「子育てはあっと言う間に終わる」そう振り返る人は多い。
一方で、「親子で一緒に過ごす時間が減少している」という調査結果が明らかになった。
雑多な日々の中で、家族がそろうわずかな時間をどう工夫しているのか。親子の時間に迫る。
家族で顔を合わせ…「話したい」
「ゲームはリビングで、テレビの大きな画面に映して。みんなが見て、会話になるようにしています。なるべく顔を合わせられる環境にしたい」

親子で過ごす時間について広島市中心部でインタビューをすると、そんな声が聞かれた。
30代母親からは、1人でゲームの世界に浸るのではなく、家族全員で画面を見て会話につなげたいという思いが伝わる。
一方、30代男性は自らを振り返ってこう話す。
「うちの親は家にいてくれたほう。子どものころはゲームばかりしたかったけど、いずれ親と離れて暮らすので、いま思えば、もっと他愛もない話をしておけばよかったなと思う」
スマートフォン(以下、スマホ)やタブレット、ゲーム機…。子どもたちが1人で過ごす時間が、当たり前になってきた現代。SNSを通じて多くの人とつながることができても、画面の向こうにいるのは“家族”ではない。

取材中、ベビーカーに乗った小さな女の子がこちらを見上げる。数年後にはその目がスマホを見つめているのかと思うと、少し複雑だ。
20代母親は不安な気持ちを聞かせてくれた。
「スマホはあまり持たせたくないんです。ずっと動画を見ちゃうと思うので…。食事の時間だけは、家族みんなでそろって、その日のことを話す時間にしたい」
この思いに、うなずく人もきっと多いだろう。
でも、まわりの子が次々とスマホを持ち始める中、「うちもそろそろ…」と悩む日がやってくる。
何が正しいのか――正解が見えにくいいま、迷いながらも親は子どもと向き合おうとしている。
平日も休日も、親子の時間が減少
シチズン時計が全国の小学生400人を対象として2025年に行った調査では、親子が1日に一緒に過ごす時間は平日で平均2時間19分。2012年と比べて41分減少している。休日も5時間29分から4時間19分と、1時間以上短くなった。

【親子が一緒に過ごす1日の平均時間】
2012年 2025年
平日「3時間00分」→「2時間19分」(▲41分)
休日「5時間29分」→「4時間19分」(▲70分)
(出典:シチズン時計調べより一部抜粋)
平日は放課後の時間も限られる中、習い事や塾、親の仕事の影響などで、親子の時間確保が難しくなっているとみられる。
さらに顕著なのが休日の変化だ。背景には、スマホやゲームといった子ども自身の個別活動の増加だけでなく、大人の生活スタイルの影響もあると考えられる。SNSや動画視聴など、親自身も「ひとり時間」を求めるようになりつつあり、その姿を見て子どもたちは育っているのだ。
“AIに聞く”子どもが増加?
もうひとつ、興味深いデータがある。
調査では「学校の勉強以外で疑問が生じたとき、誰に聞くか」という質問も行われた。
1位は「両親」で全体の88.8%を占めたが、近年注目されるのが「AIに質問する」という選択肢。小学生全体では4.8%にとどまるが、高学年に限ると15.0%と大きく増加している。

【わからないこと、誰に聞く?】
高学年(200人)の回答
「両親」86.0%
「友達」13.0%
「兄弟姉妹」5.5%
「自分で調べる」16.0%
「祖父母」5.5%
「AIに質問」15.0%
(出典:シチズン時計調べ)
実は筆者自身も、そうした経験がある。
40代の母親として中学生と小学生の子どもを育てているが、ある日、下の子からこんな言葉を聞いてハッとさせられた。
「お姉ちゃん、AIとLINEするくらいなら私と遊んで」
正直ショックだった。「親が子どもの相談相手になれていないのかも…」と自分に問いかける機会になった。
AIには、「気軽に聞ける」「恥ずかしくない」「すぐに答えが返ってくる」などの利便性がある。
一方で、AIが常に正確な答えを返すとは限らず、情報の真偽を見極める力も求められる。SNS分析が専門の広島大学大学院・匹田篤准教授は「情報の確かめ方も学ぶ必要がある」と指摘する。
日常の何気ない会話が親子の絆に
一緒に過ごす時間は短くなっても、ふとした会話を大切にする親子も多い。

広島の街でインタビューに応じてくれた50代母親と小学2年生の女の子。学校から帰ると習い事に出かけ、親子で過ごす時間は1日あたり3~4時間だという。
「もうちょっと一緒にいたい…」
女の子が正直な気持ちを答えると、その場が和んだ。
「お母さんと“こんなのいいね”と話している時間が一番楽しい」
母親は「それぞれ別のことをしていても、何らかの気配は感じられる」と話す。
親子の時間をどう過ごすか、どんな話をするか。
短い時間でも「おかえり」や「今日どうだった?」という何気ない会話、そのちょっとした時間が、家族のかけがえのない記憶になっていくのかもしれない。
(テレビ新広島)