長引く新型コロナの影響は経済だけでなく出産にも影響し、日本の出生率はますます低下している。政府は、新たな手厚い出産・育児支援を検討しているが、先立つものはお金・・・。

「支えられる立場」だった高齢者に負担を求めるなど、社会全体で少子化に立ち向かおうとしているが一筋縄ではいかないようだ。

経済部の井出光記者が解説する。

歯止めのかからない少子化に「高齢者も現役世代を支えて」

井出記者:
11月24日、政府の「全世代型社会保障構築本部」という会議が開かれました。医療や年金などの社会保障を全ての世代で負担するような制度に変えていこうという趣旨の会議で、今回は子ども政策の変更点がまとまったんです。

今までは「高齢者を現役世代が支えていこう」というものでしたが、それを「高齢者も現役世代を支えて!」という方向に変えようとしているんです。

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榎並キャスター:
大きな方針転換かと思いますが、なぜ、政府は舵を切ったのでしょうか?

井出記者:
「少子化」に危機感があるからです。出生率はどんどん下がっていて、新型コロナの影響もあり今年の出生数が初めて80万人を切る可能性があります。2022年1月から9月までの累計の出生数は過去最少で11月28日、松野官房長官は「危機的な状況」と話しました。

内閣府の関係者は「今まで高齢化が問題だと言ってきたがそうではなく、本当に問題なのは少子化だ」と警鐘を鳴らしています。

新たな子育て支援策

榎並キャスター:
具体的にはどのような新しい支援策が検討されているのでしょうか?

井出記者:
まず1つ目は、子どもを産む時に病院でかかる費用の支援として国からもらえる「出産育児一時金」です。今、一律42万円です。でもこれでは全然足りないんです。

9月に、都内の私立病院(無痛分娩)で出産した人の実際の明細をみると、食費など諸々合わせて100万円以上かかっていました。

無痛分娩なので高いケースではありますが、公的病院で出産にかかる平均費用でも東京は56.5万円、全国は45.5万円(2021年度)。42万円では足りなくて、ほとんどの母親が一部費用を負担している状況です。

ようやく政府は、2023年の4月から47万円に増額する方向で今進めています。また、新たに「子育てのために時短で働く人への給付」や育休のない「自営業、フリーランス、非正規雇用の人への給付」も盛り込まれています。

相次ぐ「保険料上乗せ案」…街では批判的な声も

榎並キャスター:
ただ、これだけの支援を広げるためには財源の確保が必要ですよね。

井出記者:
こうした子育て支援策の財源を、税金ではなく、保険料の上乗せで対応しようという案が政府から出ています。

まず、「出産育児一時金」の増額分については「高齢者の医療保険から一部を負担する」という案が厚労省で示されました。75歳以上の人が払う医療保険に“上乗せ”してお金を集めよう、ということです。

一方で、時短の人や自営業などの人への新しい給付については、「雇用保険」に上乗せという案が挙がっています。雇用保険とは「働けなくなった時に備える保険」で、仮に20万円の月給だと毎月1000円ほどが雇用保険として引かれています。これに“上乗せ”しようという案なんです。

街の声を聞くと「子どもがいない人には不公平」、「物価の高騰で苦しいのにさらに保険料まで上がるなんて」など批判的な声も少なくありません。

一方、お金を管理する財務省の関係者は「男性も育休を取る人が増え、ただでさえ今の雇用保険料率ではもう足りない。上乗せは少子化を止めるためには必要」と話しています。

榎並キャスター:
保険料に上乗せする以外の方法はないのでしょうか?

井出記者:
今まではこうした子ども政策は消費税からまかなうことが多かったです。実際に2019年に8%から10%になり、この増やした分は、今、幼稚園や保育所の無償化などに使われています。これであれば世代関係なく幅広い層で負担できるのですが、現在の消費税の使い道はすでにパンパンで消費税を上げるのもなかなか現実的ではありません。

少子化対策はいつも後回しになっていました。特効薬がなく、結果が出るまでに時間がかかるからです。「お金を誰が負担するか?」という話になると世代間の対立になりがちですが、本腰を入れて子ども政策に取り組まなくてはいけないところに来ています。

外交評論家・宮家邦彦氏:
世代間のバランスをどうとるかは大事。でも国全体で考えたらやはり、子ども。大変だけどやっていかなくてはならないし、諸外国では少子化の根本的な対策をしている国もあるので、そういう方向に進んでいかなくてはならないと思います。

榎並キャスター:
財源の確保。あと、去年の税金の無駄が455億円に上ったというニュースもありました。大切な税金のやりくりも考えてほしいですね。

(「イット!」11月29日放送より)

記事 32 井出 光

フジテレビ 報道局 経済部(内閣府担当)。野村証券から記者を目指し転身。社会部(警視庁)、経済部で財務省、経済産業省、民間企業担当などを経て現職。

記事 984 経済部

「経済部」は、「日本や世界の経済」を、多角的にウォッチする部。「生活者の目線」を忘れずに、政府の経済政策や企業の活動、株価や為替の動きなどを継続的に定点観測し、時に深堀りすることで、日本社会の「今」を「経済の視点」から浮き彫りにしていく役割を担っている。
世界的な課題となっている温室効果ガス削減をはじめ、AIや自動運転などをめぐる最先端テクノロジーの取材も続け、技術革新のうねりをカバー。
生産・販売・消費の現場で、タイムリーな話題を掘り下げて取材し、映像化に知恵を絞り、わかりやすく伝えていくのが経済部の目標。

財務省や総務省、経産省などの省庁や日銀・東京証券取引所のほか、金融機関、自動車をはじめとした製造業、流通・情報通信・外食など幅広い経済分野を取材している。