子どもが非行に走ってしまうことは、親や学校の教師らにとって避けたいことだろう。

非行化にはさまざまな原因があるが、「小学2年生くらいから少しずつそのサインが見え始める」と児童精神科医・宮口幸治先生は言う。

シリーズ累計150万部超『ケーキの切れない非行少年たち』の著者でもある宮口先生の著書『マンガでわかる 境界知能とグレーゾーンの子どもたち3 生きづらい子を諦めない』(扶桑社)から一部抜粋・再編集して紹介する。

本書は非行化した子どもたちを支援する司法の流れ、少年鑑別所や少年院で行われていることを取り上げている。

サインを見逃すと対応が困難に…

小学2年生くらいから「勉強についていけない」「遅刻が多い」「じっと座っていられない」など、少しずつサインが見えてきます。こうした背景には家庭内の環境、知的なハンディや発達障害もしくはそれらのグレーゾーンといった課題があったりします。

これらのサインが見逃されてしまったまま中学生になると、対応がますます困難になります。

“中1ギャップ”といわれている時期、思春期など、子どもの環境も大きく変わり、大きなストレスもかかります。

思春期は親に依存しながら反発…で安定していく(画像:イメージ)
思春期は親に依存しながら反発…で安定していく(画像:イメージ)
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通常であれば親に“依存しながら反発する”を繰り返して、受け止められながら安定していきます。

しかし、家庭内が不安定な場合は学校に行かなくなる、不良仲間とつるむ、場合によっては万引きや傷害事件などを起こすこともあるかもしれません。

警察に補導されたり、犯罪が絡めば逮捕されたりすることもあるため、いかに早期にそれらのサインをキャッチして対応するかが大切になります。

少年院の教育は学校でも生かせる

現在、少年鑑別所は法務省によると全国52カ所に設置され、3つの役割を担っているとされています。

(1)家庭裁判所の求めに応じ、鑑別対象者の鑑別を行うこと
(2)観護の措置が執られて少年鑑別所に収容される者等に対し、健全な育成のための支援を含む観護処遇を行うこと
(3)地域社会における非行及び犯罪の防止に関する援護を行うこと
(法務省HPより)

少年鑑別所は「まだ処遇が決定していない状態」の少年たちがおり、少年院に送致する必要があるのかなど、少年の鑑別を行う機関です。

その処遇にあたっては大きくわけて2つの分析が行われます。

1つは法務技官による少年の資質や性格行動傾向などの分析です。面接によって性格や行動特性の分析、事件の原因や動機の解明も行われ、心理検査や鑑別所内での様子を記した「鑑別結果通知書」を法務技官が作成し、裁判官に提出します。

もう1つは家庭調査官による少年への家庭環境や社会背景などの分析です。本人の面談や学校・施設からの聞き取りを行い、非行の背景や家庭環境、処遇意見などをまとめた少年調査票を作成し、裁判官に提出します。

裁判官はこれらの資料と警察の事件記録などを参考に、審判で最終的な処遇を決めることになります。

その結果によって、何らかの発達障害や知的障害の可能性があった場合は、医療少年院へ送られることもあります。

少年院では朝6時から21時までの消灯までスケジュールが決まっており、それが約1年続きます。

その過程で行われる「怒りのコントロール」や「問題解決トレーニング」「認知機能強化のトレーニング」などの矯正教育は、学校や日常生活で困っている子どもを支援するための教育の参考にもなるはずです。

『マンガでわかる境界知能とグレーゾーンの子どもたち3 生きづらい子を諦めない』(扶桑社)
『マンガでわかる境界知能とグレーゾーンの子どもたち3 生きづらい子を諦めない』(扶桑社)