“困っている”子どもたちへの対応には親だけでなく、学校などで接する教師たちも悩んでいるだろう。

シリーズ累計150万部超の『ケーキの切れない非行少年たち』の著者で、児童精神科医の宮口幸治先生の著書『マンガでわかる境界認知とグレーゾーンの子どもたち2 困っている子を見逃すな』(扶桑社)から一部抜粋・再編集して紹介する。

「認知機能」が学習の土台になる

子どもが“困っている”課題には大きく「社会面」「学習面」「身体面」の3つの問題にわかれます。

社会面の問題には、不適切な考え方をしてしまう「考え方の問題」や感情のコントロールが苦手といった「感情の問題」、不適切な行動をしてしまうという「行動の問題」などがあります。

学習面の問題には、「集中できない」「勉強についていけない」など、身体面の問題には「運動が苦手」「手先が不器用」などがあり、こうした問題のうちいずれか、または複数持っていると思われます。

本書は学習面と身体面で困っている子どものサインとその理解や対応方法などに触れています。

学習の土台は、運動に例えると基礎体力に相当します。

国語や算数、理科、社会といった各教科を学ぶためには、学習の土台となる認知機能の力が必要になります。

学ぶことにおいて「認知機能」の力が重要になっている(画像:イメージ)
学ぶことにおいて「認知機能」の力が重要になっている(画像:イメージ)
この記事の画像(19枚)

記憶、言語理解、注意、知覚、推論・判断といったことが認知機能です。

それらが弱いと例えば漢字が覚えられなかったり、黒板の文字を写すことができなかったり、繰り上がり計算ができないといったことがあります。

それ以外にも先生の話を集中して聞けない、不注意なことが多いなどにもつながっていきます。

しかし、認知機能の弱さは学校や家庭では気づくことが難しく、「やる気がない」「怠けている」と思われてしまうことがあるのです。

漢字が苦手でうまく書けない子の場合…

例えば、漢字が苦手でうまく書けない子がいるとします。

小学2年生が学ぶような漢字でも、漢字の体をなしていない文字を書いたり、丸、三角、バツといった簡単な図形も書けないかもしれません。

そうした子どもの場合、視覚認知に問題があると言えます。正確に形や文字を認識できていないという可能性があり、漢字だけではなく、ひらがなもうまく書けないということもあるでしょう。

図形の理解が苦手なことに加えて、黒板の文字を写せていないということもあると言えます。

簡単な図形の模写ができていないときは、点つなぎや模写のトレーニングをする必要があるかもしれません。

学習の土台の弱さに気づけたとしても、どの認知機能が弱いかをアセスメントをしたり、そのトレーニングの方法を知るのは一筋縄ではいきません。

それに対処する方法として「コグトレ」プログラムのうち、認知機能強化トレーニング(COGET)があります。

コグトレは現在、学校現場において「境界知能」や「グレーゾーン」の早期支援として、また健常の子どもたちへの気づきの支援として幅広く使用されています。

勉強や運動が「苦手だから」で片付けず、子どもが“困っている”、そのサインを見逃さないようにすることが大切なのです。

『マンガでわかる境界認知とグレーゾーンの子どもたち2 困っている子を見逃すな』(扶桑社)
『マンガでわかる境界認知とグレーゾーンの子どもたち2 困っている子を見逃すな』(扶桑社)