食卓に欠かせないノリの記録的な不作が続いている。1月下旬の寒波では、強風や高波でノリを育てる網や支柱が被害を受け、生産ができなくなった。追い打ちをかけるような新たな問題に直面している生産現場を取材した。

食卓に欠かせない“ノリ”が…

2月12日、大牟田市で開催された「福岡有明のり感謝祭」。

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ノリすき体験やノリの販売などを通して、県産有明ノリのPRが行われた。感謝祭はコロナ禍で3年ぶりの開催ということもあり、多くの親子連れなどでにぎわいを見せた。

「福岡有明のり感謝祭」来場者(子ども):
楽しかった。ご飯と一緒に食べたい

私たちの食卓に欠かせないノリ。しかし、この日の来場者からは懸念の声も聞かれた。

「福岡有明のり感謝祭」来場者:
今年はあまりノリの出来が良くないと聞いたんですけど…

今、大きな問題となっている「ノリの記録的な不作」。イベントを主催した漁協関係者も顔を曇らせる。

福岡有明海漁業協同組合連合会・西田晴征会長:
私も60年この業界におりますが、今まであったことがないような大変な状況です

不作の一番の原因は「雨」

ノリの一大産地、有明海を襲っている、かつてないほど深刻な不作。養殖の現場では最近、改善傾向が見え始めた一方で、ノリの産地は新たなピンチに直面している。

川崎健太キャスター:
柳川市に来ています。今年、記録的な不作になってる有明海のノリなんですが、今どういう状況になってきたのか、養殖業者の方の声を聞きたいと思います

訪れたのは、ノリの養殖を営んで35年の田中智幸さん。

実は1カ月前にも田中さんを取材していた。そのときのノリ養殖の現場は…。

ノリ養殖業者・田中智幸さん(2023年1月17日取材):
こんな感じ。黄色なんですよね

1カ月前、田中さんの養殖するノリは、本来真っ黒なはずが黄色っぽい色となっていて、商品価値はほぼゼロ。

今シーズンの生産量は例年の9割減、売り上げにして6000万円ほど減るのではないかという危機的な状況だった。

不作の一番の原因は、例年の半分程度という雨の少なさだ。ノリが育つのに必要な川から流れ込む栄養分が不足し、さらに好天が続いたことで植物プランクトンが大量発生。ただでさえ不足している栄養分を食べてしまい、ノリは栄養分をほとんど吸収できなかった。

有明海は2月に入って何度かまとまった雨や雪が降ったというが、再び船に同乗して養殖網のノリを見せてもらうと…。

ノリ養殖業者・田中智幸さん:
まあいつもの本調子ではまだないんですけど。こないだの十数年来の大寒波ってあったじゃないですか、あれのおかげなんですよね

前回取材時のノリと比べると一目瞭然。栄養分を吸収し、本来の黒々とした有明ノリの姿に戻りつつあった。

ノリ養殖業者・田中智幸さん:
生育的には平年に近いノリの生産ができてまして、みんなそこはすごく喜んでますね

川崎健太キャスター:
味も、もう回復していますか?

ノリ養殖業者・田中智幸さん:
そうですね

川崎健太キャスター:
いただきます。(食べて)ああおいしい、ああおいしいですね。すごく何というか、うまみと言うか、うん、おいしい磯の味がします

「ああ終わったな」

例年の9割減になるのではと危惧していた生産量に、改善の兆しが見え始めていたが…。

ノリ養殖業者・田中智幸さん:
でも、また別の意味で、いろんな問題も発生しまして、そこでちょっとみんな頭を悩ませているというか

新たな問題とは何なのか?
船を移動させて、別の漁場に向かった。

川崎健太キャスター:
さらに沖合に15分くらい来たんですけど、これ見えますかね、けっこう漁場が荒れてるんですね

ノリ養殖業者・田中智幸さん:
もうひとつの問題っていうのがこういう、寒波での被害ですね。網が裂けたり、こういう支柱が折れたり、生産が不能になる漁場がすごく出たのもちょっと現実なんですよね

1月下旬の寒波による強風や高波で、皮肉なことにノリを育てる網や支柱そのものが被害を受け、ノリの生産ができなくなってしまったのだ。被害は全体の5割にも及んでいる。

ノリ養殖業者・田中智幸さん:
言葉が出なかったというのが正直なところで、手のつけようがないんですよ、こうなったらですね。せっかくノリの色素が回復して、いまからいいノリが取れ始めるなっていう希望があったんですけど、この現状を見て、ああ終わったなって

この被害で、ノリの生産量は例年の3割ほどまでしか届かない見込みだ。品薄状態が続き、価格は例年の約2倍という異常事態になっているという。

ノリ養殖業者・田中智幸さん:
やっぱり本当にノリ養殖ってすごく経費がかかるんですよ。そこで、こういう色落ちとか、こういう被害があったときはですね、そういう特措法みたいので、補助とか助成金とかが、もしあればですね、すごく助かるんですけど

取引価格の高騰。私たちの食卓にも影響が出始めようとしている。大手メーカー「ニコニコのり」は、焼きのりや味のりなどノリ関連の商品を値上げする方針を明らかにした。また、別のメーカーも仕入れ値が例年の約2倍となり、夏前にも値上げせざるを得ないという。

今後、収穫状況が改善されることを祈りたい。

(テレビ西日本)

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