はハンバーグを注文するが、「ハンバーグも一から手ごねでやるので焼くのに時間かかって、これも25分~30分くらいかかるんで」と、これもまた「時間がかかる」という、店主の包み隠さない正直な理由で、注文できず。
何ならいいのか、調査員が迷っていると「オムライスだったら3分でできますんで、オムライスでよろしいですよね?いかがでしょう?」とオムライスを推される。
そんなに言うのなら、と調査員はオムライスを注文。
すると、本当に注文から3分でオムライスが登場した。
あれだけすすめられたオムライスのお味は、「おいしい!バターがしっかり効いていて、人気ナンバー1というだけあります」と調査員も満足げだ。
バターをきかせたケチャップライスをたまごに乗せたら一気に返し、濃厚な特製デミグラスソースをたっぷりかけた絶品オムライス。
強引な流れだったことも忘れてしまいそうなおいしさではあるが、なぜそこまでしてオムライスをすすめるのか。
「お昼休みが20分しかない、時間がないという方がいらっしゃる時に20分、30分かかるビーフシチューは出せませんので、ほかのお客様に迷惑になっちゃうし…。だったらもう3分で出来るオムライスを勧めた方が、みんなのためになると思うんです」
店主1人で切り盛りしているため「時間がかかるから申し訳ない」という、実は“お客さんファースト”からくる、正直な気持ち、それがオムライスをすすめる理由だったのだ。
それにしても注文してから3分で出てきたオムライス。なぜそんなに早く出せるのか。
「忙しくなっちゃうとチキンライスまで用意しておくので30秒で出せます!もうだいたいお客さんが入ってくると作り始めていますから。(オーダーを聞いてなくても)もうこの人オムライスだって判断してやります」
もちろん時間に余裕がある時には他のメニューの注文も可能だ。
「店名を『オムライス屋』にすればいいんじゃないか」という人もいたというが、三上さんは「やっぱり洋食屋って看板がある以上、洋食のメニューを中心にしないとオムライスだけっていうのは、ちょっとわからんでもないですけど。でも、やる気はないですね」と語る。
どんなにオムライスがおすすめでも、オムライスだけのお店にはしないというこだわりがあると笑う三上さんだった。
続いては、お客さんに思ったことを正直になんでも言っちゃう店主がいる飲食店。
正直すぎる店主がいる飲食店
東京の下町情緒が残る「谷中銀座商店街」の一角にある「レストランZAKURO(ザクロ)」。
イランやトルコ、ウズベキスタンなどの中東や中央アジアの料理が味わえるお店だ。
ランプがたくさんある独特な雰囲気のお店に入ると、チャーミングな笑顔で迎えてくれたのがイラン出身の店主、アリさん。
このアリさんが「お客さんに思ったことを正直になんでも言っちゃう店主」ということなのだが、何を言われるのか。
調査員はドキドキしながらも、一番のオススメ「食べきれないコース」を注文。
ローストした丸ごとチキンや豆の煮込みなど、日によって品数は異なるが、約15品で2200円と、とてもリーズナブルなコースだ。
今のところ、アリさんの接客には特におかしなところはない、と思ったのも、つかの間。
近くに座っていた男性グループに「男ばっかでテンション下がる」と、正直というよりも少々失礼な発言をするアリさん。
続いて、女性客2人には「ヤバい、今からくる2人はきっと髪型に金かかってる!」と、お客さんの印象を、見たまま、思ったままにイジっていく。
そして、注文した品を持ったアリさんが調査員の元に。
何と言われるのかドキドキしていると「はいはい、美人さん、頑張って~。食べたらさっさと帰って~」とコメント。
上げて、落とす。
もはや言いたい放題だが、お客さんたちはこの接客を意外にも楽しんでいるようだ。
アリさんは「相手が楽しくなることしか考えてない。こっちが悪い意味で言ってないから怒られたこともないし、みんな楽しくなって帰っていく。そうやってみんな楽しくなるのはやっぱり幸せ」と語る。
そんなアリさんのキャラクターがなせる技なのか、いつのまにか店全体を一体にしてしまうという得意技があり、何と今まで店に来た28組が出会って結婚しているのだという。
嫌なことを忘れて思わず笑顔になっちゃうアリさんの愛のあるいじりと絶品料理。
皆さんも味わってみては。
正直すぎるオーナーがいる飲食店、みなさんもお気に入りのお店を見つけて食べに行ってみるのもいいかもしれない。
(ノンストップ!『ナナメ上調査団』より 2023年9月19日放送)