サツマイモからガスを発生させ、エネルギーを作ろうとしていた起業家が、サツマイモの味にはまり、パンや焼き芋専門店を広島県江田島で展開している。江田島とサツマイモを愛する起業家を取材した。
サツマイモ酵母を使ったパン50種 建物のコンセプトもサツマイモ
この3月に江田島市にオープンしたパン店。
作る端からどんどん売れていくほどの人気だが、普通のパン店とはちょっと違う。
てくてくさつまいも本舗・井上峰志CEO：
全てをサツマイモの酵母で作っているのですが、もうちょっとサツマイモを感じられるパンを作っていけたらというのはあります。焼きいもが入ったパンとか
この店で販売している、およそ50種類のパンは、全てサツマイモから作ったサツマイモ酵母を使っている。
しかし、そのこだわりは酵母だけではなく…
井上さん：
この建物も全部サツマイモのコンセプトで造ってます。1階はサツマイモの土の中、2階はサツマイモの上の部分を表現して造っています
現在、改装中の2階はというと…
井上さん：
その階段がピンクに見えるじゃないですか
木村仁美アナウンサー：
ピンクに見えます。
井上さん：
あれは僕にしたらムラサキなんです。イモの茎がムラサキなので地上に向けて茎が伸びていっている
井上さん：
ここをイートインにしたくて。下でパンとサツマイモのラテを今販売しているので。サツマイモの葉っぱはハートの形をしているので、そういったテーブルを30個くらい作って。イモミュージアムです。ミュージアムを今作る予定です。
当初は電気をつくるためのイモづくり
普通じゃないのは、井上さんの「溢れ過ぎるサツマイモ愛」。
現在、井上さんは江田島市内、12か所でサツマイモを栽培している。
井上さん：
私は車関係の会社をやっているのですが、そのエネルギーを作りたい。今、電気自動車に代わってきている部分もあり、その電気を作りたいという所から、イモ作りが始まりました。メタン発酵させてガスを取り出して、ガスから電気を作る。
エネルギーのためのイモ作りがこの後、どんどん暴走していくことに…。
てくてくさつまいも本舗・堀部直暉さん：
イモを炭でじっくり焼いています。
そして、できた製品が…
堀部さん：
一つがサツマイモの2重焼きです。
堀部さん：
もう一つが、ちょっと焼き芋チックな感じのスイートポテトです。
井上さん：
最初はエネルギーです。今もエネルギーです
木村仁美アナウンサー：
井上さんは、もともと江田島市で車関係の会社を経営しいて、大学と連携して「ガスを原料に発電する」という研究からサツマイモ作りが始まったという。それが高じて、サツマイモに関するビジネスが広がっていく。
電気を作るガスの原料として2012年から農業をはじめ、耕作放棄地の開拓もスタート。現在のサツマイモの収穫は100トン以上。11種類以上を無農薬の有機農法で栽培している。
その後「てくてくサツマイモ工場」を立ち上げ、イモ餡やペースト、スイーツを開発。
2018年には「てくてくサツマイモ本舗」を開業して、焼き芋や二重焼き、スイートポテトなどの販売を始める。
堀部さん：
皮がふわっとしていて、ふわっとした所にクリーミーなサツマイモの餡がわっと広がるような二重焼きになっています
井上さん：
僕の場合、自分がやってみないと納得しない。納得できないタイプの人間なので
究極の焼き芋をつくる大きな壺を自分で焼くまでに
ついには、究極の焼き芋を作るため陶芸家に弟子入りして壺まで作ってしまう。
井上さん：
壺の形になるまではだいたい1週間から10日。だいたい3か月くらい乾燥させて、焼くのにまる1日、冷ますのに2日。これをやらないとおいしいイモが、納得いく焼き芋ができない
そんな、井上さんに店の名前の由来を聞いてみた。
木村アナウンサー：
何故「てくてく」なんですか？
井上さん：
エネルギーを最終的にゴールにしているが、すぐにエネルギーのプラントを作ってエネルギーを販売しますというのはすごく難しい。そこに向かって一歩ずつ“てくてく”と歩み続けていく。その中で店舗も“てくてく本舗”工場も“てくてくのさつまいも工場”なのです。ここは“てくてくのさつまいも農園”
井上さんを取材するうちにサツマイモと同じくらい愛しているものが見えてきた。
地元、江田島への愛だ。
井上さん：
耕作放棄地を使って作物を作って、加工して、それを地元の人に食べてもらって、廃棄物、いわゆるカットしたものや皮や腐ったものはエネルギーに変えていく。江田島からモデルをまず作って全国や海外に発信していきたい
味を極めた焼き芋やパンを作って出た廃棄物からエネルギーをつくる。究極の焼き芋はSDGsにつながっていた。
（テレビ新広島）
