自由気ままな子どもたちに、いつも親はハラハラドキドキ、時にもやもや。
「笑った!困った!」…でもウチの子はどうしてこんなことするんだろう。その行動の裏には、知られざる“子どものココロ”が隠されているはず。
今回、元気なココロちゃんとマナブくんきょうだいの育児に追われる小木(こぎ)さん一家が注目したのは、こんなお話。
「幼稚園の娘がある日『大人になりたくない!』『小学生にもなりたくない』と言い出した…一体どうしちゃったの?」
ある日突然「大人になること」を拒否しだす我が子。
SNSにも子どもが「大人になると大変そうだから」「大人になるとかわいくなくなっちゃう」などの理由で“大人拒否”している…というパパママの体験談が投稿されているけれど、子どもたちにとって「大人になること」はそんなにマイナスなこと?
まだまだ大人の年齢には遠い子どもたちのお悩み、ちょっとかわいい気もするけれど、パパママはなんてアドバイスしてあげたらいい?育児に役立つ“子育て心理学”を発信している公認心理師・佐藤めぐみさんにお話を聞いた。
「“子ども”という現状に満足」していることも
――そもそも、子どもたちにとって「大人」ってどんな認識?
小さい子ほど、かなり限られた断片的な情報で「大人ってこんな感じ」を作り上げているものです。たとえば、大人=「体が大きい」「仕事をしている」「お料理をする」などです。幼少期はまだ複雑な思考は難しいですから、具体的な大人までの成長ステップを理解した上で、「大人とは」を定義しているわけではないと言うことですね。
一般的には、直近で得る大人の印象(家族、園の先生やテレビなどで見る大人など)が、その子にとっての「大人になるってこういうこと」という理解につながりやすいと言えるでしょう。よって、その子それぞれ思っている大人像は違うと思います。
――「大人になりたくない」という気持ちはなぜ出てくる?
いくつか考えられますが、まず1つは、何らかのきっかけで「大きくなると損だ」という思いを抱いた場合です。たとえば、弟や妹が生まれたときに上の子が起こす赤ちゃん返りでは、それまでできていたことができなくなったなど、成長と逆行するような行為をすることがよく見られます。赤ちゃんっぽい方がかまってもらえるという思いが関係しています。
3歳くらいだと「大きくならない方がいい」とか「赤ちゃんの方が得だ」などと言語的な結論を導くことは少ないと思われますが、5~6歳になれば、「前はもっと○○だったのに」とか、「今は○○でいやだ」のような思いが出てきて、それにより「大きくなりたくない」という発言につながる可能性はあると思われます。
また、「大人になりたくない」に関しては、単純に“子ども”という現状に満足しているということが挙げられるでしょう。大人になって、もし大好きなパパやママと一緒に暮らせないなんてことになったら大変ですから!“現状キープ”ということでこういう発言をする子もいると思います。
あとは、少数派ではありますが、大人にいいイメージがないというパターンも中にはあるかと思います。先述のとおり、直近で得た大人の印象がその子の認識を左右することが多いので、もしそれが「なりたくないイメージ」であれば、“大人”とひとくくりにして否定してしまうこともあるかもしれません。
――じゃあ「大人になりたくない」「大きくなるのが不安」などと言われたら、どう返してあげるのがいい?
大人になると、たしかに家事に育児に仕事にとたしかに大変な毎日ですが、実際にはいいこともたくさんあります。ですので、その事実を伝えていってあげるのはいいアプローチだと思います。
また上でも述べたように、子どもが抱く大人のイメージは、見た目の印象が大きく関わっているので、私たち大人が子どものロールモデルとなるような姿を心がけることはとても大事なことです。
なお、「大人になりたくない」という子の中には、それで泣いてしまったり「死にたくない」と言ったりと親がドキッとしてしまうケースも見られます。その場合、何らかのきっかけで死を目の当たりにし、それで怖くなってしまっている可能性もあるでしょう。たとえば、身近な人やペットの死、大きな災害のニュースなどです。
こういう場合は、怖さから「大人になりたくない」と言っていると考えられるので、大人になるまでも、そしてなってからも、ものすごく長い時間があること、今は100歳まで生きる時代になっていること、なにより体がとても健康であることなど、未来を楽観視できるような話をして、不安に寄り添ってあげてほしいと思います。
くれぐれも、「なにバカなこと言ってるの!」とあしらわないようにしてください。なぜなら、子どもが今そう感じていることはまぎれもない事実だからです。そこを否定してしまうと「言ってもわかってくれない」と気持ちにふたをしてしまいかねません。小さいうちは情報量が少ないために極端な考えになってしまうことも多いので、正しい情報を上手に伝えながら、不安を取り除いてあげてほしいと思います。
子どもたちにとって「大人」はまだまだ未知な部分があるもの。「大人になりたくない」という気持ちは、必ずしも「大人になると〇〇しなくちゃいけないから、私は大人になりたくないな…」など論理的に考えているというわけではなく、「パパママと一緒にいられるから」「お友達と遊べるから」といった“子どもの楽しさ”を満喫しているから、ということもありそう。
一方で、自分が成長したことで「お兄ちゃん/お姉ちゃん」としてふるまうべきことが増えて困惑している・大切な家族やペットとの死別を体験して「大人になる=いつか死んじゃう?」という恐怖を感じてしまっているなど、子どもにとって大きな心配事が隠れていることも。
まずは子どもの「大人になりたくない気持ち」に寄り添いつつ、「でも、大人になったらこんないいことがあるかもしれないよ?」と、パパママの体験談を話してみるのもいいかもしれない。
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※改めて取材をさせて頂く場合もございます。
(解説:佐藤めぐみ/公認心理師)
英・レスター大学大学院修士号取得・オランダ心理学会認定心理士。欧米で学んだ心理学を日本の育児で取り入れやすい形にしたポジ育メソッドを考案。アメブロの「ちょっと子育て心理学」(http://ameblo.jp/la-camomille/)にて発信中。
(漫画:さいとうひさし)