2019年から70年ぶりの大規模修復工事が続けられてきた宮島・厳島神社の大鳥居。工事の足場がすべて撤去され、いよいよ12月で完了を迎えようとしている。観光客の注目を集める宮島で、突然”ゲリラ演奏”が行われた。
大鳥居の修復完了に向けたサプライズ
2022年9月、静まり返った夜の宮島で、島内の体育館から和太鼓の音がもれている。その宮島太鼓の練習場に、1人の男性が訪れた。何やら、改まって相談があるとか…。
宮島観光協会・末田匡拡さん：
宮島桟橋前広場でゲリラ演奏をしてもらいたいと思っています。サプライズ企画としてインパクトある演奏をして、日本と世界に発信したい。演奏をきっかけに大鳥居の修復工事完了を知ってもらいたい
2019年から70年ぶりの大規模修復工事が行われてきた厳島神社の大鳥居。
職人たちの手で3年以上かけた工事は12月に完了を迎えようとしている。そこで、完了の時を盛り上げたいと観光協会が動き出した。観光協会が立案したのは、宮島を拠点に活動する「宮島太鼓」と廿日市市の「さくらぴあ市民オペラ管弦楽団」がコラボする初のサプライズ演奏だ。
宮島太鼓・濱田敏博 チームリーダー：
まだ全容が見えないので不安ですが、重責が果たせられればいいなと思います
和太鼓と管弦楽器の異色コラボ
9月中旬、管弦楽団の団長と関係者が集まり、打ち合わせ。
さくらぴあ市民オペラ管弦楽団・本田久美 団長：
この曲を最初はオーケストラだけの静かな雰囲気で始めて、だんだん奏者の人数を増やしながら演奏しようと思うんですけど
和太鼓とオーケストラがどのようにコラボするのか。細かい内容を詰めていった。
一方で、10月に入ると大鳥居の修復工事に大きな動きが…。3年以上も大鳥居を覆っていたネットが徐々に取り払われ、生まれ変わった大鳥居が姿を見せた。
工事用の足場が一般開放されると多くの観光客でにぎわい、大鳥居が人を引きつける力や注目ぶりがあらわに。
そして11月下旬。本番まで1週間あまりとなったこの日、両団体のメンバーが集まって初めてのリハーサルが行われた。
さくらぴあ市民オペラ管弦楽団・本田久美 団長：
太鼓のパートの終わりの辺りから、つなぎに入る部分を聴かせてもらえますか？
8小節のうち”4分音符・4分休符”が4小節。その後は…
宮島太鼓メンバー：
ちょっと、頭の中がぐちゃぐゃになっちゃった
クラシック音楽に合わせて和太鼓を打つなど初めての体験。少し混乱しながらも、本番へ向けて息を合わせていった。
バレないよう楽器を隠し…その時を待つ
12月5日、観光客の視線の先にある大鳥居を見ると、工事用の足場が完全になくなり完成間近の状態に。
午前10時すぎ、本番まで残り約3時間。島内の体育館では、オーケストラと宮島太鼓のメンバーが最後の調整に入っていた。
さくらぴあ市民オペラ管弦楽団メンバー：
今日は観光客が多かったので頑張りたいです
宮島観光協会・上野隆一郎 事務局長：
この宮島を、廿日市市をPRできたらと思いますので、よろしくお願いします。それでは皆さん、頑張りましょう！
宮島桟橋前の広場に移動した演奏者たち。厚手のコートなどで楽器を隠し、観光客らに紛れてその時を待った。
観光客も生演奏にくぎ付け！
そして、いよいよサプライズ演奏がスタート。
「生演奏してるじゃん！」と驚く観光客。何も知らされていない人々が輪を作るように集まり、演奏に聴き入っている。中には、スマホで動画を撮る人の姿も多く見られた。
曲はエルガーの行進曲「威風堂々」。雄大なメロディーに和太鼓の心地良いリズムが加わり、威厳ある大鳥居にふさわしい演奏だ。
大阪からの観光客：
いきなりだったから…。すごく良かった
広島県民：
オーケストラと和太鼓の組み合わせが面白かった
宮島太鼓メンバー：
大鳥居の修復完了をもっと盛り上げていきたいです
続いて、管弦楽団のメンバーは厳島神社の社殿へ移動。普段着から黒い衣装に着替え、厳かな雰囲気の中で「奉納演奏」を披露した。
宮島観光協会・末田匡拡さん：
いやもう、完全に大成功ですね。喜んでくださったり、驚いてくださたっり、そういう方がたくさんいらっしゃったので。僕も小さい時から宮島に来てパワーをもらっていました。これからもずっとそういう存在であってほしいと願っています
修復完了を間近に控え、鮮やかな朱色に輝く大鳥居。和太鼓と管弦楽の響きに鼓舞され、力がみなぎっているかのようだ。
（テレビ新広島）
