厳しい暑さが続くなか、家で快適に過ごすにはエアコンは欠かせない。しかし、家庭内での体感温度の違いから快適に過ごせなかったという経験もあるのではないだろうか。
パナソニックが6月に、20~60代の既婚会社員の男女550人を対象に実施した調査では、約9割が家族と体感温度の違いを感じていることが分かった。
調査ではまず、自身が“暑がり”か“寒がり”かを聞き、「暑がり派」の59%に対し「寒がり派」が32%と、「暑がり派」が「寒がり派」の約2倍いることが明らかになった。

つづいて、「夏のエアコン使用時に、設定された温度が不快と感じることがありますか?」という質問では、「頻繁にある」(34%)、「たまにある」(60%)と9割以上が設定温度について不快と感じていることが分かった。

また「自宅で夏のエアコン使用時に、パートナーやご家族と体感温度の違いを感じることがありますか?」については、「頻繁にある」(33%)、「たまにある」(56%)と、約9割が体感温度の違いを感じていた。

さらに、「体感温度の違いから揉めたことはありますか?」という質問では、11%が「頻繁にある」、51%が「たまにある」と回答。6割以上が体感温度の違いから揉めたことがあったのだ。

6割以上が体感温度の違いから揉めていたとなると、これをストレスに感じている人もいるかもしれない。では「暑がり派」と「寒がり派」が同じ部屋で過ごすときは、どうすればいいのか?
パナソニックの担当者に“揉めないコツ”を聞いた。
「体感温度の違いに向き合ってきました」
――このような調査を行った理由は?
パナソニックでは、熱中症対策のためにも、夏は我慢せずにエアコンを活用していただきたいと考えております。
しかし、パナソニックの6月の調査では、エアコンをガマンする理由について、「電気代がかかるから」という回答に次いで「冷えすぎるから」の回答が多い結果になりました。
体感温度の違いによって、エアコンをうまく活用できない、快適な空気環境を実現できていない、といったお悩みを抱える方に向けて、エアコン冷房をうまく活用する方法をお伝えしたいと考えました。
そのため、改めて、「暑がり派」「寒がり派」それぞれの割合を可視化したいと考えたのが、今回の調査を行った理由です。
――「暑がり派」が「寒がり派」の約2倍いるという結果、どのように受け止めた?
エアコンは冷えすぎるから苦手という方が多いので、「寒がり派」が多いかと思っていましたが、最近は電気代を気にして、高めの設定温度にされている方が増えています。本来、もう少し下げたいけど ちょっと暑くても、我慢しているという要因があるように感じます。

――6割以上が体感温度の違いから揉めていることについては、どのようなことを感じた?
パナソニックでは、これまで、個人の体感温度の違いに着目し、センサーやAIを進化させながら一人ひとりの「暑い」「寒い」感覚を見分け、気流を制御するなど、エアコンを使用する上で避けて通れない“体感温度の違い”について向き合ってきました。
今回、改めて調査したことで、まだ多くの方がこの体感温度の違いに悩まれているため、センサー搭載機種の普及や「暑がり派」「寒がり派」どちらの方も快適に過ごせる空気環境づくりを意識した商品づくりや、情報発信を進めていきたいと思います。
揉めないためには「PMV」のコントロール
――「暑がり派」と「寒がり派」が揉めないためには、どうすればいい?
ポイントは、「PMV」のコントロールです。快適性評価「PMV(Predicted Mean Vote)」は、人がどれくらい快適かを表す指標で、1994年に国際的な標準指標として規格化されました。
「PMV」は、温度、湿度、放射、気流、活動量、着衣量の6つの要素から算出され、人が感じる暑さ・寒さの度合いを「-3(寒い)~+3(暑い)」の値で示します。

例えば、身近なところでは、環境省が取り組む「クールビズ」です。
取り組みのひとつとして「快適に過ごせる軽装」を呼びかけていますが、これは、軽装による体感温度差に着目したもので、平成17(2005)年に(財)省エネルギーセンターが実施した「上着を脱いでネクタイをはずすと体感温度が2℃下がる」という実験結果に基づいて、設計したものです。
室温28℃の時の「軽装」と、室温26℃の時の「スーツ」の温熱感は、ほぼ同じであり、着衣量のコントロールによって、体感温度を下げる工夫を促しています。つまり、エアコンの設定温度を調節せずとも、PMVにおける温度以外の要素をコントロールすることで、快適な温度を得られる場合があります。
――「PMV」のコントロール、具体的には?
「着衣量」と「気流」があります。
・着衣量
「着衣量」をコントロールすることで、体感温度は下げることができます。当たり前のことのように思えますが、「スーツ」と比べ「軽装」では体感温度が2℃も下がるなど、シンプルながら効果のあるコントロール方法です。

・気流
「気流」、つまり風速をコントロールすることで、体感温度は1℃~2℃、変化します。
例えば、扇風機の「中」程度の風速である1m/秒、風速があがると、体感温度は約1℃~2℃程度、変化します。つまり、暑いと感じている人は、個別に扇風機を併用することで体感温度を1℃~2℃下げることができます。
エアコンと違い、暑いと感じている人にのみ、個別に使用できるのもポイントです。同じ考え方で、エアコンの風向きを変えるという方法もあります。
――“暑がり”と“寒がり”が同じ部屋で過ごすときのコツは?
エアコンの風向きを調整できる場合は、暑がりの方にエアコンの風が直接、当たるよう、風向きを下向きに、寒がりの方は直接、当たらない場所へ移動してみてください。
扇風機を使って、暑がりの方が個別に風を浴びることも効果的です。また、「着衣量」で、それぞれが体感温度のコントロールをすることも大切。設定温度を変えることなく、それぞれの対策法で一緒に過ごしましょう。
――職場だと冷房が効きすぎていることが多いが、その場合に寒がりの人は、どうすればいい?
冷房が効きすぎている場合、寒がりの人は、着衣量のコントロールや、冷房の風が、直接、当たらない場所に移動するなど、職場でも「PMV」を意識して、体感温度をコントロールしてください。
また、温かい飲み物を飲んだり、「首」「手首」「足首」など血流の多い血管(動脈)が通る部分を温めたりすることで、効率よく全身を温めることができるので、ぜひ取り入れてみてください。

エアコンが欠かせない今の時期、家庭内の体感温度で揉めた際には「着衣量」と「気流」をコントロールしてみてほしい。「暑がり派」「寒がり派」がそれぞれ対策をとることで、一緒に快適に過ごせるようになるかもしれない。