冬の電力需給のひっ迫対策として神奈川県・横浜市では、「今夜は、映画館によりみちしよう」というキャンペーンを実施している。

正式名称は【市内映画館と連携した家庭向けDR推進キャンペーン「今夜は、映画館によりみちしよう。」】で、期間は1月25日から3月31日まで。その狙いは、人口が多く家庭での電力消費が大きい横浜市で、電力需給がひっ迫する時間帯に外出をうながし需要のピークをずらすというものだ。

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今年の冬は電気代の高騰を様々なニュースで伝えているが、資源エネルギー庁によると電力需給そのものが厳しい状況にあるとして、去年12月から今年3月末まで節電や省エネを呼びかけている。

思い返せば、去年の3月21日には史上初の「電力需給ひっ迫警報」が東京電力と東北電力管内に発令され、6月末には「電力需給ひっ迫注意報」が発令された。そして現在も節電への協力が呼びかけられているように電力需給に予断を許さない状況は続いているのだ。

(出典:資源エネルギー庁)
(出典:資源エネルギー庁)

こうした中で横浜市は、電力需給がひっ迫すると見込まれる冬の夕方から夜間にかけて「よりみち」をすることで帰宅時間をずらし、家庭の照明や暖房などの電力消費を抑えるキャンペーンを打ち出した。

市によると、映画館は1人あたりの滞在時間が長く、仕事終わりなどの帰宅前に立ち寄って楽しむことができるコンテンツであることから、より効果的に節電に取り組むことができるとしている。

(出典:横浜市)
(出典:横浜市)

割引クーポンの発行などは「考えていない」

このキャンペーンには市内13の映画館が賛同しているが、市の公式サイトには割引やクーポンなどの案内は載っていない。

また映画館以外でもよりみちすれば節電につながることから、市はTwitterで「#よりみちで節電」を付けて投稿し、様々な楽しみ方を共有してほしいとしている。しかし、節電はできても物価高の中で、映画代がかかるのはどうなのかという厳しい意見もみられる。

3時間のよりみちでどのぐらいの節電効果があるのか?そして、このキャンペーンの反応はどうなのか?
横浜市の担当者に聞いてみた。
 

――キャンペーンに賛同した映画館では何をする?

より多くの市民の皆様の目に触れるよう、映画館や入居している商業施設でのポスター掲示やチラシの配布、HP等での周知により、本キャンペーンについてPRしていただいております。一部の映画館様においては、本キャンペーンとの合同企画も実施いただいております。

(編集部注:港南台シネサロンでは15時以降の映画鑑賞でガチャガチャを回せるコインが貰える連動企画を行っている。)


――映画料金の割引やクーポンはない?

よりみちを呼び掛けている夜間の時間帯は、各映画館で既にレイトショーなどの割引が行われております。また、「よりみち」が電力ひっ迫対策にもなるということへの気付きになるよう実施しているPRキャンペーンですので、今回の取組におけるクーポンの発行等については考えておりません。


――横浜市の電力供給はどのぐらい逼迫している?

電力の供給は各発電所管内のエリア別で行われているため、「横浜市」というエリアに絞って状況を把握することは困難です。
今冬においては、昨年のような東京電力管内の需給ひっ迫警報は出されておりませんが、資源エネルギー庁のホームページには、「今冬の電力需給は、全国で瞬間的な需要変動に対応するために必要とされる予備率3%以上を確保しているものの、厳しい見通しです。」と記載されています。
実際に予備率が低下し、需給ひっ迫警報が発せられることも想定されますので、その対策として今回のPRキャンペーンを実施しております。


――よりみちして映画館を利用すると、どのぐらいの節電効果がある?

世帯構成等の試算条件により効果は異なりますが、例えば1日暖房の使用時間を3時間減らした場合、約0.72kWhの電力消費量の削減になります。これは、冬季の1世帯あたり1日の電力消費量である14.2kWhの約5パーセントにあたります。
個々の世帯で見ると小さな数字ですが、多くの方にご協力いただくことで、市全体で一定の効果が得られると考えております。


――このキャンペーン全体で、どのぐらいの節電効果を見込んでいる?

本キャンペーンの1番の目的は電力需給ひっ迫への対策ですので、そちらに関しては、電力の需給状況が最もひっ迫すると言われている時間帯(夕方から夜間)に外出(よりみち)することで家の電気を使わずに過ごしていただき、電力使用量のピークをずらすことで一定の効果が得られると考えています。
 

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――コロナ禍で影響を受けた映画館に客足を戻す狙いもある?

客足を戻す、ということを狙いに企画したものではありませんが、街の賑わいを保ちつつ、市民の皆様に楽しみながら節電にご協力いただきたいという思いから、実施しているものです。


――キャンペーンの評判は?

様々なご意見を頂いていると承知しております。市民、事業者の皆様には、日ごろから節電にご協力いただいておりますが、耐える節電もある一方、楽しむ節電のひとつのアイディアとして、「よりみち」をご提案しております。

このキャンペーンには様々な意見が届いているそうだが、電力需給を考えると3月31日までは節電を心がけることは大事だろう。

プライムオンライン編集部
プライムオンライン編集部

FNNプライムオンラインのオリジナル取材班が、ネットで話題になっている事象や気になる社会問題を独自の視点をまじえて取材しています。