全国に2万人いる児童養護施設で暮らす子どもたち。そこにはどんな子どもたちがいて、どんな生活をしているのだろうか。

シリーズ累計150万部超『ケーキの切れない非行少年たち』の著者でもある宮口先生の著書『マンガでわかる 境界知能とグレーゾーンの子どもたち4 傷ついた子を救うために』(扶桑社)から一部抜粋・再編集して紹介。

本書は児童養護施設を舞台に、子どもたちがどのように過ごしているのか、学校教育で求められていること、支援のヒントなどをマンガの形で取り上げている。

多くの子どもは虐待を経験

厚生労働省によると、児童養護施設は全国に612カ所設置されています(令和2年3月末)。

平均在籍期間は5.2年ですが、10年以上の在籍期間の生徒も14.6%います。

児童養護施設で生活する約2万人のうち、小学生が約35%、約8500名の児童が生活しています。国内に約622万人いる小学生(文部科学省、令和3年)の約0.1%です。

約0.1%の小学生が児童養護施設で生活している(画像:イメージ)
約0.1%の小学生が児童養護施設で生活している(画像:イメージ)
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主に「保護者のいない児童」「虐待されている児童」「その他環境上養護を要する児童」の子どもたちが入所し、虐待を受けたことのある子どもが約3分の2、何らかの障害のある子どもが約3分の1いるといいます。

「その他環境上養護を要する児童」とは、親が病気になってしまい経済的に養育ができなかったり、親が罪を犯してしまい逮捕されるなどといったケースがあります。

これまでは原則18歳、最長22歳までしかいられなかったのが、年齢制限が撤廃されることになります。

専門職員がさまざまなサポート

例えば、両親が離婚をして、母に引き取られるも母の交際相手からの虐待で児童養護施設に入所するということもあります。

施設にはそうしたアタッチメント(主に養育者と子どもの間に形成される愛着関係)に問題のありそうな子どもたちも大勢暮らしています。

そうした子どもたちのために各種の専門職員が配置され、さまざまな取り組みがなされています。児童指導員や保育士は保護者に代わって子どもの養育を担ったり、家庭支援専門相談員は親子関係の再構築を図り、子どもの家庭復帰をサポートしたり、自立支援や心理療法を担当する職員もいます。

虐待を受けた経験を持つ子どもの入所も多いため、心理的なケアも行われています。

ネグレクトや身体的虐待、心理的虐待、性的虐待を受けた子どもたちは、安心や安全を与えてくれる存在を求めています。そのために見慣れない大人に近づいたり、わざと暴言や暴力を振るって反応を見たり、べったりとくっついたり、逆に大人を信用しなかったりなどの行動に出ることがあります。

子どもにとって安心や安全な存在になることは、頭では理解できても、実際にはなかなか困難なことだと私自身も過去の苦い経験から感じました。

『マンガでわかる境界知能とグレーゾーンの子どもたち4 傷ついた子を救うために』(扶桑社)
『マンガでわかる境界知能とグレーゾーンの子どもたち4 傷ついた子を救うために』(扶桑社)