カレーの名店、長野市の「カレーショップ山小屋」は2023年で創業50年。コロナ禍に物価高と厳しい環境が続く中、3代目が「門外不出」のレシピを引き継ぎ味を守っている。また、道の駅の人気そば店と「コラボ」するなど新たな挑戦も続けている。

特別メニュー 人気そば店「そば信」の「カレーつけ蕎麦」

長野市にある道の駅「信州新町」。その一角に人気そば店「そば信」がある。2月23日から道の駅のリニューアル1周年記念として特別メニューの提供を始めた。

打ち立てのそばをくぐらせるのは、カレーのつけ汁。「カレーつけ蕎麦」だ。
(信州豚のカレーつけ蕎麦 930円 2月26日まで)

「そば信」が入っている・道の駅「信州新町」(長野市信州新町)
「そば信」が入っている・道の駅「信州新町」(長野市信州新町)
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「そばの味を邪魔せず、スパイスが効いていておいしい」と客から評判だ。

「カレーショップ山小屋」とコラボ

カレーショップ山小屋(長野市)
カレーショップ山小屋(長野市)

特別メニューはある店とのコラボで実現した。つけ汁のカレーを手掛けたのは、長野市の中心市街地の中央通り脇にある「カレーショップ山小屋」。

「元祖納豆カレー」などが人気のカレー専門店だ。

元祖納豆カレー
元祖納豆カレー

「山小屋」は創業50年

店は2023年5月で創業50年。3代目の中村嘉郎さん(37)が味を守っている。

カレーショップ山小屋3代目・中村嘉郎さん:
50年の中の5年しかまだ担っていないので、50周年のタイミングで店主をやっていただけなので。人ごとのようですけど、すごいなと、50年も続くということは

カレーショップ山小屋3代目・中村嘉郎さん
カレーショップ山小屋3代目・中村嘉郎さん

1973年にオープンした「山小屋」。1号店は繁華街の権堂にあった。カレーの専門店はまだ珍しかったこともあり、一時は8店舗を展開していた。

2代目の春山さんから、3代目の中村さんへ

2代目・春山信行さん(2018年)
2代目・春山信行さん(2018年)

その後、「駅前」だけになった店を長く守ってきたのが2代目の春山信行さんだ。
35年間、店に立ち続けたが、持病で体調を崩し2018年、引退を決意。

店を残そうと、つてを頼って探した結果、常連客の息子で、食品メーカーに勤めていた中村さんが後継者になってくれることになった。

店を引き継いだ当時の中村嘉郎さん
店を引き継いだ当時の中村嘉郎さん

2代目・春山信行さん(2018年):
中村君が一番プランとしてもしっかりしているし、やる気もあるし若さもあるし先、先見据えて絶対成功したいと力強く言っているし

「門外不出」のレシピに、営業のノウハウ。春山さんは2カ月にわたって一(いち)から伝授した。

カレーショップ山小屋3代目・中村嘉郎さん:
お客さんが喜んでくれる味ですとか、お店づくりをしていってくれればいいよというニュアンスのことを言われていたので、あまりプレッシャーをかけられるとか「絶対これは守れよ」とかいう感じではなかった

引き継いだ直後、春山さんが味を確認。

2代目・春山信行さん(2018年):
おいしいです。3代目に任せます

2年後の2020年春、持病が悪化し春山さんは69歳で亡くなった。

カレーショップ山小屋3代目・中村嘉郎さん:
「やりたいようにやりな」っていう、優しさしか覚えていない。体調が優れないというふうには伺っていたので覚悟はしていたんですけど、ほんとに亡くなったのかなと、いまだにそう思います

創業者の男性も既に亡くなっていて、店のカレーを作れるのは中村さんだけ。松代産の長イモを使ったドリアなどの新メニューを加えたが、50年続く味は変えていない。

常連客は「店主が変わっても味が変わらない、ずっと続いてほしい」と話す。

カレーショップ山小屋3代目・中村嘉郎さん:
内装とかも含めてなんですけど、カレーの味とかお店に対して、お客さまが安心してくれるんですよ「ああ、この味」って。お客さまからの「残してくれてありがとう」とか、「いつまでも続けてください」という言葉で、重みを感じることが時折ありますね

3代目同士がコラボ 新たな挑戦

2月17日、中村さんが向かったのは信州新町の「そば信」。コラボメニューの最終チェックだ。

コラボメニュー「カレーつけ蕎麦」のつけ汁
コラボメニュー「カレーつけ蕎麦」のつけ汁

つけ汁は「山小屋」の中辛のカレーと、「そば信」で使われている削り節でとったつゆを合わせる。具材は「信州米豚」と長ネギ。

2人は趣味のフットサルを通じた15年来の友人。今回のコラボは道の駅のイベントに合わせ「そば信」の中村さんから打診があり「山小屋」の中村さんも新たな客層の開拓にもつながればと快諾した。

そば信・中村翔さんとカレーショップ山小屋の中村嘉郎さんが味を確認
そば信・中村翔さんとカレーショップ山小屋の中村嘉郎さんが味を確認

カレーショップ山小屋3代目・中村嘉郎さん:
おいしいです、これならいける。ネギと豚肉が合うわ。いっぱい出るといいね。ていうか、出そうだね、これなら

実は「そば信」の中村さんも祖母の代から35年続く店の「3代目」だ。

そば信・中村翔店長:
味は当然、変わらずにずっと守っていかないといけないんですけど、続けているだけでは成長がない。新しいことをやっていくのが必要で、(3代目という)同じ境遇でやれたというのはいいこと

カレーショップ山小屋3代目・中村嘉郎さん:
もちろん伝統も大事だと思うんですけど、新しいこととか、新しい広がりというのは、(50周年を)皮切りにじゃないですけど、しっかりやっていかないとな、広げていかないとなと

迎えた「初日」の23日。2人の予想通り、コラボメニューは「両店のいいところを引き出せている」と好評だった。

味を守り続ける

カレーショップ山小屋3代目・中村嘉郎さん
カレーショップ山小屋3代目・中村嘉郎さん

50年来の味を守りつつ新たな挑戦も続ける中村さん。店自体はファンのためにいつまでも変わらない存在でありたいと話す。

カレーショップ山小屋3代目・中村嘉郎さん:
とにかく続けることだなと。私の代でつぶれたとなったら顔向けができないので、先代とか創業者の方に。とにかく続けていって、また歴史を積み重ねていければと思ってます。「きょうは山小屋でいっか」みたいな、最終手段じゃないですけど、避難場所みたいな、(「山小屋」の)名前の通り。そういった場所で居続けたいなって思います

(長野放送)

長野放送
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