福岡県の田川地区8つの市町村が共同で進めるごみ処理施設。この施設に関連する情報開示を巡って「圧力を受けた」などと、隣合う市と町のトップが対立している。

“豪腕”で知られる大任町の永原町長

2023年8月7日、福岡・田川市の村上卓哉市長(52)が緊急の記者会見を開いた。

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会見では、行政のトップである市長が「市民の生活を盾にとってといいますか…。そういったところが一番、私としては圧力と受け止めたところであります」と、外部から「圧力を受けた」と発言した。

田川市長に“圧力”発言をしたとされるのは田川市の隣町、人口5千人余りの大任町の永原譲二町長(70)。

大任町の観光パンフレット 表紙には永原町長の姿も
大任町の観光パンフレット 表紙には永原町長の姿も

「ヤバいぜ!」と言う強烈なキャッチフレーズで知られる、町の観光パンフレットの表紙を自ら飾る永原町長。豪腕とも言われるその政治手法は、良くも悪くも注目されてきた。

隣り合う市と町の間で自治体の長がいがみ合うという、異例の事態。一体何が起きているのか…。

福岡県の中央部、田川地区の住人ら合わせて10万人以上が共同で利用する予定の広域ごみ処理施設。利用する7つの自治体から委託を受けた大任町によって建設が進められている。

この施設に関する情報公開請求を巡り、建設を進める大任町の永原譲二町長と地元自治体との間で異例の事態が起きていた。

5年前から「資料をずっと求めてきた

田川市の佐藤俊一市議は、ごみ処理施設の建設事業が動き出した約5年前から、事業に関する資料の開示を求めてきた1人だ。

田川市・佐藤俊一市議:
300億円以上のお金を、税金を使って工事をやっているのに、特に私たちは住民の代表として議員になっていますので、それを市民から聞かれたときに説明ができないというのは、ちょっといけないと思うので…。私たちは厚生委員会で資料をずっと求めてきた

2023年3月、佐藤市議が委員長を務める厚生委員会の場で、一度配布された公文書が今回、問題となっている。

田川市・担当課(田川市議会厚生委員会 3月 YouTubeより):
(文書は)部外秘とさせていただくとともに会議終了後、回収することを了承の上お配りしたい

この日の委員会は、隣町から永原町長が傍聴に訪れるという異例の状況下で開催。問題となっている文書は、審議もままならない間に回収されてしまったのだ。

田川市・佐藤俊一市議:
私が読み上げようとしたら持って行ったので、中身を全て読んだかというと、そこまでは分からなかったですね

情報公開する必要はない? 文書の内容は… 

配られた文書には、一体何が書かれていたのか。テレビ西日本は、その文書の写しを独自に入手した。

田川市宛てに永原町長の名前で押印されたこの文書には「事業の検査・審議は大任町議会の責務」と記されていた。つまり、広域ごみ処理施設の建設は、あくまでも大任町の事業で、個別に情報公開する必要はないということだ。

田川市・佐藤俊一市議:
この文章が出たら「まずい」ということは全くないと思うんですね。普通に私たちに見せて説明をしてよかったと思うんですよ

佐藤市議は、改めて内容を確認するため後日、文書の開示を求めたと言う。

田川市・村上卓哉市長(8月7日・田川市役所):
田川市が大任町長から情報開示に関することで圧力を受けた。市民生活に影響があることを持ち出して、町長の思いを通そうとするこういう手法については、怒りを覚えます

8月7日に、緊急会見を開いた田川市の村上卓哉市長。村上市長によると2023年6月、佐藤市議が開示を求めた公文書について、大任町の永原町長から「公開するならごみ処理施設の組合から出て行け」といった脅しともとれる「圧力」を受けたと言う。

田川市民4万5千人のごみ処理を「人質」に取られたと感じた村上市長は、このときのやりとりを録音した音声データの公開に踏み切った。

永原町長(録音された音声データ):
ここまで言って市長がね、「いや、これは出す」と言うたら、これはあんたが勝手に出すき、俺は出したら困る。信義を守れと言って、出したら後は全てがもう、俺方はあんた方と協力せんから、全てにおいて。当然、されてもしょうがないよ

田川市・佐藤俊一市議:
田川市の文書ですから、もらったのはね。大任町が田川市の保管した文書について、そこに介入してくること自体、私は大問題だと思う

田川市に対し、永原町長の名義で出されたこの公文書は2023年3月、当時、田川市長だった二葉公人氏との間で「外に出さない」と申し合わせて作ったもので、永原町長は村上市長に対し、文書を開示しないよう強く求めたと言う。

村上市長は、せめて当時の記録はないかと尋ねたが…。

村上市長(録音された音声データ):
その申し合わせ、何かしら残ってないか。覚書なり何なりで

永原町長(録音された音声データ):
まさか。(田川市長が)あんたに変わるっち思うてもない

さらに永原町長からは「公開するなら村上市長の名前にして出せばいい」などと、公文書の書き換えを促すような発言も飛び出していた。

永原町長(録音された音声データ):
「大任町長」から、ここをね、新しい市長名で委員会宛てに出したらいいんやないか

永原町長「情報開示をするなとは言ってない」

永原町長は7月14日、田川市議会で開かれたごみ処理施設に関する説明の場で、公文書を巡る村上市長への発言について次のように述べている。

永原町長(7月14日 YouTubeより):
私は、情報開示をするなとは一言も言っておりません。村上市長は、うそ言いよる。私は出していいですよ、ただし、あなたの名前で委員会に出しなさいと

番組は永原町長に、役場を通じて取材を申し込んだが「公務多忙」を理由に応じてはもらえなかった。

莫大(ばくだい)な公金が投入され大任町で建設が進む広域ごみ処理施設。我々の税金が使われているにも関わらず、その事業への「知る権利」は果たしてどこへ行ってしまったのだろうか。

(テレビ西日本)

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