南国の沖縄で、冬のオリンピック種目であるカーリングを根付かせようと奮闘する県出身者がいる。 男性がカーリングにのめり込んだきっかけは、ある漫画との出会いだった。 

カーリングの体験教室にロコ・ソラーレが 

2023年6月、南風原(はえばる)町のサザンヒルで開かれたカーリングの体験教室。 

講師を務めたのは、北海道のカーリングチーム、ロコ・ソラーレだ。 

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2018年の平昌オリンピックで銅メダル、2022年の北京オリンピックで銀メダルに輝いた。 

国民を熱狂させたオリンピアンが、なぜウインタースポーツが盛んではない沖縄で、体験会を開くことになったのか。 

背景には、カーリングに熱を注ぐ一人のウチナーンチュ(沖縄にルーツを持つ人)の姿があった。 

一冊の漫画との出会い「これは運命やっさ」 

カーリングが盛んな北海道北見市で、市民に向けて競技を広める活動をしている「地域おこし協力隊」を1人で担ってきた上地(うえち)雄大さん。首里高校出身で野球少年だったというウチナーンチュだ。

大学卒業後に、北見市のスポーツクラブに就職し、フィジカルトレーナーとして働き始めたときにカーリングと出会った。

地域おこし協力隊・カーリングサポート隊 上地雄大さん:
お客さんで、ロコ・ソラーレの選手がいて、カーリングに必要な筋肉だったり動きっていうのを調べるために、一回は自分でやってみないとわからないということで、やってみたのが最初のきっかけでした

ロコ・ソラーレと出会い、カーリングに魅了された上地さんをさらに突き動かした決定打は漫画だった。 

漫画の舞台は、南風原町の「サザンヒル」。 

北海道のカーリング選手が沖縄に移住し、カーリングを若者たちに広めていく物語だ。

地域おこし協力隊・カーリングサポート隊 上地雄大さん:
たまたま寄ったラーメン屋さんに漫画が置いてありまして、その漫画に沖縄でカーリングを始めましたという連載がありました。それが「南風原カーリングストーンズ」っていう漫画なのですが、それを見て、いま北見に来て、沖縄でカーリングを始める漫画に出合ったっていうことで、勝手にこれはもう運命やっさと思いました

「南風原カーリングストーンズ」の作者は、なかいま強(つよし)さんで、20年にわたり月刊少年ジャンプで連載された人気野球漫画、「わたるがぴゅん!」などを描いてきた。

「わたるがぴゅん!」に影響され、野球にのめり込むようになった過去もあり、強い運命を感じたと言う。

地域おこし協力隊・カーリングサポート隊 上地雄大さん:
2022年の10月に、沖縄に帰省した際にサザンヒルの方に寄らせていただいて、サザンヒルでもカーリングを今後やる予定はありますかと聞いたところ、カーリングを沖縄でもやりたいので一回視察に行きたいですというようなお話をいただいて、サザンヒルの方と北見市でカーリングをして、これは沖縄でもはやらせたいといことで、きょうに至るという形です

持ち前の行動力と協力を得て、ロコ・ソラーレまで沖縄に 

しかし、カーリングの文化のまったくない沖縄で、体験会を開くのには多くの壁があった。

地域おこし協力隊・カーリングサポート隊 上地雄大さん:
一番難しいのが、カーリングのストーンです。海外のスコットランドの離島でしかとれない石を使わないと、カーリングができないと聞いていましたので。ストーンを買うのにも1セット200万円したり、もし購入するとなった場合でも納期に半年から1年かかるという話を聞いていました

金銭面や始めるまでのスピードなどを考えると、ストーンを購入することはできなかったという。 

それでも上地さんは諦めなかった。 

地域おこし協力隊・カーリングサポート隊 上地雄大さん:
2020年3月まで稼働していた河西建設カーリングホールっていうところがありまして、そこに「使っていないカーリングストーンが2セットありますよ」と協会の方からお聞きして、直接会社の方に連絡させていただいて、「もし使っていないのであれば、沖縄で使わせてください」と直接お願いをしたところ、快く受けてくださいました

どうにか一番大きな課題だった、ストーンの調達ということがクリアできた。

カーリング文化のない沖縄で、体験会を実現させたいと思いたってから、およそ半年で体験教室の実施にこぎつけ、その翌月にはロコ・ソラーレを連れてくることにも成功した。

ロコ・ソラーレ 吉田知那美 選手:
私たちは雄大くんって呼んでいるのですけども、いろいろな方をカーリングに引き込んでくれている、すごくバイタリティのあるカーリング界に火をつけてくれている存在です。こうして、私たちも本当に沖縄に来ることができました。これからも、北は北海道、南は沖縄までいろいろな普及に携わってくれるスーパーキーマンになってくれると思っています

体験教室では、子どもからお年寄りまで楽しむ姿が見られた。 

体験教室に参加した女の子:
思っていたより回しても進まないから、難しいです。でも、意外と楽しいです

体験教室に参加した男性: 
楽しいですよ。私は今、76歳なんですが、80歳くらいまでできるんじゃないですか

南国の沖縄からオリンピアン誕生を夢見る 

体験教室が終わったその夜の懇親会で、上地さんは人生を変えてくれた、なかいま強先生と対面することができた。 

地域おこし協力隊・カーリングサポート隊 上地雄大さん:
なかいま先生には、人生においていろいろ助けられてばっかりで、「わたるがぴゅん!」もそうですし、「南風原カーリングストーンズ」もそうでした

なかいま強 先生:
影響を与えられているのかなということではうれしいという気持ちもありますが、道を外していないかなっていうちょっとした恐れもあります。漫画の中で、「自分がやりたいことは自分で決めないといけなんよ」みたいなことも描いているつもりなので、そこは自己責任で(笑)

なかいま強 先生:
ぜひ沖縄と北見とを行ったり来たりして、沖縄でカーリングチームを作ってもらって、北見との繋がりで沖縄のチームに北見での本場のカーリングっていうのを見せるということをやってください

多くの偶然が重なり、カーリングに魅了された上地さんが目指す未来とは… 

地域おこし協力隊・カーリングサポート隊 上地雄大さん:
今回、ロコ・ソラーレさんというオリンピック2大会で連続メダルを取っている方々が来ているので、この方たちの指導を受けて、私も・僕もオリンピックに行ってみたいという方が一人でも増えていけば、今後の沖縄でのカーリングはすごい発展が楽しみだなと思います

漫画のような人生を送る上地さん。今後は雪国のスポーツであるカーリング種目で南国・沖縄からオリンピアンが出てくることを夢見ている。 

(沖縄テレビ)

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